見出し画像

読書案内―世界文学

"次の言葉を引用して、この『はしがき』をおえるとしよう。『読書をしないような連中は、考える材料を何ひとつもってもいなければ、いうべきこともほとんど何ひとつもてるものではない。"1940年発刊の本書は、ユーモアと辛口批評、『月と六ペンス』でも知られる著者の人間味をバランス良く感じさせる世界文学案内。

個人的には、様々な形で本と出会う機会を創っている1人として、約80年前に当時も"忙しく読む暇をもてない"一般読者たちに向けて、著者はどのような本を、どのように紹介をしていたのだろう?と興味をもって本書を手にとりました。

さて、本書はアメリカの週刊雑誌サタデー・イーヴニング・ポーストに3回にわたって掲載した文章に前述の『はしがき』を冒頭に追加して発刊されたもので、イギリス文学、ヨーロッパ文学、アメリカ文学の3章に分類し、かつ『楽しく読める』を基準にして"重要な作品を相当数割愛しなければならなかった"と嘆きつつも、結果として【適度な分量で小気味好く】『当時のベストセラー』他を紹介してくれているわけですが。私の勉強不足も大いにあるだろうが、結構知らない作家や作品が多くあって、また、にも関わらず【思わず探して手にとってみたい】と感じさせる著者の魅力溢れる書きっぷりが素晴らしいと感じました。

また『ガリヴァー旅行記』『高慢と偏見』そしてシェイクスピア各作品、あるいは『カラマーゾフの兄弟』『赤と黒』『パルムの僧院』『ハックルベリーフィンの冒険』『白鯨』などの本書で取り上げられた作品は、最近読み直したり、あるいは読書会の課題図書として触れる機会があった為に、各作品に対する著者の解説は【時間を越えたスペシャルゲストとして】読書会に参加してくれている様な不思議な感覚があって面白かった。(後、詩に関しては"もちろん!英国が一番!"という拘りも何だか可愛らしい)

80年前の文学事情を著者目線で追体験したい誰か、あるいは世界文学"古典"好きな誰かにオススメ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?