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紅はこべ

"『紅はこべ』というのはね(中略)イギリスの路傍に咲く可憐な花の名前なのでございます。しかしそれはまた、世界中でいちばんすぐれた勇者の身元をかくすために選んだ名前でもあり"1905年発刊の本書は"二都物語"に触発され戯曲化、ベストセラーにもなったロマンス小説。

個人的には、ディケンズの『二都物語』が既読だったので、本書に興味をもって手にとりました。

さて、そんな本書は1789年、フランス革命後の混乱期、成立した共和政府によって貴族や聖職者と言うだけで裏切りを疑われてギロチンに送られていた時代。そんな彼らを救い出してはイギリスへと亡命させる謎の一団『紅はこべ』の活躍、リーダーの正体を暴こうとするフランス側との追走劇を描いているのですが。

まあ『二都物語』がディケンズの元新聞記者、ジャーナリスト的な社会風刺さを感じさせるのに対し、こちらはあくまでイギリスの上流階級を主人公たちにした【勧善懲悪的なエンタメ作品】になっており、安心して最後まで楽しめました。

一方で、あくまで個人的な感想ですが。主人公の美男美女のブレイクニー夫妻のうち、愚鈍な男性を演じながら、実は超人的な活躍をみせるサー・パーシーに対して【欧州一の才女】の誉れ高いらしいマルグリートの方は、終始ドタバタ役的な役割なのが、ちょっと残念に感じました。

フランス革命後を舞台にした華やかなエンタメ作品を探す方にオススメ。

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