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ストーナー

"『シェイクスピア氏が三百年の時を越えて、きみに語りかけているのだよ、ストーナー君。聞こえるかね?』"1965年発刊、仏の人気作家により2011年再発見され、世界的ベストセラーとなった本書は、日本翻訳大賞の受賞で2015年当時話題にもなった平凡な教師の物語にして"完璧に美しい小説"

個人的には、話題になっていた当時に興味を惹かれながらも読む機会を得ず、今回はじめて手にとったのですが。先に感想を言えば、ニューヨークタイムズやトムハンクスの過剰とも言える評価どおりに【確かに文句のつけられない良い小説。しかし、その魅力を誰かに伝えるのは難しい】と感じました。

それでも簡単に紹介すると、本書は17章、約330ページかけて、ひとりの男が【学問に目覚め教師へ、そして亡くなるまでの平凡で不器用な一生】が無駄なく洗練された美しい文体でテンポ良く描かれているのですが。【不穏な予感を滲ませる箇所】が緊張感を与えてくれる事から一切飽きることなく、また読後は読後で読み手によって悲しい?あるいは幸せな人生?と必ず意見がわかれる所が【人生の絶妙さを感じさせてくれて】素晴らしいと思いました。

また、この小説に限らない話ですが。こうした海外文学を日本語で楽しめるのは、翻訳家の方々の尽力のおかげなわけですが。そういった意味でも、本書の訳者が闘病生活の合間に作業を続けて【残り1ページを残して力尽きた】事にも触れずにはいられない。あとがきに"人が生きるのは、それ自体がすごいことなのだ。非凡も平凡も関係ない。がんばれよと、この小説を通じて【著者と訳者に励まされたような気持ちになる】のは、わたしだけだろうか。"にまさに!と深く共感してしまいました。

美しい小説、そして人生の素晴らしさを教えてくれる本を探す人へ。また訳者の見事な翻訳を実感したい人にもオススメ。

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