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逃走論

"男たちが逃げ出した。家庭から、あるいは女から。どっちにしたってステキじゃないか(中略)とにかく、逃げろや逃げろ、どこまでもだ。"1986年発刊の本書は偏執型(パラノ)から分裂型(スキゾ)へ、ドゥルーズ=ガタリ。マルクス、ケインズと時代を感じさせつつも縦横無尽に語っている知の良書。

個人的にはドラマ『ヴィレヴァン!』で、遠藤賢一演じる店長が紹介していたのをキッカケに『構造と力』に次いで、手にとってみました。

さて、そんな本書は著者自身が"さまざまな材料をパッチワークのようにつなぎ合わせた本"と称している様に、3部構成のうちで1部と3部の様々な雑誌に寄せた【広告であったり家族関係、読書術や書評他】に挟まれる形で、「ツリー」に対して「リゾーム」、「逃走」、「機械」と言った独自の概念をつくりだした哲学者と精神科医の2人【ドゥルーズ=ガタリについて】また経済学部院卒らしい知見にて【資本主義やケインズ、マルクス。貨幣や言語について】柄谷行人や岩井克人といった経済や文学の研究者と対談しているわけですが。

まず、26才のマルクスの活動と比較しての"同じ年齢の"自分との落差に呆然としないわけにはいかない"と著者が本書内で語っていますが。また当時の"意識高い若手インテリ"としては自然かもしれませんが。ある程度の【哲学や経済をかじっていることを前提にした語り口】例えば『言語はトランスレーションから生まれるし、資本はいわばトランスダクションとして生まれるということでしょう(P221)』といったカタカナ混じりで終始展開される本書。26才をとっくに越えた中年の私にとっても未だに読み進めるのは難解で"マルクスに呆然とした"若かりし著者"の知見と【比較して"中年の自分"との落差に】さらに呆然とした。(情けない。。とほほ)

とはいえ、高度経済成長期を終えて本書発刊の80年代後半以降に到来した【バブル期を予感させるかの様な当時の社会世相】や西武百貨店の『ほしいものが、ほしいわ。』で有名になる糸井重里についての言及や、また、あらためて今の若い世代でも注目されているマルクス主義について。【当時の若者であった著者、そして研究者がどう考えていたか】を考え、感じることが出来たのもとても良かった。(いやー。歴史は繰り返してますね?)

1980年代に"若者"だった方へ懐かしの一冊てして。また、構造主義やマルクス主義といった辺りの哲学や経済について関心ある方にも知的好奇心を満たす一冊としてオススメ。

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