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アリス殺し

"この一言で世界が崩壊しようが知ったこっちゃないわ。そもそも世界は最初からこうなっていたんだもの。そうでしょ?亜理は覚悟を決めた『ブージャムだった』"2013年発刊の本書は"メルヘン殺し"シリーズ一作目にして、夢(不思議の国)と現実世界で同時進行する不可思議ミステリ。

個人的には不思議の国のアリスを題材に自主制作映画の脚本を書いた事もあり、本書の内容が気になって手にとりました。

さて、そんな本書はご存知、ルイス・キャロルの作品、不思議の国(鏡の国)のアリスを下敷きにして、そのおかしな国に迷い込んだアリスの夢ばかり見る少女、栗栖川亜理(くりすがわあり)の周辺で、夢の中で死んでいくハンプティ・ダンプティ他の作品世界の登場人物たちと同じくして現実世界でも次々と人々が怪死していくわけですが。

まず、下敷きの『不思議の国のアリス』を読んでいるかどうかで評価が別れるのではないかと思われるのですが。個人的にすでに既読の私からすると、よくぞ【原作で繰り広げられる不可思議な会話、作品世界の持つシュールな空気感そのままに】ミステリとしても成立させたな!と著者の作品は初めて手にとりましたが膝を打つ構成の見事さに驚かされました。

また、ミステリ単体としても、帯の『どれだけ注意深く読んでも、この真相は見抜けない』ではありませんが、特に二転三転していく後半の展開は"なるほど、そう来るか!"といった緻密かつスケールの大きさで圧巻でした。シリーズ2作目以降も気になりますね。

不思議な国のアリス、そしてミステリが好きな方へ。またテンポ良く読める作品を探す人にもオススメです。

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