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パーフェクトの日

1970年(昭和45年)の8月21日、プロボウラー中山律子が女子プロボウラー初のパーフェクトゲームを達成した。

記念日らしい日だ。ネーミングもいいな。パーフェクトな日。
パーフェクトな日ってどんな感じなんだろ。どんなランチやディナーなんだろう。睡眠も熟睡なんだろうか・・・
人にパーフェクトを求めてはいけないとか、そもそも100%能力を使わないようにリミッター(副交感神経)がついてるっていう話もきく。

ボウリングというスポーツ。かつては野球と二分するほどの人気があり、落合博満もプロボウラーになろうか野球を選ぼうか迷った時期があるという。
っていうことは、迷いがあるってことは完璧はやはり原理的に無理じゃないかみたいな疑いをかけたくなる。だって、最高のカレーと最高のラーメンのどちらかをランチに出しますっていわれたら、誰しも迷うのではないだろうか。かといって両方食べたら胃が凭れそうだし。胃がもたれたらパーフェクトな日ではなくなるだろう。やはり、こういうパーフェクトは村上春樹あたりに尋ねたほうがよさそうだ。

 ガターというのは、溝のこと(発音はガーターではないらしい)
ガターボールはガターに落ちて無効になったボール。たまに這い上がってピンを倒すことがあるが、これはカウントしないのがルール。であるが、最近のボウリング場は、機械が数える。機械はガターボールが倒したのかそうでないか区別がつかない(最新はどうなのかはわからないが...)ので、ドンマイでカウントしてしまう。ガターショットというのがある。それはガターギリギリのアングルで投げて獲ったストライクを指す。これは当然有効である。
 アングルの話でいえば、キャリーラインという言葉がある。3−6−10ピンを結ぶ線にボールの中心がいくようにヘッドピンにあてるとストライクアクションが発生する。このため、カーブボールかフックボールを覚えないと200を超えるのは難しい。現にプロボウラーで、曲げない人はいないという。
 曲げるためには、当然、練習が必要である。加えて、ゴルフと同じく道具がやはり大事だ。マイシューズと揶揄されるが、貸靴は全部駄目である。というのも、マイシューズは軸足にはケリやすいようにゴムを貼り、もう片方は鹿革を貼って滑りやすくする。貸靴はこういうコントロールがきかないからだ。マイボウルも同じで曲がる球を投げるためには、手首に負担がかかる。ドリラーが自分の手に合わせて調整して穴を穿ったボールじゃないと手首を痛めてしまう危険さえある。
 ボールが曲げることができ、キャリーラインに投げ込むことができれば、ストライクの確率があがる。3連続でストライクをとることをターキーといったりする。七面鳥のことだ。1本の矢で3頭の七面鳥を得ることを指して、こういうのだが、それは長い歴史の中で生まれた言葉だ。この言葉から連想するに、ヨーロッパで流行、発達したゲームなのである。
 ボウリングは、エジプトで生まれたらしい。もともとピンは災いや悪魔の表象で、これを倒す宗教儀式だった。中世になるとこれがゲームとなった。ロジェ・カイヨワあたりに語るのをまかせたいが、これを九柱戯といい、ドイツでケーゲル、英国ではスキトルスと呼ばれた。モーツアルトは、妻のコンスタンツェとともにケーゲルに熱中したという。35歳で早世した天才作曲家は900曲もの美しい調べを残した。ほとんどが旅であけくれ、500通の手紙を書いた彼にいったいボウリングをやる暇があったのだろうか・・・
 今日のようにテンピンで行なわれるようになったのは、サム・ジョーという人が考えたからだ。彼はボウリングを競技にしようと企てた。ルールも規格もととえたのでボウリングの父と言われる。

◯ロジェ・カイヨワ
 で、ロジェ・カイヨワなのだ。彼は哲学者とも社会学者とも高尚なエッセイストとも云われる。自分にとっては紛れもない哲学者だ。「反対称——右と左の弁証法」という著作には対角線の美学が書かれており、実は人間の存在や生き方自体をキャリーラインで(つまり対角線で)ぐさりと抉る。

Le jeu est généralement compris comme une activité ou pratique soumise la plupart du temps des règles que les joueurs doivent respecter afin de pouvoir gagner. Cette pratique est souvent destinée au divertissement ou à faire passer agréablement le temps de celui qui s’y livre. Mais le concept de jeu n'est pas aussi univoque qu'il n'y paraît de prime abord. L. Wittgenstein, dans Recherches philosophiques, le considère comme « un concept aux contours flous ». Il n’existe pas une définition unique du concept de jeu. En effet, comme le philosophe l’indique, les ressemblances apparaissant entre certains jeux disparaissent dans d’autres.
●univoque ... 一義の、常に同じ意味を持つ。→ここは否定なので、遊びが常に一義とは限らない.
ウィトゲンシュタインは、遊び(=ゲーム)を輪郭がぼやけたものと考えた。
L'historien Johan Huizinga et le sociologue Roger Caillois ont travaillé à leurs propres théories sur ce thème du jeu en relation avec le sacré et la culture. Huizinga en fait l'étude complète dans son ouvrage Homo Ludens publié en1938. Quant à Caillois, c'est dans Les jeux et les hommes, paru en 1958, qu'il vient ajouter son regard de sociologue. Dans cet ouvrage il développe une classification en quatre types qu’il baptise : « agon », « alea », « mimicry » et « ilinx ». Pour Johan Huizinga, le jeu représente une action qui permet de sortir de la réalité et de la vie courante, tout en respectant les limites spatio-temporelles que cette activité ludique implique. Entremêlé à l'apport de Huizinga, Caillois insiste sur l'incertitude du jeu, en effet, son issue n'est jamais établie à l'avance. Le jeu est appréhendé par les deux spécialistes comme une pratique humaine régissant la société et ses composantes.

●Homo Ludens ... ホモ・ルーデンス 遊ぶ人間の意味
 中世の秋を書いたホイジンガが唱えた。遊戯が人間活動の本質であり,文化を生み出す根源だとするもの。

●« agon », « alea », « mimicry » et « ilinx »
カイヨワは、
アゴン=競争、アレア=偶然、ミミクリー=真似、イリンクス=眩暈
の4種類に分類した

ホイジンガも、ロジェ・カイヨワも「遊び」と人間の存在との関係について深く考えた。ゲームをやっている子を叱るが、それは資本主義に毒されているのかもしれない、なんてことを私はよく書く傾向がある。一方で実業家の中には事業を「ゲーム」だというように考えている人も何人かみる。
 パーフェクトゲームを達成した中山律子はある意味、目標を達成してしまったわけだ。次のゲームをやる必要があるのか・・・興ざめしないのか。これ以上の興奮を味わうような投球ができるのか、、、などは要らぬ心配だ。だったらパーフェクトゲームを達成したピッチャーは引退しないといけなくなる。そんなことはありえない。
たとえ将来AIが仕事を奪っても人間がやることはたくさん残されているということを示す。

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斎藤志乃ぶは、ギネスブックに載る唯一の女子プロボウラーだ。女性プロの最多勝利記録を保持していて、今でも(2020年現在)現役のプロボウラーである。

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<来年の宿題>
・ロジェ・カイヨワの「反対称——右と左の弁証法」
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