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フナの日

茨城・古河市の鮒甘露煮店組合が2月7日に記念日を制定した。

鮒は、コイ科の魚である。川や湖、そして沼など人間の環境に近いところで生息するため身近な魚だ。金魚も鮒の仲間である。
童謡「ふるさと」にも”小鮒釣りし”と登場する。この鮒という音をきくと、自分は山本周五郎の「青べか物語」をいつも想起する。

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今日はトーマス・モアの誕生日でもある。「ユートピア」が有名だ。
貧困・戦争と不当な法律、キリスト教会への批判を前半に対話し、後半は、
独白で、男女平等、私有財産の否定、無宗教で身体的暴力の否定を空想する。

Thomas More est également resté célèbre pour son texte fondamental, "L'Utopie", écrit en latin et dans lequel il dénonce la tyrannie du système politique. Son ouvrage préfigure le genre littéraire des utopies, récits idéalistes et futuristes. Il y met en scène une société parfaite et dénonce à travers elle la corruption et les aberrations du système anglais, et les injustices envers les plus démunis.
Le livre de Thomas More est composé de deux parties. La première partie est un dialogue imaginaire entre Thomas More et Raphaël Hythlodée, qui fait la critique de la chrétienté du début du XVIe siècle, entre pauvreté, guerre, lois injustes et vie de cour. La deuxième partie est centrée sur le monologue d'Hythlodée, qui fait la description d'une île imaginaire du nom d' "Utopie". Sur cette île, les habitants, hommes et femmes, sont tous égaux et ne connaissent pas la propriété privée. ils vivent de fait au sein de clans, qui sont dirigés par l'homme le plus âgé de chaque clan. L'agriculture est l'activité principale de cette île. L'administration de chaque ville est faite par un conseil élu et, une fois par an, un sénat de 162 membres se réunit. La discussion publique guide les affaires politiques et il n'existe pas de religion spécifique, juste deux dogmes : l'âme est immortelle et la providence divine gouverne le monde. Celui ou celle qui refuse de croire en ces dogmes est exclu de la société, sans violence physique. La galanterie, le flirt et l'adultère sont punis, c'est également le cas pour les relations sexuelles avant le mariage.

この理想に向けた空想こそ、そのあとのルネサンスの”展望”を明らかにした。未来を予測するには過去をみなけばならない、といったのはマキュアベリだが、ルネサンス時代には、無知の解放(グーテンベルクによる印刷術)、各国の経済・科学の問題の共有といったことが行われた。
いまは、インターネットの力とITテクノロジーによる各国の学術共有が促進している時代ともいえ、第2のルネサンスととらえる人もいるようである(イアン・ゴールディンなど)ある時代を、いろんなファーセットで切り取ることは、いかようにもなるが、その時代の方向づけは次の2つがなければ成立しない。すなわち、”展望の存在”と”存在の連鎖”である。
ダ・ヴィンチが、「展望とは案内人であり、道である。それがなければ、何もうまくできはしない」といみじくも言って、ルネサンスに道をきり開いていき、多くの天才を開花させたのである。
 いまは、どんな”展望”をもって動いているのか・・・
マキュアベリが指摘した”過去を見ろ”は、どの時代も共通した問題をかかえているということでもある。伝染病の問題、貧困の問題はいまだテクノロジーを駆使しても、解決に至っていない。男女平等の問題についてもまだ無知蒙昧の輩がいるくらいのありさまで(日本だけかも)。健康の問題は平均寿命をさらに拡大しつつあり、副作用として(昔も云われてきたが)人口問題があるのである。こうした問題はしかし、トーマス・モアのユートピアを存在しないものとして切り離して理想論とレッテルを貼るから解決しないともいえる。

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 20世紀はじめの天才たちは、星の光が地球まで届くのは量子が粒であるからだといった。合わせて波の性質をもそなえることも示した。ド・ブロイは、電子にもこの波の性質があることを示し、ガモフがトンネル効果を示して、アルファ粒子がエネルギーの山をすり抜けることがあるといい、太陽では核融合が頻繁に起きていることがわかった。地上に太陽を作ろうとして、原子力発電を作ったが、人間は神にはなれなかった。
 コロンブスが新大陸を発見したことで、世界に意識の変革をもたらしたが、コロンブスの孫は、渡り鳥が冬になると北に飛ぶは北極に穴が開いていて、地熱を浴びにいくに違いない(地球空洞説)とした。しかし、天才のおかげで、この疑問は、”量子もつれ”を渡り鳥が敏感に感じとっての行動であるとされている。
光合成もその原理が働いているかもしれないという。その量子もつれを利用し、0と1どっちも同時に示せる(観測すると0か1になる)量子コンピュータを作る原動力にもなっている。
 ある知識なり、認識の仕方なりが、すべての学問について起きている。この状況はファーセットによっては確かにルネサンスだが、ほとんどの技術者たちは、ナノ世界を支配していない。炭素は黒いのであるが、厚さ1原子のシートならばガラスより透明なのだ。これら不可思議な、常識が通じない世界が、多世界解釈を導き出す。そういった面では、あたかも新たな神が飛び出してきそうであるが、人類の叡智は神をもはや求めていない。
 量子をめぐる実感のなさや実感できない非常識な現象が、叡智への妨げになっているともいえる。つまり日常そのものすべてが神秘である。ここにおいて、縛りのない現代社会において、何から解放されればよいのか。どのような展望で、人間の持つ叡智を振り向ければよいのか。。。
 それはやはり希望によってであると思う。
 ミケランジェロのダヴィデ像は自重で足首に負荷がかかっているためヒビが入っているが、500年を超えて立っている。物理的にはそのうち修復が必要であるが、ミケランジェロがその内部に込めたエネルギーは不変だ。そのエネルギーとは、人間の可能性である。

ほかのあらゆる生物の性質は[神が]定めた法則の中で定義され、制限されている。それに対して人間は自分という存在の自由で誇り高い形成者として、望ましい形に自分をつくりあげられるかもしれない。卑しく野蛮な形の生命まで落ちるか、[あるいは]ふたたび神聖な生命を持つ優れた存在まで向上するかは自分次第なのであろう

ピコ・デラ・ミランドラの”人間の尊厳について”、である。これを”ルネサンス宣言”としてとる向きも多い。今がルネサンスの時期だとして、その宣言の現代版は何をもってされるのだろうか。

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 一方で尊厳の高い人間は、本能が壊れていて、自然を破壊する原動力にもなりえる。
たとえば鮒科の金魚はうかつに川に流してはいけないという。
たったの15匹をオーストラリアの研究者が追った

Face à la reproduction invasive des poissons rouges, des chercheurs australiens de l’Université Murdoch ont étudié leurs migrations et leur rythme de vie. Ils se sont concentrés sur 15 poissons, qui avaient été relâchés. Selon les résultats de l’étude publiés le 12 août 2016 dans la revue Ecology of Freshwater Fish, ces poissons ont adopté un rythme saisonnier. Lorsqu’ils se reproduisent, ils se dirigent vers des eaux plus calmes qui se trouvent souvent à de très longues distances : l’un des poissons a même nagé 230 kilomètres en un an.

驚くべき、生態に与える影響がそこにはあった。これがさらに増えると、環境破壊にもつながるだろうというのである。

Ainsi, non seulement le Carassius auratus détruit son milieu et se reproduit de manière invasive, mais il est en plus capable de coloniser de nouvelles régions. Les chercheurs auteurs de l’étude tentent donc d’imaginer un moyen de limiter ces déplacements au maximum, pour pouvoir contrôler le développement de l’espèce.

よって、生態系にも安心するのは、十分な水槽に金魚を閉じ込めて置くことだという

Mais pour limiter la prolifération des poissons rouges en eaux vives, le meilleur conseil est encore de les garder chez vous, dans un aquarium assez grand pour qu’il s’y sente bien.


かつてから、こうした環境保全に人間は挑戦してきた。
尊厳のあるはずの人間は、便利さと手っ取り早さにはかなわないという性質をもつ。これは、神から解放されたはずの現代でも物理学の神秘に包まれたまんまで、人間の尊厳は保たれるようになってきたが、経済的な貧困はなおも存在し、戦争の危機すらある。この矛盾を解決すべくユートピアは語られたのである。
 いつの時代も美徳が問われているのである。それは宗教を超えたものである。過去をみればキリスト教でも仏教でもいかなる宗教も美徳を惹きつけたままにすることはできなかったのであるから。それだからこそ、美徳はいつも語られる。人間の尊厳を守りつつ環境保全していくには、それでもやはり美徳が近道だからだ。

青べか物語では、
鮒を売ってくれと少年たちに言ったために、てっとり早い富への方法を手に入れた少年たちは連日鮒をもって”蒸気河岸の先生”(山本周五郎自身を指す)に売りつけにくる。困った先生は”いらない”といった、最初はたしかに落胆の色が少年たちにみえた。鮒を見つめると、少年たちが、「じゃあこの鮒あげるよ!」と言い出すのである。そう言い出した少年は

途方にくれ、落胆していた少年たちの顔に突然、生気がよみがえった。それは囚れの繩を解かれたような、妄執がおちたような、その他もろもろの羈絆を脱したような、すがすがしく濁りのない顔に返った。

最初から、売ってくれでなく、”くれ”と言えばよかったと悔やむのである。

私も未来に、ユートピアをくれと言おうと思う。

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<来年の宿題>
・ルネサンスと現代
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