見出し画像

月光仮面の日

1958年の2月24日、現在のTBSで、テレビ映画第1号として「月光仮面」の放送がはじまった。子どもたちの絶大な人気を得て、平均視聴率40%を記録した。Wikipediaによれば、『時代劇と探偵活劇の要素を組み合わせた作風は、その後のヒーロー番組に多大な影響を与えている』とのことである。

いわゆる勧善懲悪の話である。最近では、ようやく”働き過ぎ”が悪だとわかってきた。それは歓迎すべきことでもあるが、どうも働き方改革は進んでいない。2017年の2月24日にプレミアム・フライデーが初の実施を迎えたが、2年もすぎないうちに実施する企業も下火になった。コロナ禍を過ぎたならば灰も残らない無残さであろう。
 最終金曜のこの日は会社の総務からメールがあり、早く帰るように通達があった。私の同僚もこの日になるとソワソワと喫茶店などに集まり、スマホゲームをみんなで楽しんだようである。ところが、やがて総務からのメールも”<帰れる人は>帰るように”などと条件つきになり、形骸化してしまった。

 知り合いのコンサルによれば、働き方改革が進まないのは、手段の目的化が原因だという。そして働き方改革=時短という短絡に陥り、経営者の妥協するという意識の低さがあるという。本来は長い会議とか、くだらない打ち合わせや電話などの時間を削るところ、すなわち旧弊依然とした無駄や、年寄りの腰掛けを壊し、成果を出すことに集中するために実施されるべきであったこれらの改革が、ものごとの本質まで行き届かないで、ただ会社にいる時間だけ少なくされても。。。というのが実状なのである。
 第一アメリカのブラックフライデー(バーゲンのようなもの)を参考に作られた制度らしいが、お金を使ってもらうという主旨もうまく伝わっていなかった。従業員としては、有給時間の消化のあてがわれてまで、進んでそれを実施し消費をしようとは思わない。実に76%が(お金を使う)役にたっていないと回答する体たらくであった。そのうち、プレミアムフライデーという言葉自体きかなくなった。全体の4%しか15時で退社する人もいなくなってしまったのだ。しかも月末の金曜日はとかく経理作業に追われるときでもある。(そういうこともどうかと思うので、わざとプレミアムフライデーは最終金曜日にぶち当てのかもしれぬ)
 
 私は風潮に憤り、せっせと、”今日はプレミアムなんで”と帰ることにしていた。意識が変われば行動が変わるのかもしれないが、実際には、行動を変えれば視座がかわって意識が追いついてくるという感覚なのである。
VUCAの時代と叫ばれて久しいはずなのである。啓蒙的なビジネス書は反吐が出るが、目を通してみれば、ちゃんとそんなことまで書いてあるではないか・・・

画像1

月光仮面作者の川内氏は、著書「アメリカよ驕るな」の中で、”日本人の精神的な欠落を描き出そうとした”と語る。月光仮面では、無人島に隔離され「ニューラブカントリー」の理想をカルト教団により植え込まれた若者たちが描かれるが、彼らとテレビに洗脳された日本国民の本質はなにも変わらない。
 突如ビルに登場する月光仮面は、ヒーロー見参というより、ヤバい奴が出現したという格好である。身代金の一部を頂戴するなどヒーローあるまじき行為により、月光仮面みずからが、ワイドショーのネタになる、つまりは、月光仮面もテレビの乱痴気騒ぎに加担する存在でしかない。これは皮肉な計算の上のテレビ批判にほかならない。その皮肉が不幸にもグリコ・森永事件に連なるのだ。月光仮面も”かい人21面相”もメディアを逆にうまく使って自らの行動をアピールするのである。

 私の同僚がプレミアムフライデーを使ってやったことは、家族サービスではなく、寄り集まってゲームに興じたに過ぎなかった。自己啓発に使ったもよかったはずだし、社内研修の時間としてもよかったのかもしれない。月に一度くらいは、社員に投資してもよかったはずである。だが、当然そんなふうには物事は動かないのである。ひとえに経営側の覚悟がなかったといえるのではないか。。。

 これから知識社会はどんどん進むそんな時代の中で、一つの肩書で会社とムラ社会をモラトリアムとしてしか生きていない人間は取り残されていくであろう。
 そもそもプレミアムフライデーを国が推進しても民衆は実行にも移せないし、文句も云わない。”文句も云わず、従わず”といったグータラ国民ぶりなのである。肩書を3つくらい持たないとやっていけない日がくると書いてあるビジネス書を読んでも、実行に移せないようでは、自己が嫌になるだけではなかろうか。それならビジネス書なんて読まない方がいいのではないか。。。ニュースやメディアなんてみなくてもよいのではないか。。

 自発的な人材というが、会社があるから頼るのであって、それがなくなれば頼るものはなく、自発的という言葉も当たり前になって死語になるであろう。コロナ禍で、政府はガイドラインを示しもせず、各人の判断にまかせるといった態度に切り替わった。リモートワークにおいては、自主性が自然と問われるようにもなってきた。
 これからは会社組織は崩壊の一途だと口を揃えてビジネス書には書いてある。中間管理する上司でなく、メンターを求め、会社からお給料をもらうのでなく、個人事業主によってプロジェクトが成り立つような、そんな時代になっていくであろう。そして、SNSではなく、リアル人脈を求め率先して他者を承認する(ダイバーシティ)ような人材がどんどん増えてくるであろう。
そうなれば、国なんかにプレミアムフライデーつくるから早く帰れなんて云われなくて、大きな声で”大きなお世話だ”と言える時代がきっとくるであろう。そんな社会を月光仮面は自ら身をもって示唆した気がするのである。

------------------------------------------------
<来年の宿題>
・月光仮面と働き方改革
・かい人21面相と月光仮面☆
・コロナ禍をすぎて(予想)のプレミアムフライデー☆

☆は再来年以降かも・・・
------------------------------------------------



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?