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傘の日

例年、入梅の時期にあたるこの日(6月11日)を洋傘振興協議会が制定。

夷講あつかましくも傘を持ち

という古川柳がある。
えびす講の前に”講”がよくわからない。
簡単にいうと信仰結社と説明されているが、説明不足な気がする。
行事という説明もあるが、判然としない。
習慣の違いがあるので、現在の状況と完全には一致しないのだろうが、
町内会みたいな雰囲気が近いのかもしれぬ。
えびす講は商店街の組合が引き継いでいる。商店会みたいな団体だ。
頻度はそれほど高くはないのだろう。(いまでは年イチだ)
商店はサービスとして、不意の雨にそなえて、お客様に傘を無料で貸し出していたという。傘には商店の名前があり、広告効果を狙った。
江戸のサービスはとても進んでいるのがわかる。
それはそれで、やはり、借りたものはすぐに返すのがいい。
えびす講を祀る日に商店街ではサービスセールもやったことだろう、
前に借りていた傘をセールにやったついでに返却する行為の”あつかましさ”を皮肉った句だ。
和傘と洋傘の違いはあれ、傘は人々の生活に密着している品物といえる。

今日はFigaro紙の記事から引用してみる。2017年3月の記事である。

Ce printemps est mi-figue mi-raisin. Les giboulées de mars jouent parfois les prolongations et le parapluie attend d'être mis en retraite. Car l'été, c'est l'ombrelle qui est de sortie même si, avouons-le, elle se fait bien rare de nos jours. Pourtant, son usage est très ancien. Bien avant la naissance de Jésus-Christ, Egyptiens et Chinois utilisaient déjà cet accessoire. Au Moyen Age et sous l'Ancien Régime, aristocrates et membres éminents du clergé ont recours à ce petitparasol pour se défendre du soleil. L'idée qu'il puisse aussi protéger contre la pluie n'a alors rien d'évident, car les couvre-chefsremplissent cette fonction.
●mi-figue mi-raisin どっちつかずの
● couvre-chefsremplissent   couvre-chefs で被り物の意
抄訳)
春はどっちつかずで、3月のにわか雨は残っていますが傘はそろそろ引退のときを待つ、そんな季節です。夏となれば、日傘の出番、はっきりいえば、日傘を使う機会は我々の時代は稀(まれ)になりましたが、日傘が使われたのは大変古いのです、キリストの生誕前、エジプトや中国ではすでにアクセサリーとして使われていました。中世や旧体制(革命前)では、貴族や聖職者たちが小さいパラソルで太陽から身を守っていました。そのころは
雨から身を守るという考え自体があったかどうか明確ではないのです。被り物がその役目を果たしていました。

 いわゆる 傘を表す言葉が3種類でてくる
  parapluie、ombrelle、parasol
 である。
 parapluieは傘一般、ombrelleは綴りからして日傘(ombreは日陰の意)
 parasolは・・・今では大型の渚にあるやつだが 
para (=contre) + sol (soleil)  とpara + pluie(雨)という感じで単語はできている。
雨傘よりも日傘として使われたほうが歴史が古いということだ。
これは意外だった。

C'est vers 1712 qu'Anne de Bavière, princesse Palatine, qui apprécie d'utiliser une ombrelle en toutes circonstances, lance la mode dite des «parisiennes». Au tout début du XIXe siècle, dans la capitale, quelques marchands fabriquent et vendent le nouveau «parapluie», construit comme le mot parasol, sur le préfixe para, contre. L'idée plaît beaucoup en France où cetaccessoire permet à chacun de se protéger sans l'aidede quiconque. Caractère naturel de notre nation, les chapeliers et les cochers y ont trouvé à redire, craignant pour leur emploi…
●lance la mode 流行を作り出す
抄訳)
エリザベート・シャルロット・ド・バヴィエール女王の時代※
女王はあらゆる状況で日傘を用いました。パリジェンヌという流行を作り出しました。19世紀にはいると、パリでは幾人かの商人が新商品として傘を作り売り始めました。ソル(太陽)でなくプリュイ(雨)に、対抗するという意味の接頭語をつけて傘を命名したのです。誰の助けもなく身を守れるというのが好きなフランスで、このアイデアはとても気に入られ、普及していきました。帽子職人は職を追われるのではと恐れたのです。

エリザベート・シャルロット・ド・バヴィエールというのは、オルレアン公フィリップと政略結婚で、フランスに来た女王で、フランスではPlatine王女と呼ばれていた。とてもオシャレだった様子だ。ライプニッツと書簡を交わす才女でもあった。しかし、オルレアン公との結婚は望んだものでなかったらしい。雨を凌ぐ役割としての傘が出てきたのはなんとも遅く、19世紀にはいってからのことかと意外に思ってみるが、今ではビニールが簡単につくれるので、耐水の材料には事欠かない。当時は耐水性のものをつくるのは苦労しただろうことを思えば意外でないのかもしれない。別な記事では、le parapluie est alors un parasol de toile cirée.(雨傘は日傘にワックスをかけたもの)とのこと。江戸では和紙を竹の骨組みに貼った後に植物性の油を塗り、天日干しにして作られていた。
 江戸でもフランスでも傘は雨を凌ぐだけでなく、ファッションとしての役割もあったわけだが、街の景観として使う場合もある。

Cette année, Carcassonne a remis à l’honneur les parapluies (ou parasols ?) comme objets de décoration, tout au long de la rue Georges Clémenceau.

南仏のカルカソンヌではオブジェとして傘を飾る。↑で引用した記事では2018年だが、今年は飾らないのだろうか。

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来年のこの日はクロード・モネの絵についてでも書いてみようかと思う。

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