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【第2回】自己脂肪由来幹細胞を用いた脳血管系障害の方に対する治療症例の紹介

私が業界に携わってきて約4年ほど、今回は私が実際に見てきた治療症例の中で印象的な症例の一つを紹介させていただきたいと思います。

患者様情報


疾患名:脳幹出血
発症日:2018年1月
症状:四肢麻痺、感覚障害、意識障害、呼吸困難、高次脳機能障害等
治療内容:自己脂肪由来幹細胞投与10回
リハビリ:2021年8月〜週に3回
ご家族の要望:全身状態を安定させたい、車椅子での移動、呼びかけに答えてほしい

治療前の状態


脳幹出血の後遺症治療で受傷から約4年半後に治療を開始いたしました。
私が見てきた患者様の中で特に厳しい状況に置かれており、症状としては四肢麻痺、感覚障害、意識障害、呼吸困難、高次脳機能障害等、出血部位が大きかったために症状もかなり重い状態で、目配せがやっとできる程度でした。また、移動については起立性低血圧症のためストレッチャータイプの車椅子を使用しておりました。
医療機関側も受け入れることを迷うぐらい危険な状態の患者様だったとのことです。

治療内容


治療内容としては脳血管障害の後遺症に対する幹細胞治療を10回行いました。
これは自身の腹部から脂肪組織を抽出し幹細胞を取り出して培養、その後患者様の身体に点滴、あるいは局所注射で投与を行うという治療法です。
今回の症例の場合は、点滴で約1億個の幹細胞を投与しております。リハビリは約2年半前から週に3回行っています。

治療前後の担当医の評価


投与前にはほぼなかった呼びかけに対する反応や追視が、投与後には可能となり意思疎通ができるようになりました。心電図、バイタルともに安定し、カニューレやカテーテル、蓄尿バッグも無くなり排泄レベルも向上しました。
結果、ご家族の目標だった全身状態の安定と呼びかけに対する応答が可能となり、起立性低血圧症も改善しましたので、まだ1時間ほどですが車椅子での移動が可能となりました。

ご本人の頑張りとご家族の徹底的なサポートによって達成する事ができた奇跡的な回復だと思います。しっかりとしたコミュニケーションはまだ取れていませんが、寝たきり状態だったご本人様のここまでの回復はご家族にとって非常に大きなものだったと思います。

以上で今回の症例紹介は終わります。

治療を検討している方に知っておいてほしいこと


「再生医療」という言葉から何か「万能治療」「夢の治療」のような治療を連想された方もいらっしゃったかもしれませんが、現状行える再生医療は治療を行えば治るといったような治療ではありません。
治療効果にも大きな個人差がありますし、劇的な改善をする人なんて10%、たった10%にも満たないと私は思います。それでも、多くの患者様の夢にはなり得ませんが、希望の光であるのです。

私たちの役割


再生医療はそういった治療だからこそ私たちは再生医療相談室を通して、患者様や医療機関の先生方に正しい情報を発信し、再生医療安全性確保法を遵守した上でまず第一に安全性を確保した治療を普及する。安全で高品質な再生医療の発展に寄与するべく活動を行って参ります。

再生医療相談室に寄せられる患者様の生の声。また、今この瞬間も不自由な身体を一生懸命に動かしてリハビリに励んでいる患者様がいる。改めて、私たちの役割を再確認し、身が引き締まる思いです。


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