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書店を歩く




昔はキラキラ眩しい表紙が苦手で、雑誌を一切買わなかった。
ティーン向けコーナーに立ち寄ろうともしなかった。
そういえば、幼い頃はズボンばかり履いていた。スカートなんてもってのほか、髪を伸ばそうとも思わなかったし、メイクに興味も持たなかった。
私には弟がいるのだが、ブームはいつも弟が持ってきた。
ポケモンも、コロコロコミックも、A列車で行こうも、弟が熱中しているのに便乗して私もハマった。
プリキュアは好きだった。あとシルバニアも。でもシルバニアは高いから、一回だけ親にねだって買ってもらった家一個と、ウサギ数匹しか持っていなかった。”女の子っぽいもの”にハマったのはそれくらい。色だって水色や青が好きだった。


20歳を過ぎてから、私は雑誌コーナーに立ち寄るようになった。年齢が上がって、対象の雑誌が変わったからかもしれない。大人っぽい感じのファッション雑誌をパラパラめくったりしている。だけど、別にそればかりじゃなくてティーン雑誌も見ている。メイクの付録がついていたらつい買っちゃったりしてる。おしゃれしたい欲求が今頃になって目を覚ましたのだろうか。
気づけば最近はすっかりズボンを履かなくなり、代わりにスカートやワンピースばかり好んで着ている。なんでだろうと訳を考えてみたら、楽だから、が一番大きいかもしれないと思った。ワンピースはそれ一枚でコーデを考えなくて済むし、スカートは何しろトイレが楽。ズボンのまとわりつく鬱陶しさからも解放される。最近好きな色は緑だ。それも、深緑とか、お茶を点てたときみたいな渋い色。



最近学習コーナーにめっきり立ち寄らなくなった。必要がなくなったからだと思う。あと興味もなくなった。
ごちゃごちゃした色が目に入っても、瞬時の判断で私には必要のないことと切り捨てている。私より低い棚の森に万が一紛れこんでも、なんとなく居心地が悪くてそそくさと出て行ってしまう。
その代わり、資格とかビジネス本の前には足を止めるようになった。こちらは大人向け学習コーナー。そういえば昔、ここは私の居場所じゃないという感じがして、一度も近寄らなかったところだ。



今日、久しぶりに学習コーナーを歩いてみた。小学生向けの漢字ドリル、中学受験対策、高校受験対策、センター試験対策、青チャート、赤本の列。
両手を広げた私3個分の棚を、それらの本がズラーっと占めている。
こんだけの知識が私に詰まっているんだって思うと、なんだかとても充実感を感じた。もちろんそんなのは誇張であり、見せかけである。頭からすっぽり抜け落ちている数式も、ぐちゃぐちゃに絡み合った世界史の年代も、全部無視してのことである。
でも結果として大学生をやれている私って、これらの学習本を要していたあの頃の私からみたら、なんかすごいのかもしれない。これだけの量のテストやら試験やらをくぐり抜けてきたんだもの。両手広げて3個分の、私の功績。



文芸の本棚の間を歩く。そこは島の点在する海原。
まだ読んだことのない大半の本の中に、見覚えのあるタイトルや表紙がちらほらと紛れている。
ずっと小さい頃に読んだ本。図書室で友達と交換しあって読んだ本。電車に揺られて読んだ本。ごく最近布団の中で眠りかけながら読んだ本。色を塗っていくみたい。けれど、多分一生かけても一色に染めることはできない。これだけたくさんの想像がある。世界がある。知らないことがある。だから、ここは永遠の海原。

きっとまだまだ進化するね。





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