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雑記2020/02/20



とあるショッピングモール併設の映画館で映画を見て、それだけで帰るつもりだった。でも、映画館を出ると楽しげに歩く人々が目に飛び込んでくる。清潔に磨き上げられた床と吹き抜けの天井。パリッと爽やかなお洋服。洒落たカフェ。
本当にもう帰っちゃっていいの?まだ時間はあるのに?せっかくきたんだからもう少しここにいない?ちょっと見るだけでいいから。
といったような声が私の心の中にこだまし、ほんの少し、見てまわるだけ、と自分を戒めて結局その魅惑の地に足を踏み入れた。

(ここで特筆しておくが、知っているというのと、偶然それを自分で見つけたというのと、あって損はない、という要素が重なったとき、私は購買欲求を唆される)

目に入ってきたのはお茶屋さん。店内を見回すと、美容にいいと聞いたことのある白茶があるではないか。買うべきか、買わぬべきか。でも、普通のスーパーなんかではなかなか手に入らないし、ちょっとお試し気分で買ってもいいだろう。
そう思って店員さんに話しかける、白茶をください。
でも、店員さんは生憎そうな顔をして、ただいまこの商品は品切れとなっているんです、といった。
ないならばしょうがない、縁がなかったということだ。
無事ことなきを得た私だけれど、即席で決めた目的が果たされなかったためか、なんだか物足りない気がして、お茶屋さんを離れ、もう少し奥に進んでみる。

すると今度は、様々なメーカーが並ぶ化粧品売り場が現れる。
一様に美しいご婦人方と、輝くような化粧品たち。そのうちたどり着いたのは母が愛用しているメーカーのテナントだった。
そういえば下地も少なくなってきたし。そう思うと買うべきな気がして、一つサンプルを手に取って色を確かめ、これだけで良し、と一箱掴んでレジの列に並んでいると、ショートカットの店員さんに声をかけられる。
「カードかアプリはお持ちですか?」
私が持っていないと言うと、今作れば500円引きになると言われたのでカードを作成することにする。
ショートカットのお姉さんは透明感のある肌とくっきりとした目鼻をも血、眩いばかりに美しい。対してどすっぴんの私はなんとなく気恥ずかしく、目を若干逸らしながら会話をする。
「新規のお客様には、これらのセット品が半額になるんですが、いかがですか」
どれも買う予定になかったものだ。化粧水は家にたくさんあるし。でも、アクネケアのできる化粧水に興味をそそられてしまう。生理前はよく肌荒れをするし、ここ最近はそれが余計にひどくなったきがしていたのである。しかも半額の値段で買えるのは今しかないのだ。結局今ある化粧水がなくなったらまた買いに来るんだから、今買っちゃった方がお得ではないか。
そう思って1セット購入する方向で心が動き始める。
しかし、次にそれを店員さんに伝えることに抵抗を感じ始める。だって今日の私はどすっぴんなのだ。肌荒れをありのまんまにさらけ出しているのだ。そんな私がこのアクネケアの化粧水が欲しいなんて、生々しすぎるではないか。美人の店員さんが美白効果のある化粧水について、何かいろいろ説明してくれている。私は悩んでいるフリをしながら頷いたりしている。多分この人はあえてこれを勧めないのだ、となんとなく感づく。明らかに私には美白以前にアクネケアが必要だ。多分この人は医療関係者などではないし、私の肌の状態を見て判断するなんてことは出過ぎたことなのだろう。ああだから、気を遣ってくれているんだろうと気付いてしまい、申し訳ない気持ちになる。ずっといえなくてもじもじしていたのだが、店員さんがもういろいろ説明し尽くしてしまったという感じでちょっと間ができたので、そのタイミングでこれください、と言い切ってしまう。「ありがとうございます!」と彼女の笑顔は爽やかだった。
その後、カードを作るための書類に記入したりなんだりする。お会計を済ませ、帰り際に小さなパンフレットをいただく。店員さんはちょっと私を引き留め、自らページを開いて私に見せる。
「このサプリメント、肌荒れが気になるお客様におすすめなんです。今度リニューアルするんでよかったらぜひ!」
最後までやはり恥ずかしかったけれど、全然嫌味のない素敵な店員さんであった。トータルで15分くらいはかかったと思うけれど、私はかなりいい気分になって店を出た。

こうして、始めは予定になかった袋を手に提げ、私はいつもデパートを後にするのだ。




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