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気づいたら夢が一個叶ってた




80の祖母と暮らしていることもあって迂闊に外を出歩けない。
今は半引きこもり状態なのだけど、よく考えたらこんなに暇な時間があるのは小学生以来だということに気づいた。



吹奏楽部だった中学時代は言わずもがな忙しかった。放課後は常に楽器を吹いていただけでなく、机やピアノをいちいち運んだり、打楽器を三階から一階まで運んだり、トラックを呼んだり指導の先生の接待をしたりなんだか働きまくっていたような気がする。無論、勉強などしている暇はなかった。


とはいえ授業中に全てを詰め込んでいた私は希望の高校に入学できたが、そこは恐ろしいほどの進学校だったので毎日フルマラソンだった。とにかく予習に追われていた。事前に教科書に目を通しておかなければついていけない授業だったからだ。そればかりかオーケストラ部と華道部を兼部し、さらに外部のジュニアオーケストラにも所属していた私はいつ休んでいたのか思い出せない。休日の記憶がほとんどないけど、多分普段の寝不足を取り返すために寝て過ごしていたのかもしれない。
進学校のくせに余計なことばっかりやっていたもんだから、当時漠然と描いていた建築家になりたいという夢は潰えてしまった。数学が圧倒的にできず、理系に進む未来が考えられなくて文系に進んだ。けれども今思えば、数学はやればやっただけ伸びる学問だからやはり真面目に勉強しておけば良かったとちょっぴり後悔している。


さて、建築家になる夢を諦めた私は今まで打ち込んできた音楽の知識を生かしてなんとか大学に進むことができた。大学一年の頃は親が東京に住むことに猛反対したので、宇都宮から約2時間かけて通った。そればかりか今度は3つのオーケストラ(時々プラス1)に入団し、懲りずに楽器に熱中した。
大学2年に上がるときに利用していた路線がダイヤ改正をし、流石に通うのに無理が出てきたのでようやく東京進出をかなえることができた。でも次に待っていたのは家賃や生活費を稼ぐためのバイト祭り。オーケストラの予定は徐々に減らしていったが次第にゼミの方が忙しくなり、学生企画展や先輩方の作品のお手伝いなどをしているうちに日々が目まぐるしく過ぎていった。(さらに遠距離恋愛まで始めてしまい、東京と愛知を行ったり来たりするというヤバい生活となった)
そんなことをしているうちにあっという間に就活生。目が覚めたら社会人目前、という感じだった。ここまで本当にマラソンのごとく駆け抜けていた私だったので、なんだか疲れてしまったのかもしれない。このまま流れに乗って就活をしてしまってはいけないような、釈然としない違和感があった。このままでは自分がすり減ってしまうと、私の無意識が警告を出したのかもしれない。だから地元に戻る代わりに休学をさせてくれと親に頼み込み、許しを得たのだった。
それでも結局2月くらいまで東京でなんやかやあり、3月になって本当に丸々一ヶ月の休みをもらった私はコロナによる外出自粛要請も相まって、これまでの人生の一時休憩のごとく家に引きこもっている。初めの頃は急に生活のリズムが変わったからか漫然と体調を崩していたが、ここ最近やっと体の調子が戻ってきた。



学校なんか行かず、不登校になっても良かった、引きこもり生活をしてみたかったと思ったことがあった。そしてなんと今はまさにその状態で、私は昔抱いた夢を実現しているのであった。
でも3月丸々休んでみて、分かったことがある。
私は引きこもりには向いてないということだ。
やっぱり日々何か予定を入れていた方が張りがあるし、脳がグルグル動いているし、生きている感じがする。何もないと、下手するとどんどんネガティヴな方向へ思考が傾き、自信がなくなって自分を責め始める。SNSを開けばまるで暴力的なキラキラした世界がに目に飛び込んでくるし、鬱な映画を一本でも見れば感度が増しているためか悪い気が入り込んで不安が倍増し夜が怖くなる(笑)。そう考えると、何ヶ月も何年も引きこもりができるというのも一つの才能なのかもしれない。
でもやってみたからこそ向いてないってことが分かったのだし、やりたかったことを一つ叶えることができたのだから私は幸福だ。
一時期は本当に辛かったけれど、ここ数日でやっと人生への好奇心が戻ってきた気がする。やっぱり頭の回転にも心身の健康が不可欠だ。私のお家暮らしはまだ続くし、せっかく調子がよくなったから今度は創作に没頭してみようと思う。そのための休学でもあったわけだし。あとは、ちょっとずつ将来についても考え始めなきゃいけない。でも、前に思っていたよりも窮屈に感じない。今は自分の未来がどんなふうに続くのか、楽しみにさえ思えるようになった。
コロナによって時世は落ち込んでいるし不安な状態はこれからも続きそうだけど、私は自分の人生のリズムに従って、今できることをやるしかない。






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