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誕生65周年記念 ミッフィー展~水丸さんのおっしゃっていたこと

Piyoko-Labo イラスト担当・陽菜ひなひよ子です。ようやくミッフィーの展示に行けました。

ディック・ブルーナさん(1927-2017)といえば思い出すのは、2006年に通っていた築地の学校・パレットクラブの講師でもあった亡き安西水丸さん(1942-2014)。水丸さんは口を開けば「ブルーナさん」を繰り返すほど、ブルーナさんを神とあがめておられるようでした。

グラフィックデザイナーでもあったブルーナさん。少ない色数での「シンプルな構成やデザイン力」のすごさについて、熱く熱く語っておられた水丸さん。水丸さんの影響でブルーナさんの本を読んで、サラッと描いているように見えるミッフィーを生み出すために、ブルーナさんが何度も動物園に通ったことを知りました。

原画や実際に絵を描くブルーナさんの映像を見て、水丸さんのおしゃっていたことが、わたしの頭の中で繋がったのでした。


「ゆきのひの うさこちゃん」温かみのある手描きのタッチ


後年のミッフィーは、ブルーナさんが透明なシートに描いた線に色を当てて配色を決めるという方法が採られていましたが、初期は全てが手描き。

青い背景の上に、ミッフィーの白が塗られています。目やボタンなどの部分がへこんでいるのがハッキリとわかるほど厚く塗りこまれていて、丁寧な仕事ぶりに脱帽。この厚みのある境目は、筆で塗ってこうなるもの?カッターで切り取っているかのようなクリアな境目を、思わず目を凝らして見つめてしまいました。


シンプルを極めたブルーナさん


ミッフィーの絵本の中でも、おばけとじょおうさまは、かなりツボ。このデザインのピンバッジがあったら、絶対買ったのに。
どんなものも、よりシンプルに伝わるためには?と試行錯誤を繰り返していたことが、たくさんのボツイラストや修正を繰り返した草稿(オランダ語なので読解できないけど)から感じ取れました。

ブルーナカラーと呼ばれる「赤、青、白、緑、黄色」に絞ったシンプルな構成。視覚面だけでなく、ブルーナさんは言葉にもこだわり、短く韻を踏んだ言葉で子どもにより伝わるように、何度も草稿を書き直したのだそうです。

そんなブルーナさんの精神は、翻訳を手掛けた日本の作家たちにも受け継がれます。シンプルな言葉は日本の詩の基本と言える七五調で、短くわかりやすい表現になるよう工夫されました。

ブルーナさん自身も「日本は文化にシンプルな精神が息づいている」と日本を評価し、愛してくれていたとのこと。確かに、和の芸術やわびさびはシンプルの極みかも。


「線の揺らぎ」には魅力が詰まっている


今回初期のグラフィックデザインのポスターなども見られて興味深かったです。マティスのシンプルな構成が好きだったというブルーナさん、サビ二ャックの影響なども感じ取れましたが、やはり影響を受けた画家に名を挙げているそうです。

最後に、水丸さんの言葉が頭に響き渡った瞬間のこと。動画でブルーナさんが、絵筆をふるえるように動かしながら、ゆっくりゆっくりと線を描く様子。ミッフィーの線は、決して一本調子ではないのです。線は細かく揺らいでおり、その「揺らぎ」こそが、イラストレーションに魅力を与えています。

水丸さんは、イラレでパキッと描かれた線に否定的な方で、受講生の作品を講評する際に「自分だけの線を生み出しなさい」と繰り返しおっしゃっていたことを、よく覚えています。それはこういうことだったんだな、と今さらながら納得したのでした。

名前スタンプは、ひなも本名もなくてあきらめ、ピンバッジは好みのデザインじゃないなど、迷った結果、安定の「一筆箋&マステ」に決まり。かわゆし。。。あまりのかわいさに、帰宅後検索しまくってお高い限定品ミッフィーをうっかり買いあさりそうになった。恐るべし、ブルーナさん。

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