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キンモクセイのカホリ

雨が降るたびに季節が進んでいる気がする
いつの季節でもそうだが、雨は次の季節を運んできてくれるようだ

数日前に雨が降った
そして、昨日くらいから一気に金木犀の香りが街中に漂いはじめた
一年の中で外にいるだけで気分がよくなっていろんなことがどうでもよくなるのはこの時期だけじゃないだろうか
ずっと香りを身体に取り込んでいたい気持ちになる

ラジオやSNSで金木犀に関する話題が出てくるたびに、あの甘い香りはいつになったら自分は感じれるのだろうかとそわそわしていた
大学に行くのも、大通りじゃなくて香りがした記憶のある住宅地を通ってみたり、金木犀が歌われている曲を聴いたりした

少しかおるようになってきたなと思ったのは昨日
今日はその3倍くらいの香りを放っている
明日は、明後日は、来週は、どうだろうか

この甘い香りはいつまで自分を楽しませてくれるのだろうか
でもこの香りは、いつか自分の前からいなくなってしまう
別れが来ないでほしいと最近は思っている
ずっとこの香りが街を漂っていればいいのに

これは、もはや恋をしているかのようだ
好きな人とすれ違うためにいつもと違う道を通ったり、出会えた時の胸の高鳴りだったり、楽しい時間が終わってほしくないという名残惜しい気持ちだったり、全部言い換えられそうだ
本当にこの時期にしか嗅ぐことのできない香りなので、七夕にしか出会えない織姫と彦星の気持ちが分かった気がした

金木犀に恋をしている
これだけ聞いたらすごく変な感じはするが、まさにそんな感じだ
こんなに盲目になれるのは、1年でほんの少しの期間だけ現れてくれるからなのだろうか
それとも終わりがあるからだろうか
毎日同じ香りがしていたらマンネリ化して何も思わなくなるのだろうか
まあ、そういう経験は多くないのでよくわからないのだが笑


あ、でも、何か忘れたくない気持ちとか感情を香りに紐づけて忘れないようにしようとしているのかもしれないな、と
きっと来年、無意識の時に金木犀の香りがふわっと香ったら、何かを思い出すんだろうな

これを書いたことを覚えていたら、読み返してみようと思う

美味しいご飯が食べたい! 旅行に行きたい!