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なぜ今フィルムで写真を撮るのか

発表会の期間中、意外に多かった
「なぜ今フィルムカメラなんですか?」の質問

少しお話ししてみようと思います。

好きな写真家さんと出会う

何気なく「あ、好きだな」と思った写真と出合い、その写真を撮られたのが写真家の濱田英明さんと知ったのが2018年の秋くらいでしょうか。

以前「ポートレイトを考える」でも書いたのですが、わたしが好きな人との距離感を絶妙に写真として表現していたのが濱田さんで、大河ドラマ「いだてん」の写真はもうなんだか言葉にならない気持ちよさだった。

その濱田さんが写真はフィルムで撮っていると知り、その時からふつふつとフィルム欲は湧いてきていたんだと思います。

フィルムとの再会

2019年10月にYASHICAの70周年記念として発売されたMF-1を、中学生ぶりのフィルムカメラとして購入したのは、「フィルム交換が可能な写ルンですって感じです。」という一文にまんまと煽られてしまったから。

付属のYASHICA 400を装填して36枚1本を早々に撮り切って、濱田さんが利用していることで以前から憧れていたヤマカメさん(山本写真機店)に出して待つこと10日。
現像されたネガフィルムそのものの美しさと、データ化された写真の雰囲気、そしてプリントされた写真に大袈裟ではなく脳内が宇宙に飛んでいくような高揚感を感じました。

この高揚感がなんなのか。それを知りたくて、デジタルではなくフィルムで写真を撮影していくことをこの時に決めたのです。

フィルム一眼との出会い

YASHICA MF-1で味わった感覚を持って、更に自分の狙ったところへピントを合わせるためにフィルム一眼を買うことを決意し、探すこと約1ヶ月。
元々デジタル一眼はNikonを愛機として15年使っていたのもあって、今回も迷いなくNikonから探し、自分への誕生日プレゼントと称してNikon new FM2を購入しました。

カメラ自体の可愛らしさや、素晴らしさを語るのは(今回は)割愛して、その一眼で撮った写真を見た時「あ、わたしが表現したかった写真ってこれだ…」とまず思ったのが色でした。

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まずはスタンダードにとFuji業務用100で撮影したのは太田市の図書館。

白い壁の乳白具合や、ガラスの青緑感。そしてなによりも静か。
コントラストが弱いのかと言えばそうでもなく、シャープさがないのかと言えばそうでもない。ただ、本当に静かにそこに佇んでいる感があって清々しい。それが初めてフィルム一眼で撮影した写真に対する感情でした。

レタッチ沼

学生時代から家業の様々なシーンを彼此20年近くデジタル撮影し、Photoshopの進化に合わせてレタッチ沼にどっぷりハマり、Lightroomの出現で更に深みにハマってきました。

Rawから現像し、レタッチをすればする程、これはわたしが撮りたかった写真だったのだろうかと問答が始まり、際限なく何時間もかけてレタッチしたにも関わらず魔が刺して元の写真を確認してしまった時の絶望感など、もう言葉にならない程の自己嫌悪に陥ることが多々ありました。

夜中までレタッチをして、これで善しとする!と眠ったのにも関わらず、やっぱりあそこは違ったかも…と魘されて結局パソコンを開けて叫びながらレタッチを再開したり…少し狂気だったなぁと思います。

正直、レタッチに疲弊しきっていたのです。

カメラ×レンズ×フィルム

当然ながら何の疑問も持たず、フィルム写真データもレタッチをしました。

しかしその全く無意味なこと!

(※これはマスの意見ではなく、わたしの独断と好みです)

例えばこの記事のタイトル写真、露出が全然足りていなくて、飼い猫が黒く潰れてしまっています。でも、このシャドウを明るくレタッチをすると、フィルム独特のマットなザラ付き感が飛んでしまう。

レンズを通ってカメラのシャッター幕の開いた瞬間の光がフィルムに焼きついてできる像は、もうその瞬間のものでしかない。
フィルムの各色の膜に焼き付き発色する。そのロマンを人力で変化させることにどうしても意味を見出せないのです。

勿論、その焼きつかせる光を調整して、より解像度を上げることは今後の課題ではあるのだけど、そうやって少しずつ上達していきたいなと思うのです。

ランニングコスト

冒頭の質問の中でも「フィルム高くない?」「どこで現像するの?」は特に多くて、これはわたしがフィルムカメラをリサーチしている時もQ&Aでよく見かけたもの。

まず金額についてです。
フィルム本体はピンキリですが私がメインで使っているものは平均600円。そして大体どこの写真屋さんも現像600円+データ化600円=1200円程です。なので、1本当り1800円。
これを高いと思うか、そうでないと思うかは各々の基準によって違ってくるとは思うのですが、わたしにとってレタッチなしで36枚の写真が1時間程で仕上がってくれるのは「もう神かな!!!」と言う感じなのです。

次に現像するお店についてです。
わたしが現在お世話になっているのはカメラのキタムラさん。
まだまだ初心者で、スタンダードな色味を勉強したいため、1本目のヤマカメさん以降オーダーはお預けにしています。
他に郵送受付してくれる写真屋さん(参考/45House)もあります。

最後に

現在、廃盤が続き、年々値上がりしていくフィルム。
それに反比例するようにフィルム人口が減ってしまっているのは深刻な問題で、負のループにハマってしまっているように感じます。

時折「時代錯誤なのでは?」と思ったりもしますが、じゃぁ絵画界でアクリル絵具が発明されたから油絵具が時代錯誤なのかと問えば答えはNoです。油絵具のように、デジタルとは異なるひとつの表現手段として今後もフィルムが残ってくれることを切に願います。

サポートありがとうございます。 頂いたサポートはフィルムの購入や現像に充てさせていただきます。