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「VR酔い」を防ぐ手法、静岡大学が研究結果を報告

VR体験によって起こる「VR酔い」。この症状を防ぐ手法について、静岡大学の研究者の報告が発表されました。研究によると、VR体験者にコンテンツと同期する音響・振動を同時に与えることで、VR酔いの症状が明確に軽減されることが明らかになりました。

VR酔いとは

「VR酔い」とはVR体験によって頭痛やめまい、吐き気や胃のむかつきなど気分が悪くなる症状を指します。一般にVR酔いは「動揺病(motion sickness)」の一種と考えられています。動揺病とは、視覚・前庭・体性感覚などが関与する酔いのことで、例として船酔いや車酔いなどの乗り物酔い、大画面映画による映画酔いなどがあります。しかし「酔い」のメカニズムが完全に解明されているわけではなく、確実な対処法は見つかっていません。そのため、過去記事の中でも課題として取り上げているように、VRコンテンツの制作を行う上で大きな課題の1つとなっています。

VRバイクシミュレータを用いた心理学的実験を実施

【本研究のポイント】

・これまで、大画面一人称映像によって発生する酔いに対して、簡易で有効な低減手法はなかった
・従来研究では、音と振動それぞれについて、映像酔いに対する低減効果が調べられてきたが、どの研究でも効果がないとされてきた
・本研究では、エンジン音と振動の大きさとタイミングを同期させた呈示によって、酔いを大幅に低減できることを世界で始めて実証・映像酔い発生には、連動した感覚情報の欠落が大きく寄与することを示唆
・オートバイシミュレータによる酔いの低減にとどまらず、幅広い社会応用が期待される

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 静岡大学情報学部の板口典弘助教・宮崎真研究室とヤマハ発動機株式会社の木村哲也・三木将行の研究グループは、エンジン音と振動を同期させて呈示することによって、オートバイのシミュレータに起因する映像酔いの重症度を半分以下に低減できることを発見しました。

実験に使用したコンテンツは5分間のバーチャルオートバイです。80名の被験者を、音響と振動ありのグループ(AVグループ)、どちらもないグループ(no-AVグループ)、音響のみグループ、そして振動のみグループの4つに分けて実験を行いました。

被験者はスクーターにまたがりHMDを装着。振動は座っている椅子部分の座面から伝わり、エンジン音と振動は、バイクのスピード(視覚的変化)に合わせて変化します。視聴後の被験者の体験中、体験後の酔いの程度を質問票に回答してもらう形で調べました。

この結果、AVグループは他のグループと比較し、酔いに関するスコアが明確に低減することが明らかになりました。これまでにも音響のみや振動のみ、など単体での検証は行われていましたが、いずれも効果が得られていませんでした。しかし今回の実験では、ライドマシンの速度に合わせた音響と振動を与えることで、酔いを抑止できると示した形です。論文内では、触覚といった他の感覚も合わせると更に酔いを低減する効果を持つ可能性に言及しています。

本研究成果は、英国のNature Publishing Groupの発行するオンライン科学ジャーナル「Scientific Reports」にも掲載されています。

音や振動など視覚以外の感覚を用いることは、没入感を増しVR体験の質を上げながらVR酔いのを対策を施すことが出来ます。

参考:https://www.shizuoka.ac.jp/news/detail.html?CN=6399

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