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2022年を振り返ります(前編) #月次レポート研究所のポッドキャスト 2022年12月 第1回 テキスト版

上記の録音のテキスト版です。ちなみに今回からマイクを変更しています。
会議や取材、講演等はオンラインが定着し、もとに戻ることは考えられないので、USB接続の「SHURE MV7」という高品質マイクを用意しました。


renny:月次レポート研究所のポッドキャスト。12月は2022年を振り返ってみたいと思います。早速ですが、吉田さんは今年を振り返って、大きな出来事だと思われたことは何になりますか?

吉田:やっぱり投資の面だと、為替の変動がすごかったなっていうのが一番ですかね。去年の年末は1ドル110円台でしたから。

renny:それがあれよあれよと10月末には150円近くまでいきましたよね。為替がこんなに動くのは、当然予想されてなかったですよね?

吉田:もちろん。自分が投資をはじめてからで考えると(2000年以降)、大きく円高に動くことは結構あったのですが、円安方向は初めての体験です。自分がポートフォリオのこれぐらいの割合が海外資産みたいな感覚があったのが、米ドルのところが円建てで計算するとものすごく増えて、なんかどう考えたらいいのかなと、迷ったりもしました。

renny:円換算で30%~40%ぐらいこの1年ぐらいで増えたというか、円換算すると評価額が上がったような感じなんですかね。

吉田:そうですね。アメリカの株価はそんなに上がってないのに、ドル資産がずいぶん増えちゃったなと。

renny:なるほど確かにそうですね。今おっしゃったように、アメリカの株価はどちらかというと下がっているのに、円建てで見るとそんなに評価額が変わらないなんていうのは、僕も同じようなことを感じました。結局、急激な円安を引き起こした一つの要因には、ドルの金利が上がったことがあると思いますが、それにしてはすごい勢いで円安になって、今はまた少し戻してきていますよね。

吉田:そうですね、今130円台半ばぐらい。

renny:でもまた110円あたりに戻ったりするのかどうか、そのあたりはちょっとわからないですよね。

吉田:わからないですよね。私が通貨分散を考えてドルに替えた時期は大体1ドル117円。なので、そこから15年ぐらいずっと為替差損だった訳で。今、初めて為替差益が出ている状態で結構戸惑いましたね。為替の予測ができたらこんなことにはならない。。。

renny:なるほど。ちょっと為替は予想しづらいのもありますし、動くときは極端に動く印象が強いんですよね。今年はこうでしたけど、来年どうなるかっていうのも全然予測つかないのかなと思いますし、一喜一憂してもしょうがないのかなと思いますが、どういうふうに向き合えばいいでしょうか?

吉田:なんかもう防災みたいな感じですよね。地震とか災害に備えてやっておいて、たまたま今はプラスなったぐらいの感覚です。

renny:今後、ドル建ての資産を増やしていこうとか減らしていこうとかそこら辺って何かお考えをお持ちですか。

吉田:昔からすごく適当に「4-4-2」。サッカーのシステムみたいですけど、日本を「4」、アメリカを「4」、ヨーロッパを「2」という感覚です。それでも、為替が急に動くと捉え方が難しくなりますね。

renny:どの通貨をベースにするかによっても見るのか?ということもあるでしょうし。ドル建てを円換算すると米国株の資産はあまり変わらない。でも日本株はドル換算すると、去年に比べたら減ってしまいますよね。

吉田:そうですね。事前にグラフをいただきましたね。

renny:日経平均株価のページでPER、PBRや配当利回りに加えて、ドル換算値が日次で掲載されていて、これでいくとドル建てで年初から2割下落しているんですよ。だからドル建ての資産は円換算するとすごく増えた一方、日本の株式をドル換算すると2割減っていたことになりますね。為替によって全く見え方が変わるんですよね。ヨーロッパが2割とのことでしたが、ヨーロッパといえば、ロシアのウクライナ侵攻がありましたが、吉田さんは予測されていましたか?

吉田:いや予測は無理でしたね。戦争が起きてから、過去の発言とか見ていくと、もう起きてもおかしくない状況だったんだな、というのが分かったというところでしたね。

renny:そうですよね。個人的には緊張が高まっていることはニュース等で認識をしてはいましたが、まさか本当にこういうことになるとは想像していなかったので、実際、僕の勤務先の仕事でも、多少あの方面の仕事があったので、2月、3月はすごく慌ただしくてですね。ロシア企業との取引自体をどうするか?みたいな話で、一律もうロシアの企業とは取引できないよね、という雰囲気にはなったわけですけれども。それも直前までそんなことはなんだかんだ言って起こらないだろう、と思って日々仕事してるわけなんで。企業の業績にもインパクトがあった会社もあるとは思いますが、戦争が起こったせいでダメージを受けたという話を耳にしていないですが、吉田さんは何かそのあたり、お聞きになったりしましたか?

吉田:あまりないですね。ただ長い目で見て変化が起きるかも、という点があって、ドルの基軸通貨っていうのが今後どうなるのかなと。結局、経済制裁は今ドルが基軸通貨だからああいう形の制裁ができるのであって、でもそうなると中国とかは今後ドルを持っていたくなくなるだろうなと。

renny:たしかにドルが基軸通貨じゃなくなると、さっきの為替の話も何を基準に考えるのか難しくなっちゃいますよね。

吉田:今、個人投資家の間で、アメリカの株を買っておけば、もうあとは何も考えないでOKみたいな考え方があると思います。でも、アメリカの株価がずっと上がっているのは、もしかしたらドルが基軸通貨だから世界の投資家がドルをたくさん持っていて、その余剰資金をアメリカで投資しているからかもしれない。ちょっと今後そのあたりは注意して見ていかないといけないんじゃないかな。

renny:投資できるお金を一番手っ取り早く投じる投資対象としてはアメリカの株だということで、そこの部分が価格を上に引っ張り上げているんじゃないか、ということですかね。

吉田:そうですね。

renny:そういう面はもあるかもしれないですよね。5年10年単位でどれが取って代わるっていうようなことはなかなかないのかな、と思ったりもするんですけれども、ただ何が起こるかわからないってとこなんすかね。

吉田:世界の国々の世界の外貨準備の通貨別の保有比率を見ると、30年前はドルが7割を占めてましたが、去年は6割切っているので、ジワジワ減ってきてるんですよ。

renny:そういうトレンドはあるんですね。ドルに取って代わったのはやっぱり人民元ですか?

吉田:人民元が特別増えているわけでもないんですよね。

renny:なるほど。先ほどの為替の話で円安の原因だったのがアメリカの金利上昇で、それが株価にもインパクトを与えていて、アメリカも日本もどちらかというと高い成長を期待されていた会社の株価が下がった1年だったと思いますが、吉田さんはどういう風にお感じになりましたか?

吉田:今がチャンスなのかな?って感覚はあるんですけどね。

renny:それはちょっと調整されすぎじゃないか?ということですか?

吉田:そうですね。もう取捨選択は始まっているとは思いますが、これからも残る企業を選べたら今がチャンスってところですね。

renny:今は成長株よりもいわゆるバリュー株が買われてるような印象も受けますが、どこかで潮目が変わるだろうと考えたときに、吉田さんからご覧になって、今が買い時かもしれないというのは、どんな分野の会社ですか?

吉田:まずはひとくくりでITの分野。どういう会社がいいか考える時のヒントは、2000年のITバブル。ITバブルが崩壊して、それでも生き残った会社って、日本でもサービスに触れられた会社だったんじゃないかなと。そういう視点でアメリカの最先端の企業に投資していけばいいのかなと考えていたりします。

renny:日本でもサービス触れることができるような、新しい新興企業みたいなところなんすかね。

吉田:ITバブルが崩壊した頃、AmazonやGoogleは、すでに日本でも使える状態だったと思います。Amazonはすでに上場していて、株価もものすごく下がってた頃だったと思うんで。何かそういう視点で見つけられたらいいな、とは思ってるんですけどね。

renny:早くわかっていればGoogleもあのとき買っとけばよかった、と以前にも話したことですし、Amazonも然りなのかもしれないですね。でも、僕が年をとったせいかもしれないですけど、当時のGoogleのような、実際にそのサービスを触れて、これすごいのでできたなって感じることが、最近はあんまりなくなっちゃったんですけど。吉田さんはそんなことあります?

吉田:そうかな。いやまだ面白いのはありますよ。宇宙ビジネス関係とか。ただ宇宙関係って、どうしてもミサイルとか軍事関係の事業がくっついてきちゃうので、投資しにくいんですよ。

renny:この間、広告か何かでたまたま目にしたのですが、スペースXのページが出てて、数万円の機械を買って、月1万数千円で超高速インターネットが使えますと。もしかしたらあれも宇宙に近い話かな。ただ、ちょっとその金額を出してまで、そんなに速いインターネット欲しいか?と言ったら…・。あとは自動運転とかですかね。

吉田:そうですね。あと車つながりで空飛ぶ車とかも。

renny:そういうの本当にあるのか?と思っちゃいます。昔のAmazonやGoogleは体験するためのハードルがそんなに高くなかったじゃないですか。本買いたいなと思ってネットで注文するとか、Googleも検索窓に言葉を入れてクリックすればよかったんですけど、空飛ぶ自動車は体験するためのハードルが高いのかな、と思ったりもするんですよね。

吉田:たしかにVRなんかも割とハードル高いですからね。デカいゴーグルをつけないといけない。

renny:メタバースのようなのも、今後注目の技術ですかね。

吉田:そうですね。個人的にはVRより先にARが先にくるかなと思ってます。眼鏡か何かで目の前に映し出される感じのが。

renny:博物館などで体験価値が上がるとかそういう仕掛けですよね。でもARやVRは場所を選ばないものなので、実際浸透し始めたら早いかもしれないですよね。それに関連する事業をしている企業と言えば、結局、ソニーとかですかね。

吉田:そうですよね、日本は新しい会社が出てくるって感じじゃないんですよね。

renny:将来のことを話すのも面白いんですが、今回は今年を振り返るのがテーマなのでもとに戻って、今年印象に残ったというか、これは来年に向けても続いていくようなものとして、気になってることはありますか?

吉田:新しい投資テーマとして「国防」。日本にはこの会社があるから守らなきゃいけない、と世界に思わせるような会社や産業を応援する、というような。

renny:武器を作るとか兵器を整えるというよりは、いわゆるそのソフトパワー的なそういうようなものですよね。台湾でいうところの台湾セミコンダクターがある中で、そこを戦地にしていいのか?という文脈ですよね。

吉田:そうですね。今回のロシアのウクライナ侵略でも考えさせられましたね。

renny:この会社が日本にあって、日本でその物を作ってる、ということもあるでしょうけど、発想やアイディアを生み出しているのが日本の会社で、そこの従業員がいなくなると大変困ったことになるよ、っていうような会社が日本にあると、安全保障上もそうそう他国から攻められないんじゃないか、という感じですかね。

吉田:結果として普通の投資と一緒になっちゃいそうな気もするんですけどね。世界シェアを握っている会社とか。

renny:地球規模で解決策を提供している日本の会社が、強みを出せているのが日本にあるからこそ、というようなことを言い出すと、今までの投資と何が違うんだ?と言われたら、確かにそうなのかもしれない。でも、そういう色彩がより濃くなっていくかもしれないということですかね。

吉田:そうですね。

renny:だからその種の会社に対して、株式市場の評価も多少切り上がるというか、もう少し買われないといけないんじゃないか? みたいなことになるかもしれないですね。

吉田:そういう可能性もあるでしょうね。

renny:僕らはどこか平和ボケしてるところがありますからね。毎日のように隣の国でミサイルを撃っていても、まさか本当に飛んでくることはないだろう、と思ってるじゃないですか。でもどういう精度なのか分からないですから、間違って飛んでくることも、なきにしもあらずですし。そんなことになったら、地球規模で損害を与える会社が日本にありますよ、となると、もう少し自制してもらえる、ということに…、あの人たちには通用しないでしょうが。たしかにそこの部分は考えさせられる点ではありましたね。

renny:もう一つ、投資会社はインデックスファンドを通じて世界全体の株式を買うと、多くはないもののロシアの会社が含まれてたと思います。西側が経済制裁をしているのは、天然資源以外にロシアにここがなかったら困るという企業があまりなかったというのもあるかもしれないですね。

吉田:たしかにエネルギー以外に思い当たる企業がないですね。

renny:だからそういう意味でソフトパワーが少ないから、ハードパワーに頼らざるを得ないところもロシアにあったのかなと思います。早く収拾してもらいたいなと思いますし、今ワールドカップで盛り上がってますが、たった4年前はロシアでワールドカップをやってたんですからね。

吉田:あー、そうでしたね。

renny:それを思うと4年間で、こんなにも様変わりしてしまうのかと感じさせれます。どういう決着の仕方をするのか分からないですが、台湾と中国の問題にも関わると思うので、本当注視しておかなきゃいけないのかなと思いますね。


後編へ続く

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