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2023年 月次レポートに注目したいアクティブファンド 前編  #月次レポート研究所のポッドキャスト 2023年1月 テキスト版

上記のポッドキャストのテキスト版です。


renny:2023年に入って20日ほど経ちましたが、株価は昨年末から少し上がってるかなと思いますが、吉田さんは金融市場をご覧になって、お感じになっていることはありますか?

吉田:為替が1ドル120円の後半ぐらいまで円高になってきて、一時期、1ドル150円までいってしまったときは、海外の株を円建てで買うのはどうなのかな?と思っていましたが、このぐらいまで戻ってきてくれると、投資しやすいんじゃないかなと。(※補足:昨年急速に円安が進んだ際、iDeCoの投信を日本株ファンドに切り替えたり、おおぶねグローバルの積立投資を一旦停止していたので、そろそろ元に戻していこうかと考えています。)

renny:なるほど。日本の金利もこれからさらに上の方に行くかと思ったら、昨年末の日銀政策決定会合の驚きが大きすぎたせいか、先日の発表はなんか拍子抜けでしたね。

吉田:そうですね。なんか日本も金利上昇の方に動くのかなと思ったら。。。

renny:アメリカの方も少し落ち着きというか、3.4%ぐらいで止まってるみたいなので少し落ち着くんですかね。

吉田:今年の年末にはもう利下げするんじゃないか、みたいな話も増えてきたので、そろそろアメリカの金利上昇は止まるのかなぁと。

renny:やっぱりアメリカはインフレが少し落ち着いてきたから、そういうふうな話も出てきて、一方で企業の業績や株価の方に悪影響があるかもしれないですね。日本はまだインフレの途中のような雰囲気なので、今回は日銀の発表は少し拍子抜けでしたけど、今後は金利を上げていくような方向になるのかもしれないですね。

吉田:そうですね。日銀の国債買い入れについても、今は日本国債の半分を日銀が保有してしまっていて、なんじゃそりゃ?という状態なので、元に戻す、といっても元って何なのか分からないですが、とにかく、今の状態がおかしいのは確かなので、修正していくんだろうなと思います。

renny:そうなってくると、お金を借りてる人たちは、ちょっとずつ、しんどくなってくるかもしれない。これまで今年はそろそろ小企業倒産が増えるんじゃないか、何年も同じことが言われてきましたが、遂に起きるのかもしれないですね。

吉田:そうですね。住宅ローンの金利も変動金利で借りてると、結構影響あるんじゃないかな。

renny:そうでしょうね。ちょっとこんな感じで先行きを予想するのは、投資家としてそんなに一生懸命やるような話ではないと思うんで、なるようにしかならないのかなとは思っています。最近の話題でいきますと先週の土曜日に、投信ブロガーが選ぶファンドオブザイヤーの発表がありましたが、結果はご覧になりましたか?

吉田:はい。きっとこの順番に手数料が安いんだろうなぁ、という感想しかないですが。

renny:今回は投票の方式も変わって、投票者数も減ったみたいな話を聞いています。ただ出てきた結果は驚きはなかったですね。一部の方が分析されていましたが、投票者数が減ったことによって、アクティブファンドが複数トップテンに入ることになったんじゃないかと。そこら辺もご覧になって、なにかありますか?

吉田:前から20位以内には入っていたファンドで、とくに目新しくはないですよね。

renny:それをどう見るかですよね。目新しいものが入らずに、マンネリ気味に見えるのかもしれないですが、何年も支持されてたものが変わらず入ってることは、それなりにポジティブに評価してもいいのかなと思います。

吉田:そうですね。新しいアクティブファンドは何年かに一つ増えるぐらいですね。最後に加わったのは数年前の「おおぶね」かな。

renny:だから後に続く予備軍というか、例えばこのポッドキャストでいくつかご紹介したベイリー・ギフォードスパークスといった、ファンドの情報発信や説明をかなり熱心にされているようなファンドの姿が全く見えなかったのは、どうしてもコストが高いというのがあって、結局トップ20に入ったアクティブファンドを見てみると、やっぱりどれも積立NISAの対象ファンドなんですね。なかなかそこを踏み越えて選ばれることは難しいのかなと感じましたね。

吉田:そうですよね。一般的に積立NISAの枠を使い切って、さらに投資をしようって余裕がある方は、そんなにいないはずですしね。

renny:これからNISAの枠が大きくなってくると、どうなるのかなと。このまま行ってしまうと、今の積立NISAに適格とされるファンドもパッシブに押されて、積立NISAがパッシブファンドで埋め尽くされちゃうんじゃないかな、って思ったりもするんですよね。

吉田:ありえない話じゃないですね。

renny:だからそれがいいことなのか悪いことなのか、ちょっとわかんないですけれども、何かこれまでやってきたことの報いみたいなものが出てくるのではと思ったりもします。

renny:今回のポッドキャストでは、僕の独断と偏見で選んだ6本のファンドを事前に吉田さんにお知らせしています。どれもアクティブファンドですが、投信ブロガーが選ぶファンドオブザイヤーや積立NISAの適格ファンドとしても、コストの面で選ばれないものが多いかと思いますが、お話していきたいと思います。

renny:最初の4本が日本株、残りが海外会社を投資対象にしているアクティブファンドです。吉田さんが一番ご興味を持たれたファンドはどちらですか?

吉田:東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンです。これなら投資してもいいかな、って思うぐらい興味ありました。

renny:そうですか。それはどういう点でそういうふうにお感じになりましたか?

吉田:なぜか日本株って選んでいくと同族会社っぽい会社が残るんですよ。なぜかわかんないんのですが…。

renny:それは吉田さんが今ご自身で投資されてる会社も、そういう傾向があるっていうことなんですか?

吉田:そうなんですよね。あと何年かに一度出版される「ファミリービジネス白書」という本が、結構細かく分析していて、これは2018年版の白書に出ていた内容ですが、上場企業を歴史の長い順に100社を並べると、40社が同族に近い会社になって、その40社だけの株価パフォーマンスを日経平均やTOPIXと比べると、下がるときも上がるときも強いという研究もあったりするんです。

吉田作成

renny:そうなんですね。でも普通、下げに強いと、上がるときはあんまり上がらないっていうようなイメージがありますが、両方の局面に強いっていうことなんですね。

吉田:もしかしたら日本はオーナー企業の方が、組織がしっかりしていて、成長もしている会社が多いのかも。だからこのファンドの戦略は、日本株投資には一番ピッタリくるんじゃないかと。

renny:なるほど。このファンドは比較的、月次レポート以外にも動画とかも用意されいて、ファンドのページに「良好なパフォーマンスを生み出す秘訣」という特集ページがあって、オーナー企業の強みが紹介されています。

https://www.tokiomarineam.co.jp/special/japan_owners/index.html

renny:上記のような説明されていますが、吉田さんが最初に言われた上がるときには市場平均を上回って、下がるときは市場平均ほど下がらないというのは、こういうところが影響しているのかもしれないですね。こういう投資戦略は海外でも通用するんですかね。海外もオーナー企業に近いような、創業者がある程度のシェアを持ってる会社と、いわゆるプロの経営者の会社、という二つの会社のグループを比べたときに、欧米はそんなに差がつかないけど、日本の場合はオーナー企業の方が差がつく、ってことなんですかね。

吉田:海外のことは分からないですが、ちょっと話が飛躍しますけど、天皇家がずっと続いていたり、老舗企業が世界一多かったり、そういうところになんとなく繋がる気がして、日本特有なのかもしれないなと感じます。

renny:このファンドWebページに特別のレポートがあって、「組入銘柄のご紹介 ‐Vol.1‐」ということで、連載して欲しいなと期待しているのですが、タイトルが「老舗企業を飛躍させる4代目オーナーたち」ということで、ロート製薬コーセーが紹介されています。ファンドマネージャーから見たロート製薬の山田会長、コーセーの小林社長の魅力ということが書かれていて、こういうレポートはおもしろいですよね。

東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン「組入銘柄のご紹介 ‐Vol.1‐」P1

吉田:かなり特徴があって面白いです。

renny:こういうレポートを毎月出していくわけにもいかないと思うんですけれども、こういう方針でファンド運営されているのなら、こういう切り口で情報発信してくださるのは非常に良いですね。月次レポートをご覧になって何かお感じになりましたか?

吉田:月次レポートはいたって普通。普通って言ってもたくさん書いてある方ですが。

renny:そうですね。普通って感じですかね。だだ2ページ目のシップヘルスケアホールディングスが紹介されている文章の横にグラフがついていて、株価ではなく業績のグラフをつけてるっていうのに好感を持ちました。こういう発信を見ているとファンダメンタルズを見て、投資判断をされてることが伺えるのかなと。また説明が具体的でちゃんと取材・調査されてることも分かる内容ですね。次のページには組入上位10社が紹介されていて、ここの企業紹介は2行だけなので、このあたりは先ほどの4代目オーナーを紹介するような特別レポートで保管してもらえるとおもしろいですね。また、このファンドは純資産700億円で、そこそこ大きなファンドになっていて、資金流入も続いていますので、これからも情報発信に力を入れて欲しいなと思います。

吉田:成績も期待できるんじゃないかと思うので、注目したいです。

renny:では次に 2本目のファンドです。明治安田セレクト日本株式ファンド 【愛称:初くん】。こちらは1本目のファンドとは違って、純資産総額は8億円程度で規模はすごく小さいですが、僕がこのファンが気になったのは1年、3年、5年、10年ぐらいの期間で見たパフォーマンスが良くて、それでちょっと気になって月次レポートをチェックしてみたら、思いのほか面白かったんです。吉田さんはこのファンドをどういうふうにお感じになりましたか。

吉田:交付目論見書を読んで、設定(2000年12月27日設定)から20年以上ということにまず驚きました。それから月次レポートの3ページに掲載されている「今月のトピック」がかなりおもしろくて、10月の特集に出てきた会社に少し投資してしまいました。

明治安田セレクト日本株式ファンド 2022年10月 月次レポート P3

renny:そうなんですか。そのトピックから会社が出てくるストーリーが何か投資する対象として面白いとお感じになったってことなんですか?

吉田:「本物のAI銘柄」という切り口で書かれていて、JDSCという会社が出てきたんですけど、東大系のベンチャーキャピタルの出資を受けて上場して、あの東大の松尾教授も関わっている会社らしく。

renny:松尾教授と言えば、ちょっと話は変わるんですけれども、先日、元ミクシィ社長の朝倉祐介さんのお話の中で、スタートアップのサポートをされていて、研究室に属してる人の中では起業が普通に起こることで知られているのが松尾研究室とのお話でした。

吉田:この月次レポートをきっかけに、そういえば2年前ぐらいにこんな会社が上場してたな、と思い出して調べてみたら、上場時の3分の1以下の株価になってるし、単元株10万円未満で投資できるなら、とりあえず投資してみて、今後観察していこうかなと。(補足;1単元あたりの投資金額が少なくて済むとこういう投資の仕方ができて便利。やっぱり少しだけでもお金を出さないと真面目に捕捉する気にならないものだから。)

renny:12月の最新の月次レポートでは「気候変動問題解決を目指す銘柄に注目」がテーマで説明されていて、一番最後に業績のグラフが載っていますが、こっち予測値が入れられていたんですね。会社自身の業績予測なのか、中期計画から採っているのかは分からないですが、予測値が入っているのは他のファンドでは見られないコンテンツだと思います。

吉田:しかも3年先までの予想ですしね。あとファンドマネージャーの名前がちゃんと載っているところも良い。

renny:そうですね。最近増えてきてはいるんですが、これだけの分量を書かれてるっていうのはなかなかないですね。名前は入っていても見事に毎月毎月コピーみたいな内容のこともあったりして、自分の名前出すのは逆に損じゃないか?と思ったりしますが。

後編につづく。


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