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#月次レポート研究所 のポッドキャスト 2022年9月 第1回 ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド(愛称:ロイヤル・マイル)前編 テキスト版

こちらのポッドキャストのテキスト版です。


renny:月次レポート研究所のポッドキャスト、9月の放送になります。今回も月次レポート研究所のメンバーであります、まろさんこと吉田さんとrennyでお送りしたいと思います。前回から個別のファンドの月次レポートを取り上げてお話する形にしたんですが、吉田さん、前回の感想って何かありますか?

吉田:一つのファンドをお題みたいな感じで出していただくと、今まではちゃんと読む機会がなかったので面白かったです。

renny:ありがとうございます。前回に引き続いて、個別のファンドの月次レポートを取り上げてみたいと思います。今回取り上げるファンドは「世界長期成長株ファンド(愛称ロイヤル・マイル」。日本のファンドは三菱UFJ国際投信さんが設定されていますが、実際の投資判断というのは海外、スコットランドにあるベイリー・ギフォードが運営しています。

renny:月次レポートは2022年8月末の基準のレポートが、三菱UFJ国際投信さんのウェブサイトで公開されています。月次レポートを開くといきなり、モーニングスターのファンドオブザイヤーを取りましたと出てきます。今年はもう2022年ですが、2020年度の受賞とのことなのですが、やっぱりレポート等の最初にアワードについて載せられるケースが多いと思うんですけど、吉田さんどんなふうに思われます?

吉田:全然興味ないです。これもらったから何なのかっていうのが、私はよくわかんないんです。

renny:そうですね。もらったからどうなのかっていうのはたしかにあるので、1ページ目は割愛させていただいて、2ページ目から実際の運用の報告になっています。最初のところはどんなファンドも大体同じような話で、基準価額がどういうふうに動いたとか、それからあと純資産総額がいくらあるのか。そして中盤にいくと騰落率。このロイヤルマイルは設定来で+81.6%で、参考指数の全世界の株式の株価指数を大きく上回っていますが、直近1年見ると参考指数に対してずいぶん劣後しちゃっています。これが足元の様子ですが、吉田さんどう思われます?

ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド 2022年8月の月次レポート P2

吉田:アメリカが金利を上げたりして、成長株からお金が逃げていってる状況なので、この1年ぐらい悪くて当たり前でしょうね。このファンドにとって一番厳しい時期ですね。

renny:そうですね。逆に言うと、そういう背景があって、しかも名前に長期成長とついているのに、参考指数とどっこいどっこいなら、その方がちょっと気持ち悪い。これぐらい乖離している方がむしろ、言ってることとやってることが同じだ、ということをある意味示してるんじゃないかなって個人的に思ったりはしますね。

吉田:そうですね。

renny:一番下の段2ページ目の最後の方は、組み入れの上位の10業種それから上位10カ国。上位10業種を見ると一般消費財サービス、情報技術で65%ぐらい。続いてヘルスケア、コミュニケーションサービス。成長株というとそういう業種が多いのかなと。地域の方を見てみるとアメリカが53.4%、その次に中国が21.9%。アメリカの次に中国が入ってるのが、このファンドの一つの特徴なのかなと思います。中国で成長をするだろうとみんな思ってても、欧州諸国を大きく上回ってここまで中国に思い切って投資してるのはめずらしい。吉田さんどういうふうに思われますか?

ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド 2022年8月の月次レポート P2

吉田:難しいですよね。個人的には中国はちょっとイヤ。そもそも資本主義の国ではないので、株式投資して長期で保有するっていう感覚にはなれないなっていうのがあって。私は昔から、BRICsとかって言われてたころから、中国には投資してこなかったんで…。なんかちょっと、怖い。急に国に取られちゃいそうみたいな感じがして。

renny:そうですね。カントリーリスクのようなものは感じるんですけど、一方で企業として見た場合には中国でも革新的な技術・サービスが世界に向けて提案できるようなところが出てくるんじゃないか、というのがベイリー・ギフォードの見立てなのかな、っていうふうに僕は思ってます。

renny:3ページにいきまして、これもありがちですが、組み入れ上位の10銘柄。組み入れ銘柄数38銘柄で、1位がTesla、2位がAmazonとアメリカ企業ですが、3位にメイチュアンという中国の会社が出てきます。他にもですね7位、8位に中国の会社がピンデュオデュオ、テンセントというのが出てきてですね、上位10社のうち中国の会社が3社。上位の会社をご覧になって、吉田さん何かコメントありますか。

ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド 2022年8月の月次レポート P3

吉田:やっぱり成長に期待して投資するとなると、絶対入ってくる会社だなと。私もこの中だと、Amazon、NVIDIA、ASMLの3社には投資してるので。

renny:なるほど。テスラはいかがですか?

吉田:テスラはちょっとね、ブレが大きすぎるんで手を出しづらいです。

renny:CEOがね、なかなか突飛な人なので、うん、なるほど。吉田さんもこの辺の投資先っていうのは納得というかなるほどな、と思われるような。

吉田:そうですね。

renny:続いて運用担当者のコメントということで、市況動向、運用状況、運用方針が書かれていまして、運用状況のところでですね、基準価格にどういう企業が影響したかっていうようなことが書かれていて、最後に投資行動では特筆すべき売買はございませんでしたと。ポートフォリオで全売却をしたり、新しく投資したりは、なかったっていうようなことを報告しているようです。あと運用方針のところでは、ウクライナ情勢やインフレ長期化などによる世界経済への影響と、いろいろ書いてありますが、わざわざ今月書くことなのかな、もしかしたら毎月同じこと書いてるんじゃないかなあというふうに思ったりもします。運用方針って毎月変わるものでもないので、特にこういう長期成長株を買いますという場合は、運用方針を毎月書く必要があるのかなぁと個人的には思います。この3ページ目で、このファンドの月次レポートは終了で、すごくあっさりしてます。たぶん三菱UFJ国際投信さんの共通のフォーマットがあるので、こういうような形になってるんだろうなと。月次レポートとしては非常に淡白な感じがするんですけれども、吉田さん何か気になったこと、ここまででありますか。

吉田:ここまではあんまり興味のない内容ですね。

renny:そうですね。特にこれといった特徴もなく、個人的には投資行動のところで、ポートフォリオの入れ替えがなかった、っていうことを示してくれてるのは、具体的に明瞭に書かれているファンドって少ないんで、この点は評価したいなと思います。ただ全体から見て特に印象に残るっていうのは、確かに少ないのかなというふうなところです。

renny:一方でこのファンドは四半期に1回「長期投資をより深く知る、エディンバラからの便り」という、四半期レポートのようなものを2021年の10月から12月の四半期から出しています。こちらはなかなか質・量ともに充実している印象を持っています。

renny:最初に2ページ目、スコットランドから届いた手紙のようになっていまして、メッセージは「5歳児であれ」ということですね。なかなか面白いなと。これは別のイベントで、コモンズ投信の社長の伊井さんが、「今生まれたばかりの子供にプレゼントするとしたら、どんな会社の株式にしますか?」みたいな問いかけをされていて、それにすごく近いような問いかけなのかなと思いました。

2022年4-6月「エディンバラからの便り(ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド)」 1ページ

renny:ここに赤字で「現在の5歳児たちが将来、企業の主要顧客になったとき、何を望むようになっているかを想像し、それを見つけ出すことに専念すること」ということは、20年30年先なので、投資の時間軸がそれぐらいですと示しているのだなぁと。こういうふうな書き出しで始まるレポートっていうのは、日本の投信会社ではないかなと思うんですけれども、吉田さんはどんなふうにご覧になりましたか。

吉田:面白いですよね。こういう書き方するのは海外の特徴なんですかね。決算書でも株主への手紙みたいな感じでつけている会社はアメリカに多かったりして。なんかあれと同じ雰囲気ですよね。

renny:そうですよね。そういう意味ではちょっとなかなか他にはない特徴を感じるような形かなと。続いて基準価額の推移、ファンドの運用状況、このあたりは毎月のレポートと同じ内容ではありますが、四半期ということでもう少し時間軸を取って、基準価格の上がるのに貢献した会社と、逆に下げる方に寄与してしまった会社5社を挙げられています。3ページ以降ですね、影響した会社の紹介ということで、右側に株価推移と、組み入れのどれぐらいの順位かということを、左側には会社の事業の内容とこの四半期起きたようなことを説明されています。このあたりをご覧になって吉田さんどんなことをお感じになりましたか?

吉田:月次レポートで細かく書くよりも、たしかに四半期で区切った方が、会社の決算も1回出てきますし、値動きの要因っていうのも多少はわかると思います。前回取り上げたスパークスさんの月次レポートでは、値上がり値下がりした企業へのコメントとして、よくわかんないよってコメントがついてる会社があったと思います。1ヶ月だと分からないから、四半期でこういう詳しいレポートを出すっていう方がいいのかなって思いました。

renny:そうですよね。ちょうど吉田さん今おっしゃったように、大体の会社は四半期に1回決算があって、国によってはそうでもないようなところもあろうかとは思うんですけれども、そういう振り返りがしやすいっていうのはありますよね。

吉田:四半期で区切ると、決算や事業の状況が月次よりも詳しく書けたりするし、こういう方が読んでて面白いです。

renny:そうですね。あとは株価というよりは、業績であるとか、あるいは四半期で投資先企業の事業にどういう変化が起きたのかということに、より力点が置かれていて、やっぱり事業そのものが会社の価値というところに重きを置いているのかな、っていう印象持ちました。あともう一つ、2022年1~3月の四半期レポートと比べると、株価の推移のところはもうちょっと長い。たしかこのファンドが設定されて以降の株価推移だったと思うんですが、長期って言ってる割に株価の見せ方が短期になってるのかな、っていう印象は受けました。5ページ目には売買動向ということで、四半期の間に新しく対ポートフォリオに追加された会社がなし、売却については2社、ということでそれぞれについて長めの説明が書かれています。ここらへん、吉田さんはどういうふうにご覧になりましたか?

吉田:投資した理由だけじゃなくて、売却した理由をこれだけ長く書いてくれるのは嬉しいですよね。

renny:そうですよね。理由がはっきりしてるというか、そういう投資判断をしたっていうようなことを示してもらえるっていうのは非常に重要なことかなあと思います。それから売買回転率っていうのが、9.2%っていうことで、あんまり売買してませんよっていうようなことを示しています。数値が低いほど、組み入れ銘柄の保有期間が長いことを示す、と書かれていますが、欲を言うと、これがローリングと書いてあるので、これまでどういうふうに動いてきたか、とかっていうようなのがあるといいなあと感じましたね。

吉田:そうですね。9.2%の計算式というか、どういうふうに計算したのかっていうのがわかるとさらにいいと思うんですよね。

renny:その次の6ページにオイラー図。僕もこのファンドを知るまではオイラー図は知りませんでしたが、スイス人数学者の名前を冠した集合の相互関係を表す図とのことです。テーマがいろいろあがっていて、未来の移動、エネルギー転換、モバイル金融とかテーマをあげて、それにどのように投資先の会社が関連しているのか、というような図になっています。何を重視して投資判断しているのかっていうのを見せていて、参考になるかなと思うんですけれども、見せ方として吉田さんどういうふうに思われますか?

2022年4-6月「エディンバラからの便り(ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド)」 6ページ

吉田:見せ方というかポートフォリオの管理をするときに、自分も同じようなことをしているので、こういうのは作ってみないと、自分もわかんなくなっちゃうと思うので必要なことだと思います。

renny:そうですね。吉田さんのように投資信託というより個別の会社を自分ご自身で選択されている投資家にとっては、こういう整理の仕方っていうのは有用かもしれないですね。次の7ページでは組入れ上位の10社がどういうふうに変更なったのか、その前の四半期末と比較して入れ替わりを示して、その比較をされています。いうことで、その次のページにが、運用開始以来のパフォーマンスということで、これだけ成績が良かったら最初の方に持っていきたくなるのが人情かなと思うんですけど、レポートの中盤ぐらいに持ってきているのが、なかなか特徴的かなと思います。

renny:その次のページは「長期目線の積立投資」でということで、これはたぶんベイリー・ギフォードではなく、三菱UFJ国際投信さんが書いてるのかなと感じます。冒頭の話のとおり、成長株のバリエーションが切り下がったっていうことで、基準価額が大きく落ち込む局面というのもあるので、こういうファンドは積み立てで買うのがいいのかなと僕自身も積み立てで買っています。ただ、ここまでのトーンと比べると、何かちょっと異質というか、若干テクニカルな話になってるかなと。いるか?これって?と思いました。

吉田:売らないで、っていうことなのかなあ。

renny:いっぺんに買わないで、っていうことなのかもしれないですね。

吉田:それはありますね。

renny:まだ途中ではありますが、一旦ここで区切らせていただいて、次回エディンバラからの便りの10ページ目以降をお話ししたいと思います。


オマケ

「エディンバラからの便り」の6ページに登場するオイラー図は、個別株の投資家に作成をオススメしたい手法です。頭の整理はもちろん、関心事が特定の分野に偏りすぎていないか、どういった分野の学びが足りていないか、というようなことを気付くきっかけになりますよ。


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