第81回 何処へでも行ける切手


中二病といえば、包帯。
まあ如何にもというアイテムは他にも沢山存在するのだが、やはり包帯は中二病には欠かせないだろう。綾波レイの包帯姿は鮮烈な印象を残したし、ライトノベルにも包帯と眼帯はよく出てくる。あるラノベは、包帯メーカーの大手である白十字とコラボしたそうなので、やはり包帯はテッパンなのだ。

物心ついた頃からよく怪我をする子供であった。
頭でっかちでバランスが悪くすぐ転ぶ。膝や手には擦り傷が絶えず、怪我しないで小学校から帰宅すると、親に驚かれるほどだった。
なかでも右足関節(足首)の捻挫は何度も繰り返したため、くせのようになってしまい、今でも右足の重心が外側に傾いている。
捻挫をすると当然のことながら腫れるので、湿布をする。いまでは湿布もロキソプロフェンなどの鎮痛剤が配合された薄手のテープ状のものが一般的となったが、当時はまだ湿布というと白くて分厚いものであった。サリチル酸メチルやメントールのせいで冷感があるこの手の湿布は、熱を持って腫脹した患部に貼ると冷たくてとても気持ちが良かった。そして包帯である。この手の湿布は剥がれやすいので、包帯で固定する必要がある。捻挫の度に包帯の出番があるのが、ちょっぴり嬉しかった。
そういえば足のみならず手関節(手首)も捻挫したことがある。手の場合は体育の授業中に跳び箱を跳びそこねて自分の手首の上に着地したケースだったが、足は階段を1段抜かしで降りそこない落ちたなど、やらなくていいことをやって怪我をしている場合が多く反省せざるを得ない。

当時包帯は伸縮性のあるタイプが出始めた頃だったと思う。しっかりと固定するには非伸縮性包帯の方が適しているので、本来捻挫には伸びないタイプの方が良い。しかしこれだと関節が曲がらないためかなり歩きにくくなるので、実際には適度に伸びるこのタイプが重宝した。
今では押さえるだけで密着する粘着包帯というタイプも出ているようだが、一般的には金属製の包帯止めを2ヶ所付けて端を止める。テープで止めるよりも包帯止めを使用する方がより重症に見えるため、中二病的には満足度が高い。
伸縮性包帯も非伸縮性包帯も、何度も洗って使用できる。ちょっとした家庭内の怪我であれば、それほど厳密に清潔保持する必要もないのでそれでいいだろう。しかし医療現場では通常包帯の使用は1回きりだ。
救急センターで研修をしていた頃である。今も昔も救急センターなどの医療施設は経営的には赤字というところが多い。研修先の施設も御多分に洩れず経費節減に頭を悩ましていた。
そこで出たのが再生包帯。一度使用した包帯を滅菌処理で消毒し、もう一度使うことになった。もちろん高度の清潔が要求される創部には使用しないが、毎日処置と交換が必要で感染が存在する熱傷の患部などに、この再生包帯が使用された。
創部にイソジンが塗布されていると、使用された包帯もイソジンの橙色に染まり洗っても落ちないため、再生包帯の色も橙色となる。まだ生存している人を例えるのは不謹慎であるが、再生包帯を巻かれた患者さんはなんとなくミイラっぽく見えたものであった。

中二病的には、血が滲んだ包帯というのがマストなんだろうが、血液が出ている状態というのは、医療従事者にとっては様々な観点から見てとても危険なものであるので、ここは真っ白な包帯を推しておきたい。
この歳になってやっと怪我の頻度が少なくなってきたのに、それでも時折包帯を巻くことに憧れる自分がいる。真っ白な包帯と少女の取り合わせは危ない方向にも行きかねないが、それでも似合うと思ってしまうのはやはり中二病が治っていない所以だろう。


登場した外傷:足関節捻挫
→あらためて調べてみたら「湿布を貼って包帯で固定」というのは誤った処置で、本当はRICE療法という「2時間おきに感覚がなくなるまで氷で冷やし荷重をかけないように挙上する」というのが正解だそうだ。小学校でそれをやれというのは無理だろう。
今回のBGM:「Love This Giant」by David Byrne & St. Vincent
→異才2人がタッグを組んだユニークなアルバム。意外とポップ。ところでトーキング・ヘッズはなかなかに中二病だと思う。


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