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運動学習と数学。 アトラクターとフラクチュエーター。

Writer

田所剛之

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東京大学ア式蹴球部学生コーチ兼フィジカルコーチ

Twitter:https://twitter.com/_take_tomar


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初めまして。

東京大学2年、ア式蹴球部フィジカルコーチの田所剛之と申します。

PITTOCKROOMは立ち上げ当初から購読して勉強させて頂いているのでこの機会を頂けたことを大変嬉しく思います。

まさか自分がここで記事を書かせてもらえるとは思ってもみなかったので、何を書くかでめちゃくちゃ悩みましたが、今回の記事のタイトルは「運動学習と数学」としました。

このタイトルを見たところで読者の皆さんの頭の中には?が浮かびまくっていることだと思います。読み終わった後でも?が浮かび続けていることがないように書いたつもりなので、そのまま我慢して読んでみてください笑

とりあえず一旦数学は脇に置いておいて運動学習についての話から始めていきます。数学についての話は終盤で出てきますが、数式は1つも登場しないので安心して読み進めてみてください。


前提

運動学習について話す前に、サッカーで求められる運動の特性を考えてみましょう。

まず、ボールを扱う技術としてドリブル、パス、シュートなどの技術は当然求められます。

ただ、よく言われることですが、各選手がボールに触れる時間は90分の試合の内、約2分程度しかなく、それ以外の時間はほとんど走り続けていることになるので、走るという動作もかなりの比重を持つと言えるでしょう。

また、サッカーの試合では1試合につき約700回方向転換を行うと言われています。これを基にすると7~8秒に一回方向転換を行なっていることになり、方向転換動作もサッカーの動作の中で特に重要と言えます。

ただし、ただボールを扱うのが上手かったり、足が速かったり、方向転換がスムーズであったりすれば良いという訳ではありません。運動学習について考える上で最も重要なポイントはこれら全ての動作が時事刻々移り変わる環境に適応する形で遂行されるということです。

サッカーの試合中に行われるランニングは家の周りを走る時のランニングとは全くと言って良いほど異なります。サッカーの試合の中では、相手、味方、ボールの位置を含めたピッチ上の状況を認知し判断した上で常に最適なポジションを取ろうとしなければなりません。

そして、そのピッチ上の状況は22の人間がそれぞれ最適化を目指して同時に動くため、全く同じ状況になることはあり得ません。

そういった意味で、時事刻々変化し続ける環境に対して適切な動作を遂行する能力が求められるのです。このことを頭に入れた上でサッカーにおける運動学習のプロセスを考えていきましょう。


ここでは例としてパス動作、特にインサイドでのショートパス動作を挙げて学習の過程を考えていきます。


還元主義的アプローチ

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