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10分即興小説対決 放課後エレガント部!その8 「ショート!ショートショート!」作品集

この記事を見ているということは、Youtubeの配信を見ていただいたということでしょうか。

どうも、配信者のTerry"mo"Piroshiです。

ここでは、『放課後エレガント部』第8回配信でお送りした「10分くらいで短い小説を書いてみる対決」で参加者が書いた作品をアーカイブしていきます。

配信未見の方は、以下の動画の23分ごろから対決をやっていますのでぜひご覧ください。10分ください。(お題決めなどの雑談で20分も使っていたのか…笑)

対決コーナー『ショート!ショートショート!』

ルールはこんな感じでした。

『ショート!ショートショート!』
テーマを決め、10分くらいで短い小説を書いてみる対決コーナー。
・執筆時間は10分
・タイトルは視聴者から募集してその場で決める。
・タイトルは簡潔に。「時計」「ストロー」「朝焼け」のような感じで。
・ジャンルは不問。SF,ミステリ、なんでもござれ。
・小説対決ってタイトルだけど、詩でも、エッセイでも、読書感想文でも、俳句でもいい。


ちなみに、今回のテーマは畜産者(コメント)さんから頂いた「写真立て」でした。


すまさん の10分創作『写真立て』

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「写真立て」

「トモヒロ、なにしてるんだ」
部屋の隅、うずくまってじっとしている息子に声をかける。
「大切なものしまってるんだよ」
トモヒロは、淡々と答える。
「大切なもの?」
父親はトモヒロの手を覗き込んだ。小さな悲鳴が漏れる。
「お前、これは......」
そこには、潰れたカブトムシがいた。ぐちゃぐちゃに潰れたカブトムシを、無理矢理写真立ての中に押し込めている。
「トモヒロ、なんでこんなことしてるんだ?」
「大切なものは、写真立てに入れとかなきゃだめなんだよ。きれいに入れて飾らなきゃ」
「だからってお前、カブトムシを......」
「でも、こうすればカブトムシ汚れないよ。お母さんみたいに」
その言葉に父は息が詰まった。妻の写真が入った写真立て。おそらくトモヒロは、あの事を言っている。
「お母さんいないけど、写真立ての中のお母さんはきれいだ。だから、大切なものはここに入れてきれいにしておかなくちゃ」
そういうとトモヒロは、また潰れたカブトムシの死骸を写真立てに押し付け始めた。
「そうか......ごめんなあ」
何を謝っているのか自分でもわかっていなかったが、とにかく謝罪の言葉が口をついた。
カブトムシは、どうしたって写真立てにはおさまらない。


巡礼さん の10分創作『写真立て』

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『写真立て』

心の中を見られるようで、好きなものがバレてしまうようで

僕の部屋の写真立てには写真が入っていない。

死んでいる人が生きているように微笑む写真は大層不気味で、もし許されるなら故人の写真は花柄の写真立てにして不気味さを少しでも薄めたいものだ。

だから僕は今日も枠に囲われた思い出の風景に絡められる事ない思考の海で眠るのだ。

花に囲まれた棺桶という枠の中で、それでも自分以外の誰かの思考の海で眠るのだ。




変愛マスターもずこさん の10分創作『写真立て』

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(写真立て📷️)

近所の写真館はとても古い
何十年もずっとあるみたい
おじいちゃんがたまに店の前で体操をしたりしてる
腰の曲がったおばあちゃんがガラス窓を拭いてたりする
息子夫婦が遊びに来たりもする

写真館のガラスので窓にはたくさんの写真

写真館の前を通るのは一月に1、2回
ガラス窓に飾られてる写真はずっと同じ

ずっとずっと同じ

自分が引っ越してきた8年前と変わらない

きれいな彫刻の施された写真立てに
日焼けもしないでホコリも被らず
ずっと同じ写真

きっとこの写真館がなくなるまで同じ写真

無くなっても誰かが亡くなっても、この写真立てにはこの写真が変わらず飾ってあるんだろうな...

仕事の終わりに、写真館で観たような写真立てをちょっと高かったけど買って帰る。

わたしもずっと同じ写真をこの写真立てで終わりたいな...

遺影とか飾られたりして笑

もずこ心のはいく

写真立て
にっこり笑顔が
引き立つね☺️


Terry "mo" Piroshi さん の10分創作『写真立て』

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「写真立て」

吾輩は電信柱である。名前は「四丁目あー5号」。

吾輩の趣味は、街を眺めることである。
この街には実に雑多な風景がある。時間や季節によって、どんどん移り変わるさまは、時に繊細で、実にダイナミックだ。

レコードを片手に道行く少年。
ビタミン剤をばらばらと道でこぼしていたサラリーマン。
遠くに見える駄菓子屋には少年たちが群がり、ウイスキー片手にダメそうな親父がそこへちょっかいをかける。

吾輩にいつもおしっこをかけてくる犬。その飼い主は、いつも用を足した犬をウェットティッシュでふいている。すこし過保護ではないかと思うが、愛情だと思うとそれも愛おしい。いや、おしっこは勘弁してほしいが。

財布をハサミで切り刻んでいたおばさん。あれは何だったのだろう。

いつもプリキュアのTシャツで遊んでいた女の子も、今やマニキュアなんかして彼氏と歩いている。
時がたつのは早いものだ。

そんななか、吾輩が恋をした女性がいる。
その女性は、いつも写真立てを片手に、吾輩の前にくる。
はっきりいって、一目ぼれだ。
いつか、人と話すことができる機会を神様に与えられるのだとしたら、
まっさきに彼女と話すことを願うだろう。

吾輩に物心がついた時から、彼女はそこにいた。
吾輩はなぜこんなに彼女のことが気になるのだろうか。

ある日、彼女は、いつも手に持ってきていた写真立てを持たずに、やってきた。
彼女は言った。

「ごめんね。ありがとう。でも、もう、これで、最後にさせて」

ぼくは、思わず、「いいよ。いままでありがとうね。もう、自分の幸せをつかんでよ」

なんでこんな言葉が出てきたのかわからない。
けど、思わず口をついて出た。

彼女は、はっとして、こちらを見た。
ひょっとして、僕の言葉が聞こえたのかな。
そんなわけないか。

そういえば彼女はいつも、花束も一緒にもってきていた。

今日の花束はいつもより大きくて、きれいで、悲しかった。



おわりに

いかがでしたでしょうか。

みんな、それぞれの持ち味を生かしたいい文章が書けたのではないかと思います。

これらの創作風景は、以下の配信アーカイブで見ることができます。また、配信では各執筆者が自分の作品を読む朗読タイムもありますので、ぜひご覧ください。
リアルタイムで10分追いかけて見ると、また違った感想になるかもしれません。


アーカイブはこちら

https://youtu.be/z9Ac7JWiLKY

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