過疎問題懇談会(R5年度2回目)

先日、令和6年3月27日に、過疎問題懇談会(座長:小田切徳美先生)を開催。
過疎法の改正(概ね10年に1回)がある際は頻繁に開催されるが、現状そうでもなく、年2回ほどの開催となっている。
マスコミにもフルオープンだが、あまり報道されていないので、少し紹介を兼ねて議論を整理したい。
まず、今年度のテーマは、自治体における「場」の存在。経緯は、
○R4年度
 市町村の間でも差が生じている社会増減に着目し、社会増の団体と社会減の団体を現地ヒアリングを含めて調査。
 ・社会増 → 新潟県出雲崎町、和歌山県北山村、鹿児島県十島村
 ・社会減 → 山形県小国町、奈良県五條市、鹿児島県大和村
  ※H27〜R2の社会増減の状況を踏まえて視察先を選定。
  ※十島村は人口600人ほどのところに、社会増で200人も増えているからすごい。
○R5年度
 4年度の調査の結果、社会増の団体について明確な共通項は発見できなかった。(⇨戦略、プロセスはさまざまで、政策的に明確な共通点を見出すのは困難。)
 一方で、社会増を達成した団体においては、地域住民同士や移住者などが集い、交流できる「場」があるのではないかという仮説が視察などの結果を通じて確認され、令和5年度は「場」を調査することにした。

ということで、
「場」の定義(イメージ)は、
①人と人とが集い、対話し、交流する、緩やかなコミュニティ(ソフト面)
②コミュニティが生まれる地域内の特定の場所(ハード面)
と考えて調査をしよう、ということにした。
過疎団体の市町村885団体(全団体は1741なので、約半分が過疎団体)に対して、アンケートを実施し、
(1)「場」が存在するか。
(2)存在するとすれば、その活動内容や効果は。
(3)「場」を支える人材は。
などを調査し、併せて、いくつかの団体の現地視察もしました。

アンケート結果について簡単に紹介すると、
・約9割の市町村が、「場」は「ある」と回答。公民館、コミュニティセンターが多数。
・活動内容は、住民交流、健康づくり、生涯学習、高齢者支援の順に多い。
・支える人材は、行政職員を除けば、「地域おこし協力隊」、「集落支援員」が多い。
結果として、多くの団体で「場」の存在が確認されるとともに、
「場」が存在していると回答した自治体の社会増減の平均を取ると、
過疎団体全体の平均よりも、良い値(「場」ありは−0.5%、全団体は−1.7%)となっており、因果関係はわからないものの一定の数値的な効果も見えた。
具体的な事例も多くの自治体から回答をいただいた。
例えば、三重県南伊勢町の「うみべのいえ」では、元地域おこし協力隊の方を中心に空き家改修プロジェクトを行い、誕生したチャレンジショップ「うみべのいえキッチン」を通じ、交流やチャレンジショップの活動で、起業が3件ほど生まれ、さらに生涯学習などの場の提供にもつながっているとのこと。
このほかにも多くの事例が寄せられた。

現地視察においては、自分も視察させて頂いたが、
・秋田県大仙市の「南外さいかい市」では、地元スーパーの閉店を機に、住民たちの手でスーパーを作ろうとNPO法人を立ち上げ、日給500円というボランティアのような活動ながら、店舗だけでなく一軒一軒訪問販売を行い、地域の見守りも含めた活動をしていた。
・秋田県五城目町の「BABAME BASE」では、廃校を利用したレンタルオフィスを提供し、入居企業は42社にも上り、地域に根ざした企業の集積拠点となってるとともに、空き教室を活用して、英会話教室など、地域住民が集う場としても活用されている。更に、五城目町の伝統の朝市でも活性化のイベントを仕掛けるなど、地方創生にも寄与している。
など、地域内外から人を呼び込み、コミュニケーションの場となり、地域を盛り上げる仕組みにもなっていて面白かった。

来年度は、地域を支える人材に着目して議論を展開していきたいと考えている。
どこの地域の事例でも、きっかけは「人」であり、その部分の支援策をどのようにおこなっていくのか。枠組みとしては、地域おこし協力隊や集落支援員などの活躍が多いが、では、企画段階や応募段階、実際に地域の活性化にどのようにつなげていったのか、など、より多くの団体が取り組めるように支援を考えていく必要がある。
また、委員の先生から、違う視点として、集落の終活という観点も大事になってくる、という指摘もあり、そうした点も研究をする必要がある。
来年度に向けて、方向性を見出すことができた会議であった。

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