沖縄県の北大東島への訪問

先日は、台風が襲来した際によくニュースに出る「北大東島」に出張。
島のあまりに過酷な状況と、諦めない島の方々の頑張りを拝見させていただきました。

訪問したことがある人は多くはないであろう北大東島の「北大東村」を簡単に紹介すると、
・北大東島一つが北大東村になっています。
・人口は、R2年で590人。一方40年前は658人、25年前は575人。なので、あまり人口が変わっていません。
・島の面積は、約12k㎡。大体1/3をサトウキビ畑が占めており、最大の標高も約50mで、フラットな地形。産業はサトウキビの収入が半分程度で、あとは建設業などで経済が成り立っています。
・砂浜はほぼなく、サンゴでできたゴツゴツした地形です。浅瀬もなく、すぐに数千m級の深海に行くという絶海の孤島。
という感じです。

話を聞いていて、結局一番の課題は、とにかく「家が作りにくいこと」。
最大風速80m(!)の台風が来るため、木造の家はなく、全てRC造じゃないとダメで建設コストが相当高く、平成に入ってから(令和じゃないですよ)、5軒しか戸建は建っていないそう。。そんな厳しい地域です。

このため、外からの移住しようと思っても住まいの問題がいちばん大きく、人手不足が解消できないそう。更に、離島ならではで、食料も那覇から船が来ないと生鮮品が仕入れられない、那覇からの往復飛行機で5万円かかる、重篤な急病はドクターヘリも飛べないため自衛隊に頼むしかない、などなど。想像すればわかることではありますが、驚きの連続です。

衝撃を受けましたが、一方で、島の方々は前向きに頑張って生きていて、
印象に残ったのは、
・島の小中学生のため、オンライン環境を整備し、東大生の家庭教師的な補習を受けられるように取り組み。
・養殖業を行い、少しずつ採算に乗るように努力してきている。
・大東島の歴史などを整理したミュージアムの整備(八丈島の人が開拓した歴史や、昔はリン鉱石で栄えた話など、申請できれば、世界ジオパークへの登録もできるのではないかと思います。)
などなど。地道に頑張っています。

特に素晴らしかったのは、特産のじゃがいも焼酎「ぽてちゅう」の取り組み。
サトウキビの輪作で、じゃがいもを作るそうですが、そのうち15%が規格外で廃棄されるそうで、その有効利用を考えていたそうです。
平成26年頃に、那覇市の民間の方がたまたま話を聞いてくれて、「村が本気なのであれば、島の不利な条件を踏まえ、『焼酎化』することがいいかもれしれない」、という話があり、北海道のメーカーへの研修や、作成をお願いする泡盛メーカーでのハードルの克服と縁など、総力を上げて取り組み、商品化に成功したとのこと。そして離島フェアで売り出したところ、たいへん好評を博したそうです。
沖縄であれば、泡盛やラムなどのイメージがありますが、じゃがいも焼酎もそのストーリーから、ここでしかできないことであり、また、規格外の作物の有効利用と特産品開発という意味でも、非常に頑張っている取り組みだと思います。
しかも、商品開発当時に、村に「焼酎」を作るという案のきっかけを作ってくれた人は、大東島に移住し、島の活性化機構の事務局長をされています。
多くの人の縁と努力がなした功績だと思いました。

なお、こうした取り組みの多くに、沖縄交付金などの政府の補助が入っていることも大変重要です。大東島のように厳しい環境下では、財政的には非常に保守的な考えで運営しており、補助率が高い事業でない限り、手を出せないという感じです。難しさはありますが、懸命な判断だと感じます。

今回の出張は、「過疎地域から北大東村が外れる」、ということからそのフォローのための出張でしたが、逆に、まだまだ厳しさを感じたところでした。人口だけで見てはいけないのではないか、という気もしますが、過疎以外の支援のアプローチは引き続き必要に思います。
日本の最南端の島で、地方創生の原点を見たように思いました。

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