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47歳の体験 ~手術台と病院生活~

前回のnoteでは、生きるか死ぬかのような内容で、結果的にピンピンしていることからして、大袈裟ではあったものの、やはり手術台に上がるときの緊張感というのは、もう二度と味わいたいものではない。あの病院ドラマでよくあるようなひんやりとした空間の中、目の前に手術台を照らすあの丸い5つくらいのライトが自分を照らしだすというのは、檀上に上がって挨拶することは慣れていても、またひと味違った感覚であった。

それでもまあ、緊張感を解きほぐしてくれる瞬間というのがあって、麻酔を入れるための点滴の注射針がなかなか刺さってくれない。僕は身体は全体的に太いのだけれども、血管は細い。麻酔医が困っているから、「僕、身体太いけど、血管細いねん。」と言うと、その麻酔医も「おっちゃんも身体太いの同じや。」と言うて、場を和ませる。

そうこうしていると、注射針が身体の中に入り、「もうちょっとしたら、スーッと眠たくなるでぇ。」と言われて、気づくと病室のベッドに戻ってきていた。せん妄という症状があるようで、人によるようだが、僕の場合は、その後も数時間うつらうつらと寝ぼけたような状態であったことは自分でもわかっている。
しかしまあ、麻酔の威力と言うのは凄すぎて、よく寝たという印象よりは、手術時間の3時間30分の間を一瞬でワープしたかのように感じたものであって、記憶としては、おっちゃんの場を和ませた瞬間の直後にベッドに移動してきたことになる。その後のせん妄状態はなんとなく記憶に残っていて時間の経過も感じ取ることができた。

とにかく、まあ、管がいくつか繋がっていて、酸素マスクも載せられているから、たまったもんじゃない。手術前の緊張状態よりも、この拘束されている状況がもっともしんどかった1日である。

手術が終わって6時間後、ようやく仕事の仲間や事前に話をしていた人にLINEで無事の一報を入れるのがやっとで、その後、寝たり起きたりを繰り返す。

胆のう摘出手術というのは、割とよくある話みたいで、僕が体調を崩して入院するとなると、みなさんが心配をしてくれて、そして、同じ手術の経験者が周りに何人もいて、不安感を取り除いてくれるようにいろいろとアドバイスやら経験談をお話してくれる。

その経験を聞く中でと、手術説明の中でもっとも恐れたのは、導尿である。
かつて、小学生時代に自家中毒になっておしっこが出なくなったことがあって、その時の導尿がものすごく痛かったのと、傷がついたのだろう、導尿が終わってからもしばらく血尿が出たことから、恐ろしくてしかたなかった。

手術前に心配ごとはありませんかと看護師さんが聞いてくださったので、「導尿だけが心配です。」と言うと、「しっかり眠っている間に入れておきますので。」と言うてくれた。そしてまあ、その通りしっかりと眠っている間に入れてくれていたようだ。しかし、内視鏡とは言え、お腹に傷を入れている身体。少しでも腹筋に力を入れようものなら激痛が走るから、寝ている格好から自分の下腹部がどうなっているのか見ることも能わずである。

そして、その時がやってきた。

手術後24時間が経過して、看護師さんが「そろそろ取りますか。」と言うてくれる。いや、綺麗な若い看護師さんにである。諸先輩方曰く、この瞬間のなんとも言えぬ感触について、「ひょーっとなる。」「にゅるにゅる~とする。」「なんとも言えぬよ。」そのすべてのオノマトペというかなんと言うかの総決算のような瞬間がやってきた。
「もっと力を抜いてー」と看護師さんに力強く言われて「ああああぁぁっぁー」と声なのかなんかわからぬ音を発生させる。しかも、この時間長い!
「ひょーっ」とか「にゅるにゅる」とかそんな短い言葉で表現したらあかんくらい長い。少なくとも瞬間ではない。
そして「はいっ、もう終わり」とにこやかに看護師さんに微笑んでいただき、無事にその時を終えることができたのである。

その後、次の排尿時には、こけたりしないように看護師さんに立ち会ってもらい、無事にトイレに座ることができ、排尿する。このときも血が出るんじゃないかと恐れながら、やはりちょっと痛みはあったけど、血までは出なくて、でも膀胱に空気が溜まっているからか、排尿後、おならのような音とともに空気が出てくる。これもなんか感じたことのない感覚。

そして、その後、痛み止めの点滴も終了となり、自分を拘束するすべての管類が外されて、健康って大事やなとつくづく実感する。

そこからは、今までと逆で安静にではなく、できるだけ歩けと言われる。
いや、まだ腹筋がとても痛くて、笑ったり、くしゃみなんかしたら耐えられぬ痛みですけども、先生曰く「ものすごく腹筋を痛めたときの状態と同じと考えてください。」と言われ、そう考えると腹部への力の入れ方を上手にしながら、少しずつ歩くようにがんばってみる。

その日の午後には、元上司だった病院の副管理者がお見舞いに来てくれて、無事に済んでよかったと話をしてくれる。「病院のホスピタリティが高いと感じたのとオペレーションの改善への取り組みがいいです。」となぜか上から目線の診断士的発言をする。

実際に、病院での生活はイメージしていたよりもずっと良くて、ごはんも美味しいし、健康的だ。看護師さんの交代時のあいさつだったり、清掃に来られる方の対応だったり、もちろんお医者様方も説明をちゃんとしてくれて安心して過ごすことができた。
手術に立ち会った看護師さんからは「オペのときに不安を感じて、この点を改善したらもっといいと思ったことを聞かせてください。」など、改善に対する要望をしっかりと聴き取りをされるところなど、参考にさせていただきたいと思ったところである。

結果的に5泊6日の病院生活となり、その内容は、1日目は身体を整えて、必要な検査とおへその掃除、2日目は手術、3日目は管抜き、4日目からリハビリで、5日目の血液検査を経て、お医者様にもう大丈夫と言っていただいて、6日目に退院というスケジュールだった。

退院日が決まった日に、管を抜いてくれた看護師さんから「明日の退院のとき、私はお休みをいただいていますので、先にご挨拶をさせていただきます。また元気な姿で、病院ではないところでお会いできるのを楽しみにしています。」と言っていただいたのは何よりも嬉しいことであった。

#47歳 #入院生活 #胆石 #看護師


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