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読書記録 東京すみっこごはん*成田名璃子

元々ご飯を作るのも食べるのも好きなので
食がキーポイントの小説に惹かれることも多い。
この本もふらふらと文庫のコーナーに行き、
タイトルに惹かれて手に取った。

帯には年齢も職業も異なる人々が集う共同台所の物語と書いてあった。
スタエフでちょろっと食の呟きを始めたばかりで
食に関するアンテナが立っていた。
実際にそういう場所が近くにあったら行きたいなぁ、と思ったので購入。

すみっこごはん、と言う名のその場所は
10のルールがあって、作る人は毎回くじで決め、
レシピノートにある献立を代わる代わる作る。
作る人は素人なので美味しい時もまずいときもあるけど文句を言わず食べるきまりだ。
ここを訪れて交代でごはんを作る人は、
ひょんなきっかけでここに通うようになるけど、それぞれいろいろわけありだ。
それが、見知らぬ人と料理や食べることを通じて
日々関わっていくうちに、
自分で気持ちを整理したり折り合いをつけていく。
そして、自分の周りの世界の優しさに気がついたり前に進むきっかけをつかんだりする。

コロナ禍の今、こうした場所を実際に作るのは難しい状況だと思う。
でも、人は、誰かと関わりを持つことで
自分の気持ちに向き合ったり
大切なことに気がついたり
動き出すきっかけをもらえるのかもしれない。

この本は、
出てくるお料理がどれも美味しそうで、
出汁をとるシーンやハンバーグをこねる描写から
作者の料理に対する愛情が伝わってくる。
物語は一話完結で、読みやすく、
それぞれすみっこごはんに通う人々が主人公で
オムニバスのように繋がったお話になっている。
それぞれのドラマがあり、
今の自分に響くセリフがあったけれど、
中でも、タイからの留学生のジェップくんの言葉が印象的だった。

どんなに今日が空っぽでも、器に食べ物を満たし、「いただきます」と手を合わせれば、必ず明日が見えてくる。
一口食べるごとに呼吸が強くなっていく。

私も、そんなごはんを作りたい。
やっぱり、食べることは生きることなのだ。
体にとっても、心にとっても。
そう再認識させてくれた本だった。


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