小説:鬼に壊された部屋で

 ろくでもないことは起こるべくして起こるものだし、逆も同じだ。僕の家に突然鬼の集団が上がり込んできて、金棒を振り回して壊せるものを全て壊していったのにも、因果がある。
 僕は恋人から金を借り、早く返せとせっつかれ続けているクズだ。恋人とは言ったが、向こうはもう僕に愛情など抱いていないだろうし、僕が抱いているのも愛情より不安感の方が強い。そんなどうしようもない僕を許せなくなった恋人が、鬼たちを雇って僕に復讐を命じた……というわけではない。が、回り回って僕の部屋には鬼たちが押し掛けたのだ。世の中とはそういうものだ。これは僕の妄想だと言われるかもしれないが、世の中とはそういう妄想で動き続けている。これは僕の振る舞いの結果だ。
 全てが元の形を失った部屋で、僕は一人で床に座り込んでいる。部屋にあったのは、僕が好きなものばかりだった。好きなものが何一つ存在しなくなった部屋で、今、僕は新しい因果を生み出す方法を考えている。それはつまり、好きなものを取り戻すということだ。僕は恋人に金を返して謝り、復活させ、復活しなくてはいけない。起こるべきことを起こすため、僕は立ち上がろうとしている。全てが壊れていても、どんな時でも、因果は起こり得るものだ。


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