神の恩寵

 パリ3日目。
 例によって、今朝も日本時間で体が勝手に動き始めた。あ、もう投稿したのだっけか。ぐちゃぐちゃになっている。

 自然史博物館に行こうか、それとも大好きなパリ市立現代美術館の方が迷わず行けていいかな。

 何か引っかかる。一歩外に出たら、いかにwifi天国のパリといえど、快適なネット環境の恩恵に浴することはできないのだ。方向音痴だし、今回は体力的にタクシーを多用するつもりでいたのに。Uberや G7に頼らずに、タクシーが簡単に見つかるだろうか。

 ふと思い出す。昨日行ったOrange のスタッフが、「ここではもう何もできない。この住所のOrange に行ってみて」と、判読しづらい文字が書かれたびりびりの紙切れを、くれた。
 たらい回しというやつか…もう行く気はなかった。時間の無駄だろう。
 でも。住所から検索したら、最寄りのメトロ駅から2つ目の駅じゃないか。よし、これで駄目ならもうすっぱり諦めよう。期待はしちゃいけないよ、と自分に言い聞かせる。

 10時開店だから、その前に、あのカフェで朝食を食べよう。パリで一番おいしいバゲットを作る店に選ばれたことがある、そのブーランジュリ。天気が良いこともあって、開店間もない時間だというのに、テラス席も店内もおおぜいのお客がいる。ちょっと気後れしたが、明るい太陽とスタッフのマドモワゼルの笑顔が背中を押してくれた。
 カフェ・クレームと、この店のシグネチャーともいえるパン・オ・ショコラ。椅子に座って、道行く人たちを眺めていると、やっとパリに来られたんだなあと思う。

 いけない。Orange に行くんだから。
 昨日の店とは大違いに、本店のように規模の大きい店。アーノルドという男性が応対してくれる。どうか、どうか。ダメ元で来たけど、もしかしたら…という希望が芽生えてしまう。だって色々な機器がそろっているんだもん。

 彼が一生懸命していることは皆目わからなかったが、アーノルドは優秀でプライドが高い技術者なのだろう。何度も、「なんでだ…駄目か…待てよ…」と、ぶつぶつ言いながら、何台ものスマートフォンを使いながらパソコンも使っていた。時間がどんどん過ぎて行く。お願い、あきらめないで!

 何か声をかけたかった。履いてるスニーカーはかっこいいけど、これを褒めるのはどうか。おっと、手元を見ると、おしゃれなデザインのブレスレットを重ねづけしている。心から素敵だなあと思ったので、「ブレスレット、素敵ですね」と言ったら、すごく嬉しそうに「ありがとう」が返ってきた。自慢の品に違いない。

 つづく。たぶん明日?

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