第12話  【メタルハート 12話 過去】

 メタルハート 12


 著者:pirafu doria
 作画:pirafu doria


 第12話
 【メタルハート 12話 過去】


 少女の家にやってきて数日が経ち、俺もこの家の住民と少しずつ話せるようになってきた。

 この家には父親であるシィアーと一人娘であるアイサという親子が二人で暮らしている。母親は昔に亡くなっており、今は村から少し離れたこの土地で畑仕事をして暮らしていた。

「ほら、ご飯持ってきたよ」

 アイサがご飯を運んできてくれた。

「……ありがとう」

 畑仕事で疲れているはずなのに、アイサはいつも俺が食べている時は一緒にいて話をしてくれた。

 俺が食べ終わるのが遅くても、ずっと一緒にいてくれた。

 そして俺は少しずつだが、アイサに心を開いていった。

 ある時アイサは聞いてきた。

「ねぇ、あなたはどこから来たの?」

 俺はそのことについて答えようとする。


 しかし、何も思い出せない。俺がどこから来て、何をしていたのか。何も思い出すことができなかった。


 アイサは俺が困っているのを気づくと、すぐに話題を変えた。

 しかし、それから俺は俺というものが何者なのか。その疑問をずっと抱き続けることになった。

 俺は何者なのか。俺はなんなのか。

 そんな疑問を抱きながらも数日が経過し、俺の怪我は治り始めて、やっと立ち上がることができるようになった。

 まだ足元はふらつくが、少しずつ歩くことができるようになっている。

 もう少し動けるようになったら、俺はアイサ達のために少しでも恩を返せるように、仕事を手伝いたいと思っていた。

 だから俺はひっそりと歩けるようになるために、トレーニングを行うようになった。

 基本的にはアイサか、その父がいる時に肩を貸してもらいながら歩く練習をした。

 だが、そんなペースではダメだと、壁に添いながらゆっくりと歩く練習をする。

 何度も倒れながらも歩ける距離を伸ばしていった。

 しかし、

 俺は二人がいない間に歩く練習のため部屋を歩く。そして一時的なゴールとして何歩か先にあるテーブルをゴールとした。

 俺がどうにかたどり着くと、そこには鏡がありふと自分の姿を見てしまった。

 そこには左目が黒い謎の物体に覆われて、紅瞳の少年がいた。
 両目で色が違う。いや、それどころじゃない。この左目は人間のものではない。

 俺は普通の人間ではない。

 自分の姿を見て、俺は気づいてしまった。俺という存在の正体に……。

 それから俺は動かない身体を無理に動かしながらも、家を出た。

 どこに向かうのかわからない。でも、現実から逃げるように。


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