正しさのその先へ。自分らしさを出せる場所。
幼き頃の自分
昔から優等生だった。
幼い頃は特に自分の意志がなく、言われるがままに勉強や週6回の習い事に励む。
とはいえ、私には小学生頃までの記憶があまりない。
母から「習い事も駄々をこねずに休まず行っていて、わがままをほとんど言わない子だったから、逆に溜め込んでないか心配だったのよ〜」と言われてきたから、そういう子だったんだろうなと思う。
記憶のある中学生以降、授業は真面目にうけ、ノートも丁寧にとる。よくノートを見せたりコピーを取らせてとお願いされていた。必要とされて嬉しかった。
でも、ふっと頭をよぎることがある。
「ノートをきれいに取れなくなったら、友達はいなくなるのかな」
崩れゆく正解
昔から優等生だった。
小学生の頃から国際協力に興味を持ち、正解を、自分なりの正義を持っていた。
崩れたのは、大学生でベトナムに行ったとき。
国際協力に携わりたいと思い、勉強し、初めて実際に現地を訪れた。
正解が、わからなくなった。
私が目指していたものはなんなのか。振り翳していた正義はなんなのか。
その場所には、その人たちの生活がある。
外からの正解を押し付けたって、それはその国の、その人たち正解とは限らない。
いろんな国を旅して、いろんな人に出会った。いろんな場面に遭遇した。
一期一会の大事な出会い。生々しい実態として目の前に現れる現実。
いくら勉強して正解を導き出しても、実際に見ないとわからないことがたくさんあることを知った。
使命感
昔から優等生だった。
少しでも命を救える人になるために、医療の道を選んだ。
薬剤師になって、治療を決めるのはエビデンス。
たくさん知識をつけ、経験を積み、最良の治療を受けてもらえるように医療者としての責務を全うした。
また、正解に埋もれる日々。
いつも、無意識に誰かからの評価を気にしていた。
いつも、誰かの期待を勝手に背負っていた。
「国際協力の分野で薬剤師って珍しいね、あなたなら道を切り拓けるよ」
「すぐに世界に羽ばたいていきそうだよね」
「メディアに出るなんてすごい!今後は第一人者として大活躍なんじゃない?」
嬉しかった。必要とされているんだって。認めてもらえているんだって。
薬剤師として一人前になり、世界を平和にするための人材になること。
それが私の目指すところであり、周りからの期待だった。
私は使命感を胸に、努力をやめなかった。
優等生の呪縛
努力の甲斐あり、もう少しで世界への切符を手にできそうだった頃。
進行を少し遅らせるしか治療法がない病に命を蝕まれる父を見て、「生きる」ことについて考えた。
私は自分らしい人生を、心から楽しんで全うしているのだろうか。
医療には限界があって、実際父を医療の力で救うことができなかった。
努力してもできないことがある。私がこの仕事をする意味ってなんだろう。
薬剤師として働く意義を見失い、色々と試した。
本を読み、たくさんの言葉に出会った。
アートを観て、たくさんの表現に出会った。
今思えば、小学校時代になぜか楽しかったのは、自由研究。自分で好きなことをとことん表現するのが好きだった。誰とも被らない自分のとっておきができることが、私の中での喜びだった。数少ない記憶の中、その感情は覚えている。
この世界に正解なんてなくて、もっと多様で、カラフルなのかもしれない。
もっと強みを活かして自分らしい表現をすることは、わくわくすることなのかもしれない。
なんとなくわかっている。でも、いつも世間的な正解に袖を引っ張られている。
大事な人はどんな自分も応援してくれるとわかっているはずなのに、みんなに好かれたい自分は、優等生だった自分を応援してくれていた人を失うことが怖かった。
多様性の輪郭
旅好きが集まるPOOLOというコミュニティに入って、いろんな人に出会った。
働き方、家族関係、ジェンダー、旅のスタイル。
たくさんの価値観があり、みんなそれぞれ悩みながら生きていた。
多様でカラフルな世界をつくる原石たちを見ているようだった。理解したつもりになっていた多様性が、リアルになった。
ここでは、正解を求めなくてもいい。
むしろ少し外れていても「面白い」と思ってくれる人が、たくさんいた。
好きなことを好きと言うこと。
自分がいいと思っていることを、誰かに伝えること。
これが簡単なようで、私にはとても勇気がいることだった。
「違っていたらどうしよう」「否定されたらどうしよう」
今までに否定されたトラウマがあるわけではないけれど、世間的な正解を汲み取って選んできた人生だったから、どうにかよく見せようとしてしまう。顔色を窺ってしまう。
昔からの癖だから、まだまだ袖は、糸が数本くらい正解に引っかかっているけれど。私の好きなことを応援してくれる人がいて、私にも本気で叶えたい絵が見えている。
今度こそ、自分軸で生きてみよう。正しさから、自分らしさへ。
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