見出し画像

砂浜

バスがとまった 窓から差し込む光が白い
ふたりが目を覚ましたのは 埠頭の停留所 
どうせ天国には行けないなら 
せめて海でも見ようか なんて
たがいに笑って言い訳したくなるほど
ありきたりな 夏の
ありきたりな 快晴 
ありきたりな 静けさのなか
カバンひとつ持たず 手をつないで砂浜を歩きだす
 
ふたりが目を閉じたのは 午前五時の三番ホーム 
ありきたりな 始発電車の入線
ありきたりな 警笛
ありきたりな 金属の摩擦音
カバン 名前 長い長い冬の夜 
重たいものは ぜんぶ 駅のベンチに置いてきた
 
この貝殻の白さは 何に似ているのだろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?