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財務分析に欠かせない、XBRLの構造を理解する

XBRLは文書フォーマットの一つで、企業の決算報告などに用いられます。XMLがベースのためプログラムでの解析が比較的容易で、テキストだけでなく財務数値なども取得できます。上場企業の決算報告XBRLは、EDINETから取得して実際見ることができます。

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EDINETの画面

本記事では、XBRLがどのような構造を持つ文書なのかを解説します。

XBRLとは

XBRLは”eXtensible Business Reporting Language”の略称です。名前の通り事業報告に特化した文書フォーマットで、XMLをベースにしています。XBRLは国際規格のため、日本以外の国も事業報告に使用しています。2019年時点で45カ国以上が採用しています。

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国際標準としてのXBRL」より引用

日本ではEDINETTDNetで実際の報告文書が公開されています。ちなみに米国の証券取引委員会(SEC)はBiqQueryでもXBRLのデータを公開しています

このデータで企業の収益分析などができます。BigQueryにあるデータは、データ分析を行うサイトKaggleから簡単にアクセスすることが可能です。以下はGoogleを傘下に置くALPHABETとAmazonの「利益」を並べてプロットしたものです(興味がある方はこちらをご参考ください)。

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ただ「利益」を記述するためのXMLタグは企業ごとにばらついています。以下は各社の利益関連のタグを抽出したデータです。RevenuesSalesRevenueNetなど、使っているタグがまちまちなことがわかります。

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XBRLは事業報告を目的とした共通フォーマットです。ただeXtensibleの名の通りカスタマイズが可能になっており、各社独自の仕様を織り込むことが可能です。どんな仕様をどこに織り込んでいるのかを発見するには、XBRLの構造をまず知る必要があります。

XBRLの構造

XBRLは「定義」と「文書」という2つの要素から構成されます。これは、ちょうどプログラムの「クラス定義」と「インスタンス」の関係に似ています。「定義」を行うのが「タクソノミ文書」、定義に基づく文書が「インスタンス文書」となります。

「インスタンス文書」はタクソノミ文書の定義に基づき書かれた文書です。ただ、(定義に則り)「売上」が書かれていてもそれがいつの売上なのか、どんな単位なのかわかりません。そのため、インスタンス文書内には同じ定義でも属性を識別できるよう「値の定義」が含まれます。以下は、インスタンス文書内の記述例です。

<jpcrp_cor:RevenuesFromExternalCustomers
 contextRef="Prior1YearDuration_jpcrp030000-asr_E05739-000ITInfrastructureServicesReportableSegmentsMember"
 unitRef="JPY"
 decimals="-6">
 123636000000
</jpcrp_cor:RevenuesFromExternalCustomers>

jpcrp_cor:RevenuesFromExternalCustomersというタグが定義です。ちなみに外部顧客への売上高を記載するときに使います。タグの中に属性としてcontextRefがありますが、ここから「いつ」の情報を取得できます。unitRefからは通貨単位、またdecimalsからは表示する際の単位などが読み取れます。

「タクソノミ文書」は項目(タグ)の定義や項目間の構造を定義します。ただ1ファイルに全て詰め込まれているわけではなく、複数の文書で構成されます。複数の文書とは、項目を定義するXML Schema(.xsd)ファイルと項目間の関係を定義するリンクベース(Xlink/LB)の2種類です。タグ定義を「語彙層」、タグ間の表示順序や計算方法の定義を「関係層」といい、2つセットでタクソノミとなります。以下はインスタンス文書及びタクソノミ文書の構造を表した図です。

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XBRLのテクノロジー/図1: XBRL 2.1 Spec.の構造」より引用

インスタンス文書がタクソノミ文書を参照しているのは前述のとおりです。タクソノミ文書は、XML Schemaが様々なリンクベース(LB(P)やLB(C))を参照する形で構成されています。LB(P)はPresentation Linkbaseと呼ばれ項目の表示順を、LB(C)はCalculation Linkbaseと呼ばれ項目間の加減算方法を定義しています。金融庁から毎年公開されているタクソノミ要素リストを見ると、項目の階層と表示順(Presentation Linkbase)を実際に見ることができます。

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2020年度版EDINETタクソノミ 「タクソノミ要素リスト」より

XBRLの拡張

タクソノミ文書は報告する企業ごとに拡張が可能です。記載したいけれどデフォルトのタクソノミに項目がない、表示順を変えたい・・・という場合は拡張して定義を行います。下図ではデフォルトのタクソノミが「EDINETタクソノミ」、企業が拡張したタクソノミが「提出者別タクソノミ」になります。

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「提出者別タクソノミ作成ガイドライン/図表 1–1–1」より引用

拡張の仕方には2種類あります。「再利用」と「再構成」です。再利用はあくまで元のタクソノミを参照しますが、「再構成」の場合元のタクソノミをコピーして作成した別物を参照します。

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「提出者別タクソノミ作成ガイドライン/図表 1–2–1」より引用

「再利用」と「再構成」の使いどころは以下のように定めらられています。タグ要素(語彙層)は再利用、表示順/計算方法(関係層)は再構成が基本です。勘定科目はそれほどバリエーションがないですが、それを表示する方法+集計方法は様々にあるためです。
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「提出者別タクソノミ作成ガイドライン/図表 3–2–1」より引用

最終的な「提出者別タクソノミ」は以下のファイルで構成されます。

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「提出者別タクソノミ作成ガイドライン/図表 4–2–3」より引用

XBRLの提出

・企業ごとの文書定義: 提出者別タクソノミ
・定義に従い書かれた文書: インスタンス文書

上記2セットが最終的なXBRLの報告文書になります。実際EDINETからXBRLファイル(zip)をダウンロードすると、以下のようなファイルが入っています。フォルダは縦覧用(PublicDoc)と独立監査人の報告書用(AuditDoc)に分かれていますが、一般の人が見るのは縦覧用(PublicDoc)となります。

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XBRLのPublicDoc内にあるファイル

提出者がEDINETへiXBRLファイル(インラインXBRLファイル)とタクソノミ文書を投稿するとXBRLファイルが作成されます。インラインXBRLは文書としてのXMLと見やすいHTMLを橋渡しするフォーマットで、見やすい形式での編集を可能にします。

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「報告書インスタンス作成ガイドライン 図表 1–4–3」より引用

フォルダ内の_ixbrl.htmから.xbrlが生成されるイメージです。manifest_から始まるマニフェストファイルがインラインXBRLを組み合わせる方法を定義しています。作成された.xbrlファイルは晴れてEDINET上で公開されます。

本記事ではXBRLの構造からそれを作成・提出するプロセスを解説しました。次の記事では、実際に作成された文書を読む方法を解説します。


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