橋を渡す
麻雀プロになったとき、私はかるた界出身だから、双方の業界を結びつけるようなことを何かできたらいいなぁと思っていた。
一昨日、かるた界と麻雀界から協力を得て競技かるたのYouTube生配信をしたことで、その思いを少し形にできた。
動画リンク→https://youtu.be/6DwfXktnftI
出演してくれたのは、麻雀界から中月裕子プロ(日本プロ麻雀協会、競技かるた経験者)、戸丸めぐみさん(最高位戦日本プロ麻雀協会研修生)。
かるた界から浜野希望六段(慶應かるた会・2019年名人戦予選東日本代表)、池田佑貴五段(慶應かるた会)、新居豊四段(早稲田大学かるた会)。
※仲良しの生沼紗織プロにもお声がけしていたが、新輝戦本戦を劇的に勝ち上がったため、この日は準決勝を戦っていた。素敵なサムネイル作成で協力してくれた。
麻雀は天鳳や雀魂などゲームの様子を気軽に配信できるし、実際の対局のネット中継も多い。幅広い人が、簡単にアクセスできる。
だが、競技かるたは試合の様子を見られる機会がなかなかない。ネット中継のある大会は年に数回。しかも、見たい選手が出場していたとしても必ず映るとは限らない。個人で配信といっても、場所を借り、機材を用意し、対戦相手を見つけて…とハードルが高い。
そもそも競技かるたにはプロ制度がないこともあってか、「外部からの見られ方」という点は他の競技に後れを取っていると思う。
11月上旬に、Twitterでこんなアンケートを投げてみた。
私のアカウントのフォロワーは麻雀関係の方が多くを占めていると思うが、意外にも麻雀よりも競技かるたの配信に票が集まった。おそらく、かるたに票を入れてくれた方々は「どんなもんなのか見てみたい」という気持ちだったのだと思う。
で、次点だった「ゲストを呼ぶ」も併せてできるというわけで、今回の競技かるた生配信を企画した。
準備段階から快く協力をしてくれたのが、浜野君と池田君だった。
二人ともかるたの実力者でありながら麻雀も大好きで、私と同じく「かるた界と麻雀界を繋げたい」という熱い思いを持っている。今回の企画を終えて浜野君が書いたnoteにも、その思いが溢れている。ぜひ読んでみてほしい。
https://note.com/nozonozohope72/n/n1edd3284797c
浜野君とは今年5月に、天鳳を使った「競技かるた界の麻雀大会」を共同で開催した。それは、かるた界隈で麻雀を楽しもうという企画だった。そして今回は、麻雀界隈の方たちに競技かるたのことを知ってもらおうという企画だ。
競技かるたと麻雀には、いくつか共通点があると思う。
まず、老若男女が一緒になって取り組めること。
そして、記憶と戦略がカギになること。
競技かるたはそのスピードにばかり目が行きがちだが、実はスピードだけでは勝てない、と思っている。
札の配置やどの札が既に読まれたか、ある音が読まれたときに相手がどんな反応をしていたか(手の動き出しが早ければその音に似た札を狙っている可能性があるし、遅ければ狙いが薄い可能性がある)などを記憶しながら試合を進める。盤面は刻一刻と変化するから、記憶の蓄積と更新の両方が必要だ。また、「相手の取りやすさ・取りにくさ」「自分の取りやすさ・取りにくさ」などを考慮しながら送り札を選択する。
麻雀も手出し・ツモ切りなどを記憶して相手の狙いを考えたり、相手と自分の手牌の価値のバランスから打牌を選択したりするから、似ている部分があると思う。
そして、競技かるたにも、麻雀ほどではないが「運」の要素もある。札が読まれる順番は完全にランダムなため、一方の選手が狙っているゾーンが立て続けに読まれたりすると、番狂わせが起きることも稀にある。
そんなわけで、麻雀界隈の方の中にも、競技かるたの魅力を伝えられれば興味を持ってくれる人がいるのではないかなぁと、ぼんやりと思っていた。
生配信では2試合を行い、どちらも現役選手による実況・解説をしてもらった。競技かるたを初めて見る方にも分かるように丁寧に説明してくれていたと思う。
μレディースop優勝、新人王、女流名人と麻雀で華々しい結果を残している中月プロが参加してくれたことも、とても嬉しかった。元々、配信の話よりも前から「かるたしましょう」とお話はしていたのだが、今回を機にまた一緒にかるたができたらいいなと思う。
そして、かるた未経験の戸丸さん(まるこちゃん)は、初見の人の立場で質問を投げかけてくれたり、かるたの体験を半ば強引にやってもらったりした。他のメンバーは全員経験者だったから貴重な存在で、とてもありがたかった。
現役トップクラスの浜野君との試合はとても白熱した。そもそも実績で言えば浜野君が格上だし、私はかるたをお休みしてから2年が経過しているので、大敗しても不思議ではなかった。
序盤に2回連続でお手つきがあり、かなり不安な立ち上がりだった。トップスピードは完全に浜野君の方が速くて、全く反応できないまま取られてしまう札もあった。私は元々は相手陣に攻め込むスタイルなのだが、一昨日は"浜野君の戻り手には何とか間に合う程度のスピード"で取り、自陣の札を拾っていくという感じだった。
久しぶりのかるたが楽しすぎて、配信を全て見返し、記録まで起こした。◎が相手陣で取った札、○が自陣で取った札、×がお手つき、小さい数字が残り枚数を示している。百人一首の中に「い」で始まる札は3枚しかないのだが、その「い」札で3回ともお手つきしていて笑った。以前はもっと速く取れていたのになぁとも思うが、勝因は実は"浜野君の戻り手には何とか間に合う程度のスピード"の取りだったのかもしれない、と振り返っている。トップスピードを上げて対抗しようとすればそれだけ狙いの負担が大きくなり、おそらく他の部分で抜けが多くなってしまっただろう。
総じてかなりいい試合だったと思うし、特に「ゆら」以降の終盤のハイスピードの攻防は面白いので、そこだけでもぜひ見てもらえたら嬉しい(動画では2:52:00頃~)。
競技かるたをスタートするには、まず百人一首を覚えるところから始めなければならず、気軽にとは言えないかもしれない。でも、麻雀だって役と点数を覚えるところからスタートだ。それができる雀士の皆さまは、かるたもきっとできると思う。そして、アガれた時の喜びと札を取れた時の喜びは全く一緒だ。味わってもらえたら嬉しい。
1月9日(土)には、競技かるたの最高峰の「名人位・クイーン位決定戦」が行われる。今回よりも更にレベルの高い戦いが見られると思うので、ぜひ配信を覗いてみてください。
今後もかるた界と麻雀界の橋渡しになるような企画を考えていきたい。何かアイディアがあれば、ぜひ教えてください。
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