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モラトリアム、文学に勤しむ

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四千字:小説『ニヤニヤ』

四千字:小説『ニヤニヤ』

スズキは昔から芯の通った男だった。自身の中にある確固たる意志は、時に周りを巻き込み、時に疎まれもしたが、確固たる意志を持つ彼にとってそれは大きな問題ではなかった。彼にとっての問題と言えば、彼が生きている社会の問題それ自体だった。どういうわけか鬱屈した日々を生きることになった彼にとって、そういった問題は真に迫り、自分を当事者として考えないでいることは不可能だったのだ。しかし、周りの人はそうではない。

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