ひとり酒のための美意識

お酒はできるだけ飲まないようにしている。祝いの席か、今日は思いっきり食事を楽しむ、という日か、それくらいである。日常的にお酒を飲むのは健康に悪いという信念がある。内臓への負担も気になるし、規則正しい生活が失われがちなのも心配だ。依存症も気になる。太る気もする。体重が増えなくても、身体のラインがゆるみそうな気がする。

先日ものすごくひさしぶりにギムレットを飲んだ。ジンにライムジュース、シュガーシロップを少々。誰も見ていないのに、ひさしぶりにシェーカーを振ったらなんだか気恥ずかしかった。お酒を飲まないと言っているくせに、うちにはシェーカーがあるし、ジンやウォッカやその他リキュール類が置いてある。そうなのである。私はお酒を飲むのは大好きだ。

昨日もまた飲んだ。今度はブラディメアリー。ウォッカとトマトジュース、レモンジュース、ウスターソースを数滴にクレイジーソルトとブラックペッパーをこれでもかと振りかける。途中でペペロンチーノが食べたくなったが、やめて納豆巻きを作って食べた。酢飯まで作ってまめなことである。

今日もまた飲んだ。またブラディメアリーである。割るものがトマトジュースしかないのだ。日頃からお酒の準備をしていないのでこうなってしまう。今日はどうしてもスパゲティの気分だったので、麺を茹でてジェノベーゼソースで食べた。鍋まで洗ってご苦労なことである。

これは太る。確実に太る。こんな生活をしていては駄目だ。明日からはまた飲まない生活に戻ろう。一杯ずつしか飲んでいないし、薄めに作ったし、2日で摂取したアルコールは合わせて30mlにも満たないのに、反省しすぎである。

ひとり酒のルールは、なんとなくおしゃれな感じにすることである。インスタ映えする飲み方をするのである。飲んだくれてる感を出さないためだ。飲み物もおつまみも自分で作ること。セッティングにひと手間かけること。ナッツとチーズをガラスの器に盛り付けて、カクテルにはレモンの輪切りやミントの葉を浮かべて。

これは本当にやったほうがいい。お酒を飲むことは、儀式なのである。お酒は儀式で使うドラッグだ。効果が大きいだけに、一歩間違えば危険なのである。儀式が儀式であるために必要なのが様式だ。儀式を超えないために、様式を守る必要がある。酒飲みのみなさまにおかれましては、ぜひ自分だけのオリジナル様式を作ることをおすすめしたい。

蒙古タンメンの件もそうだけど、私、儀式が好きみたいだな。儀式クリエイターになろうか。