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(夫)相見積不可能性

 注文住宅の建築について、教科書的記載と実際の流れの差異に悩むこともあった。本稿ではエビデンス・プラクティスギャップ的な領域の中でも最たるもの、相見積りの不可能性について記載する。

 本契約の前に仕様を決定するというのはよく言われることであるが、なかなかそうもいかなかった。仕様を決定するのかなり大変で、複数のハウスメーカーで仕様までつめた設計をしてもらって選ぶというのは現実的でないように思う。

 ハウスメーカー毎に価格帯が概ねあり、2023年初め頃だと現在積水ハウスや三井ホームで特に華美でなく標準的な間取りの四角い平屋で付帯工事など入れて坪単価100万円強、四角い総2階でアイアン階段いれてLDKタイル張りとして付帯工事こみで140万円程度。価格帯が大きく変わらないところを比較するのであれば、好みのハウスメーカーで契約する他ないように感じた。仕様が決まっていない相見積りにどのくらい意味があるかは正直良く分からない。(ざっくりとした価格帯が分かる程度のものだろう。)

 私の場合は本契約時には間取りと仕様がある程度決まっている状況ではあったが、よく見ると付帯工事の欄に2階のエアコンが入っていなかった。(契約前に2階部分の空調が後日でもとチラっと話していたので、ミスではないと思われる。施主支給の方が安いだろうから施主支給を増やしてくれるのはありがたい。また、壁面収納は間取りやCG画像には記載されているが、予算には入っていなかった。)
 設計契約(5万円支払い)→本契約の間で間取りと概ねの仕様を決定したが、この間で4-5回程度の打合せを要した。相積もりまでもっていくというとこれを複数個所で行う必要性があるわけで、4回×n箇所の打合せをできる人がどの程度存在するのかは少し気になる。
 相見積もりのための多数の打合せをする時間的猶予が少ない理由としては土地の問題がある。土地が決定しないと当然間取りが決まらない。土地が決まった後に半年も1年も地主が待ってくれれば良いが、そうでないと融資の手続きの問題が出てくる。住宅メーカーが決まって間取りや仕様が概ね決定しないと融資額が決定しないし、融資額が決定していない状況で融資に進めない。銀行は間取りや見積書を請求してくるためである。
「住友林業か積水ハウスか三井ホームで建てる予定で、土地と合計で6000万円程度だと思うんですけど、まだよくわからないです。仕様も詰められてないですしね。ところで土地の融資だけ先にしてほしいんですけどいいですか」と銀行に行ってもそら無理ですわ、というところについてあまり触れられていない。土地から探す人はそういう点で不利にならざるを得ない。
 参考までに私の場合は土地を購入することを不動産業者に伝えたのが1月半ば、手付金の支払いや契約日が2月半ば、融資実行が6月半ば、といった具合であった。契約日に不動産業者に確認したところによれば、契約から1-2か月で決済というのが一般的のようだった。契約から4か月が経過しているので待ってもらった方だと思う。複数個所で仕様をつめて見積りする場合にはさらに時間がかかるので、土地の売主と話し合っておかないと非常識かもしれない。私の場合、売主は自宅の前に住んでいて今後もご近所さんとしての付き合いが続くので余計に非常識なことは避けたかった。

〇おまけ① 仮契約
設計契約後は仮契約を兼ねていた。仮契約後にモデルハウスの見学に行ったミサワホームでは「どこすか、その工務店。5万円うちがその分持つので、うちで建てる選択肢もありまっせ」と言われた。地域すべての工務店をカバーするのは難しくても価格帯が同じ工務店は他にないのだから競合として認識していないのは勉強不足なのではと感じた。(三井ホームの営業も知らないようだった。)

〇おまけ② 営業
 営業担当の方も決めてから会いに行くというのが教科書的と思われる。担当者が大切というのは耳タコの話なのだが、私の場合思い立って住宅展示場に行ったためにこれについてはただの運であった。初日に訪れたハウスメーカーはアキュラホーム、三井ホーム、積水ハウスであり、訪問理由もアキュラホームはモデルハウスの外観が好きだったから、三井ホームも同様、積水ハウスはネームバリューといったところであった。後に設計契約を結んでからミサワホームも見学してみた(そしてモデルハウスは素敵だった)
三井ホームが最良であった。担当は新人であったが、チーム制となっており責任者の同席もあったことや新人の担当が他に任されているお客がいないせいか、足を使って土地の写真を集めてくれたり、ハザードマップを大きな紙面に印刷して比較対象の土地をシールでプロットしてエリア別にコメントを記載してくれたりと熱心である一方押し売りもなく打合せの雰囲気もよかった。インターネッツでは「騎士道精神」という評もあり、まさに評判通り。積水ハウスは初老の紳士という印象で、積極的な営業はせず、ナンバーワンの風格があった。アキュラはプルデンシャル生命で保険を売っていてもおかしくないアニキだった。新人が担当は一般的には微妙なのかもしれないが、こと三井ホームに関してはチーム制というのは安心感があって良いなと感じた。社内の教育がきちんとしている印象も受けた。
 最終的に選んだ工務店の営業は当初お世辞にも人当たりが良いとは言えないと感じたが、モデルハウスがかなり印象的な建物なので冷やかしでの来訪者が多いであろうことや、坪単価100万円以上と工務店としてはトップクラスの価格帯であったことから貧しそうな身なりをした当日予約の我々のことを冷やかしと勘違いしていたのかもしれない。その後は特に悪い印象もなく、普通の方だった。

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