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誰が為に小指はぶつかる

“足の小指をぶつけるとめちゃくちゃ痛い”
誰もが一度は経験したことのある痛みではあるが、ぶつける回数は人それぞれ。
私は幾度となく小指をどこかの角にぶつけてはその場にうずくまり、足の小指はかなり頑丈になった。(と自負している)
もしも足の小指で指相撲ができたなら、全国大会優勝もんである。
私は少しぶつけたぐらいじゃ顔色一つ変えない猛者となった。

しかし、悲劇はまた繰り返す。
夜中、トイレに行こうと思い入ろうとしたその時、入り口の角に思いっきり小指の角をぶつけた。
ポキっと音をたてた私の小指。
走る激痛。今回ばかりは骨が折れたのかと思った。
実際、母は角に足の小指をぶつけて骨を折っているのでマジで心配した。
 痛みと闘いながらトイレの中に一人うずくまる。
深夜2時頃だ。この痛みを話せる人はいない。
人は孤独だ。
というか人はなぜ、いつまで経っても自分の歩幅と体の幅を正確に把握できないのか。
そもそもなぜ世の中はこうもいろいろ角ばっているのか。
なぜこの場に慰めてくれるねこちゃんが存在していないのか。
角を全て丸くしておけば小指も無事だし、すべての人の心も丸くなり、戦争も起きなくなるのではないか、そんな考えがぐるぐる頭の中を巡った。

また1段階ラグビー選手のように強化された小指、なんのためにトイレの入り口の角にぶつかっていったのだろう。
何も得することはないのに。
神様どうか、どうか足の小指に平穏な日々を送らせてあげてください。彼女も普通の足の小指として生きたいはずです。

一旦、痛みは和らいだものの、いつもより痛いので、これは推しのSSRがガチャで出てこないと割りに合わないと思い回してみたが、結局SSRなんて出てこなかった。

痛みと虚しさを抱えながら、今はただ心と足の小指を強く持って生きていこうと思った。
小指よ、今後も折れてはくれるなよ。




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