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6GB8 専門家の解説

[時代背景]

 開発当時,国内ではオーディオHiFi装置のブームが到来していた。オランダ・フィリップスは1954年頃にB級プッシュプルで100Wが得られるEL34(EIA名6CA7)を発表し,まもなく米国でも系列会社から出荷している。国内ではフィリップスと技術提携していた松下から1955年に発表され,たちまち大出力装置の国内市場を独占した。この頃,ドイツではテレフンケンがEL156を既に発表していたが,英国,ドイツ,フランス,米国,日本など主要各国に世界的な販売ネットワークを有するフィリップスの敵ではなかった。一方,米国では需要が期待できるカラーTVの水平偏向用ビーム管だけに開発意欲が集中し,民生用大出力管ではEL34/6CA7に対抗できる品種は無かった。しかしEL34/6CA7に刺激されて,米国ではTungSolから6550が,次いで英国ではGEC(MOV)から6550を強化したKT88が発表された。これらの球は,いずれも中央部が平坦な箱型プレートを持ち,プレートや電極支持の構造は,6550が6L6系の堅牢型高信頼管5881(1951~1954年)の,またKT88が6L6系のオーディオ管KT66(1937年)の流れを汲む作りをしている。ところが,特性的には大きく異なり低電圧動作時における電流異常領域が大きいためシングル動作は向いておらず,大電流・大出力に重点をおいた設計で,ウルトラ・リニアー接続のプッシュプル仕様も発表されている。この理由は,EL34/6CA7とほぼ同時期(1954~1955年)に米国RCA(?)が開発し,英国にも出現した初代カラーTV用水平偏向出力管6CB5を特性の原型としていたからではないかと推測される。この6CB5の外形は,胴の短いSTガラスを用いたトップ・プレートのG管で6550と同じであり,また感度を除くプレート特性も6550に非常に良く似ているのである。もっともST型の6CB5は翌年までには通常のチューブラー型の6CB5Aに改良されてしまった。6CB5はTV用の普及品であるので,その作りはやわい。

[6G-B8の開発]

 その頃,国内メーカは米国の新製品情報には特に敏感だったからTungSolの6550の風聞も耳にしたはずで,6550の国産化も有りえる話であったはずであるが,東芝は何故かオーディオ用大出力管については自社開発の道を選択したのである。東芝は,カラーTV国産第1号を作るため6CB5Aを1956年に国産化し,その際に民生用大出力管の設計・製造技術を修得していた。その技術転用第1号が6G-B8になったのである。6G-B8は東芝が独自に開発したオーディオ用大出力管として国内では有名になったが,そのような訳で,水平偏向管6CB5Aの肩特性の良さ(大出力)を活かしつつ,オーディオ管としての適性(高インピーダンス負荷)を持たせて,6550やKT88の特性に近づけたものが6G-B8なのではないかと考えられる。その作りは,TV用の普及品の姿がそのまま踏襲されている点が,他の6550やKT88との違いにもなっていると考えられる。

個人的な意見、万博が控えていて、躁状態だったので 東芝は自社単独開発に進んだのではないか。

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