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日本車ってすごいんだぜ

アフリカでの生活は忘れたくないので、少しずつ記録して行こうと思う。

私はぶっちぎりのトラブル隊員で、なんでそんなこと起きるの?と隊員にも職員にもドン引きされていた。
珍事件から死にかけた事件まで、実にバラエティに富んでいる。

全部書いたら、アフリカはやばいところだと思わせてしまいそうだし(それもあってnoteでは国名は出してない。あとJICAにも怒られそうw)
これからの隊員の不安を煽ることになってしまいそう。

それでも今となっては笑って話せる事件ばかりなので、面白おかしく書いて、最後は誰かへの注意喚起になればいいと思っている。


一番の事件は、やっぱりタクシー半壊事件だと思う。

バックドアガラスがないことにご注目!

写真から想像は容易いでしょう。
そうです。追突事故です。

赴任してすぐ、任地で3週間の語学研修があった。残りわずか!というところで体調を崩したので(これもトラブルが原因だけど、この話はまたいつか)療養のために予定よりも5日ほど早く首都に戻ってきた。

療養と言っても病院に行くほどではない。
事務所の近くのゲストハウスでゆっくりと休ませてもらいながら、プレゼンの準備をして、同期を出迎えるつもりだった。

宿は手配してくれるけれど、食事の手配は自分でしなければならない。ゲストハウスでも食べられるけど高いし、水も買いたい。

療養1日目。まずは大型スーパーに行くことにした。

首都での移動は基本的にタクシーで、UberかVoltを使う。ドライバーは客を乗せた後、目的地までアプリが誘導してくれるし、乗客もどこを通ってるか分かる。
料金も算出してくれる。なんて便利なのだ。

私の任地では、タクシーは流しを捕まえて値段交渉したり相場のを支払ったりするスタイル。そして基本的に乗り合い。UberやVoltが使える都会隊員もたまにいたけれど、多分、隊員の多くがこんな感じだと思う。


アフリカを走る車のほとんどは、日本や韓国から来た中古車。ナビ付きの日本車に乗った時は、アクアラインをウロウロしていたり、九州にいたりする画面が見られる。それが結構楽しみだった。

同じ中古車でも任地のタクシーはかなりボロい。首都の車はきれい。貧富の差はここにも表れているということなのかな。

この日、私が呼んだドライバーはTOYOTAに乗ってやってきた。しかもめちゃくちゃきれいな車体。
これはもしかしてシートベルトも機能するのでは…?とワクワクで引っ張ってみたら、ちゃんと使えるではないか!!!

首都だとしてもシートベルトがちゃんと使える確率は半分くらいだったと思う。
シートベルトを引っ張り出してみても使えなかったり、誰も使わないから砂が出てきたり、そもそもシートベルトがなかったり。きれいな車体で、しかもシートベルトが使えるのなんて大当たりなのだ。

ちなみに任地では乗り合いなのでシートベルトは使えないも同然。助手席に2人乗ることもある。定員オーバーは当たり前。

久しぶりのシートベルト。さすが首都は違いますね!!なんて思いながら、私はウキウキでベルトを締めた。

これが運命の分かれ道だったことを、私はまだ知らない。


スーパーから宿まで数分。到着まであと少しというところで、ドライバーが電話を始めた。この時は知らなかったけれど、この国でも運転中の携帯電話の使用は違法。

ここまで来たし場所はもう分かってるだろうと思いきや、右折すべき道を華麗にスルーしたではないか。
「hey!兄ちゃん!今の角、右折やで!」と慌てて声をかける。ドライバー兄ちゃん、急ブレーキ。数メートルの距離をバックして戻ろうとしたその瞬間

バーン!!!という音で鼓膜が震えて、体がちょっと浮いて前に飛んだ。
追突されたんだと分かったと同時に、死んだと思った。

一瞬音だけの世界になった。
視界は動きすぎて、何が何だか分からなかった。

追突されて押し出された車が止まった時には、頭はぐわんぐわんした。ヘッドシートにぶつけた後頭部が痛かった。

そして何か足元にも体中にも座席にも、キラキラがたくさんころがっている。よく見るとガラス。バックドアガラスが全部割れていた。


日本車は事故の際、割れたガラスで怪我をしないようにフレーク状に割れるように作られていると聞いたことがある。多分、5年生の担任をしていた時の社会科見学で聞いたんだと思う。

本当にフレーク状に割れてる!!すご!!!

と感動。頭ぐわんぐわんしながら、ちょっと指先でガラスを摘んで観察。
人間、突然のことが起きると訳の分からないことをするもんなんですね。

しばらくはいろんなところから破片が出てきた。

呑気にそんなことをしていたら車体から変な音がしたので、慌てて外に出る。爆発したらたまったもんじゃない。

そして振り返って驚いた。

お相手はランクルでした。

めっちゃ屈強そうな車がそこに。

そりゃヴィッツも半壊するわ。
一方でこのランクルはナンバープレートが取れただけ。強い。

幸いにも車は爆発することもなく、両ドライバーにも「あなたは悪くないから、もう帰っていいよ。お金もいらない。」と言ってもらえた。
任地だったら「お前がいきなり声かけるからだろ!」と逆ギレされて、金を要求されてもおかしくない。
さすが首都である。ジェントル!

とはいえ事務所から徒歩5分の距離で、こんな事故に巻き込まれたのが事後報告になるのは…と思って職員さんに来てもらうことにした。昼休みなのに駆けつけてくれて、ありがたかった。

その間に、両ドライバーと突然登場したお兄さん(目撃者らしい)による話し合いが行われていた。
現地語だったから全然分からんかったけど、どうやら示談にしたようだ。

そりゃ警察呼んだら自分たちがスマホ使って運転してたのバレちゃうもんねえ。
ランクルのドライバーはスマホを見ていて、前を見てなかったと目撃者を名乗る兄ちゃんが言っていた。

ボス(職員さんのこと)が来るまで待って!ってお願いしたけど、ランクルの運転手は去ってしまう。
Uberの兄ちゃんは、Uberに登録している以上、名前や携帯番号が私にバレてるので待ってくれた。あと目撃者兄ちゃんと、これまた突然登場した屋台引いてるおじちゃんも。

あなたは怪我はない?と話を振ってみるものの、めちゃくちゃ落ち込んでうなだれているドライバー兄ちゃん。半壊したヴィッツ、修理に相当なお金がかかるんだろうなあ。
タクシードライバーは決して儲かる仕事じゃない。この時ガソリンめちゃくちゃ高かったし、物価も跳ね上がってた。

角を曲がればすぐゲストハウス。
彼は私を目的地まで送り届けるという責務は、とりあえず果たしている。だから、示されていたお金よりもちょっと少ない金額を渡した。修理に使ってよって。

職員さんが来てくれてからも、彼は正直に受け答えしてくれて、対応してくれた。いい人だった。
そして半壊したヴィッツで去って行ったが、変な音と煙が出たので、少し走っては止まり、走っては止まりを繰り返していた。
大丈夫だったかなあ。


健康管理員さんに隅から隅まで調べてもらったけれど、どうやら私は無傷。
頭はぶつけたところがちょっと痛いだけ。病院も整形外科はお休みとのことで、次の日に行くことになった。

「明日、あと2人整形外科に行くのよ。3人も連れて行くなんて前代未聞!」
とベテラン管理員さんに言わせてしまった。

あと2人のうち1人は、半月板を痛めた同期だろうなと思ってすぐLINEしたらビンゴ。もう1人も任地が近くてお世話になっている先輩隊員だった。
翌日は3人仲良く病院へ行き、お昼を食べ、記念撮影して書類を書く1日となりました。

私はというと、翌日はやっぱりちょっとムチウチの症状が出た。でも首は回せて、寝違えた程度。

レントゲンも異常なし。診察(医者は私の体をどこもチェックしていないけれど)も異常なし。薬も治療もなし。
その次の日にはほぼ治ってた。

私の首レントゲン

あの車の壊れ具合に対してほぼ無傷。
シートベルトのポテンシャルの高さを知った。

シートベルトが機能しない車だったら、体ごと吹っ飛んでいたかもしれない。日本車じゃなかったら、ガラスで出血していたかもしれない。(韓国や他の国の車のガラス事情までは分からん)

運がいいのか悪いのか、まったく意味不明だけれど、生きててしかも無傷なんだから多分運はいい。
療養に来たのに、1日目から交通事故に巻き込まれるんだから、悪運も相当よさそう。

私の命を救ってくれてありがとうTOYOTA。ありがとうジャパンクオリティ。

日本にいても世界のどこにいても、車に乗るときはシートベルトは忘れずに!!
って、きっとピーポくんも言ってるよ!

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