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数の拡張(1)「数の定義」

数の拡張について語る。数という概念の基礎から、数の表現範囲が広がり、拡張し、発展していく様子を見ていく。今回書くのはあくまでも数学上の論理や応用に基づくものであり、歴史に基づくものではない。

数とは

そもそも「数」とは何か。

数は、抽象的な概念である。

ここで、具体と抽象について簡単に説明しておこう。


具体と抽象

具体とは、実際に見たり聞いたり触ったりすることができるということ、つまり、直接に知覚できるということを意味する。

例えば、りんごなどの食べ物や、犬などの生き物は、見ることも触ることもできるから、これらは具体的なものである。

抽象とは、いくつかの具体的なものから、それらに共通して見られる性質を取り出すことである。

例えば、黒い机と黒い車は、形も機能も全くの別物であるが、色に関して「黒い」という共通の性質を有している。「黒い」という言葉は、物体の色に関する性質を表す抽象的な言葉である。


数は、抽象的な概念である。すなわち、いくつかの具体的なものから取り出せる共通な性質を表す言葉である。

抽象的な概念を理解するための一番手っ取り早い方法は、その概念の代表的な具体例から、それらに共通する性質を見つけることである。

具体的な数として「1」「2」「3」などが挙げられる。これらの数は日常でも頻繁に用いられる。まずは、これらの具体的な数の意味を考えてみよう。

「1」という数の具体例を挙げる。一人の人間、一匹の犬、一匹の羊、一つの小石、一本の木、一枚の葉などなど。これらの例に共通する性質が「1」という数の意味である。

同様に、「2」という数の具体例を挙げると、二人の人間、二匹の羊、二つの小石、二本の木、二枚の葉などである。これらの例に共通する性質が「2」という数の意味である。

「3」という数の具体例は、三人の人間、三匹の羊、三つの小石、三本の木、三枚の葉などである。これらの例に共通する性質が「3」という数の意味である。

三人の人間、三匹の羊、三つの小石、三本の木、三枚の葉。これらすべての共通点とはいったい何だろうか。

これらの例のどれもが、他の例と組を作ることができる。人間と羊であれば、一人の人間と一匹の羊を順番に組にしていくと、人間も羊も余ることなく、すべての人間と羊を組にすることができる。つまり、それぞれの人間とそれぞれの羊の間に過不足なく対応を付けることができる。

羊と小石も過不足なく対応付けることができる。小石と木、人間と小石、羊と葉など、他の例についても同様である。

これが「3」の具体例すべてに共通する性質であり、すなわち、「3」という数の意味である。

「3」の具体例は、必ず、三つの小石と過不足なく対応付けることができるし、逆に、三つの小石と過不足なく対応付けることができるものはすべて、「3」の具体例となる。

これは、「1」や「2」あるいは「4」以上の数についても同様である。

例えば「5」という数ならば、これは五つの石と過不足なく対応付けられるあらゆるものを表す。五冊の本、五回の謝罪、あるいは五か月などがそうである。これらすべてに共通する性質を五つの石に代表させて表現することができる。

そうすると、数の意味は、具体的な小石の集まりと過不足なく対応付けられることであるといえよう。

小石を一つずつ増やしながら、それらの小石が代表する数に名前を付けていけば、小石で表せるすべての数を網羅することができる。また、そのすべてに文字表現を与えれば、どんな数も数字で書くことができる。

ここでは、上の方法を数の定義として採用することにしよう。

このとき、ある適当な数を考えたとき、その数自身の具体例は互いに、特に、その数に割り当てられた小石と過不足なく対応付けられる。「1」ならば、一つの小石と一本の木、「2」ならば、二つの小石と二枚の葉、それぞれで過不足なく対応付けることができる。

しかし、「1」の具体例と「2」の具体例では過不足なく対応付けることはできない。一匹の羊と二つの小石の対応付けを考えると、一匹の羊と一つの小石を組にした後、小石はもう一つあるが、それと組にできる羊はもう残っていないため、どうしても小石が一つ余ってしまう。

一匹の羊よりも二つの小石の方が数が多いということである。これにより、数の大小関係を定めることができ、「1」よりも「2」の方が大きいといえる。

以上の考え方に基づいて、数の大小関係を定義すると、次のようになる。

あるものの集まりと別のものの集まりの間で対応付けを考えたとき、過不足なく対応付けられるならば、それらの数は等しい(または同じ)という。

逆に、過不足なく対応付けられず、どちらか一方に余りが出るならば、それらの数は等しくない(または異なる、違うなど)という。

このとき特に、余りが出た方の数は、余りが出なかった方の数よりも大きいという。

逆に、余りが出なかった方の数は、余りが出た方の数よりも小さいという。

大小関係の定義

逆に、数を比較することで、一対一の組を作ったときに余りが出るか出ないか、余りが出るならばそれはどちらか、ということがわかる。

実際に組を作ることをせずに、余りが出るかどうかが判断できること、これが数の利点の一つである。

数えるとは

数を利用するにはまず、ものの数を求めなければならない。そこで、ものの数を求める方法、すなわち、ものを数える方法について考えてみよう。

ここでは数の定義として、小石を一つずつ増やしながら順にそのときの小石の集まりが表す数に名前を付けるという方法を採用した。一つ増えるごとに順に数を定めているから、「1」の次の数が「2」、「2」の次の数が「3」、というように連続した数の並びが得られる。

この定義に基づいて、ものの数を数えることができる。ものの集まり全体の数をいきなり求めようとするのではなく、数の定義の手順にしたがってものを数え上げればよいのである。

小石を一つずつ増やしながら、それが表す数を定義した。この手順に従い、注目するものを一個ずつ増やしていけば、数の定義における小石と対応付けることができ、それらの小石に対して定義された数を参照することができる。

ものの集まりのうちの適当な一個に注目し、それを定義に基づき、「1」と数える。次に、ものの集まりのうちのまた別の一個に注目し、先に注目したものに付け加えた集まりを考えれば、数の定義により「2」となる。この作業を、注目したものの集まりが、もとの集まり全体になるまで続けていけば、ものの集まり全体の数を定義にしたがって求めることができる。

言葉での説明だと少し分かりにくいので、実際に具体例を見てみよう。母音のカタカナを数える場合、以下の表の通りになる。

$$
\begin{array}{|c|c|c|}\hline\text{注目}&\text{集まり}&\text{数}\\\hlineア&\{ア\}&1\\\hlineイ&\{ア,イ\}&2\\\hlineウ&\{ア,イ,ウ\}&3\\\hlineエ&\{ア,イ,ウ,エ\}&4\\\hlineオ&\{ア,イ,ウ,エ,オ\}&5\\\hline\end{array}
$$

よって、母音のカタカナの数は「5」だとわかる。

本来、数は集まりに対して定められるものだが、上の表を見ると、注目するものと数との間にも対応関係が見てとれる。このことを利用すると、ものと数との対応付けを考えることができる。

ものと数を対応付けられるのであれば、もはや、ものと小石の対応付けを考える必要はなくなる。小石を使わずにものを数えるには、数を定義の通りの順番に覚えていればいいのである。その順にものと数を対応付けていったとき、最後のものに対応付けられる数が、ものの集まり全体の数に一致する。

この方法を使ってものを数えると、一つ一つのものに対してそれぞれ固有の数が対応付けられる。この対応付けを利用すると、数によってそれぞれのものを表すことができる。ある数に対応するものは一つしかないからである。

数をものに対応付ける。これは数の本来の使い方ではない。本来とは異なる使い方で数を利用しているのであるから、これは数の応用の一つであるといえる。応用においては、様々な点で定義と解釈の違いが生まれる。

数の定義のところで大小関係を定めた。これは、ものの集まりが多いか少ないかを比較するときに使われる。

では、ものに対応付けられた数の大小関係は、もの同士の関係について何を表すのであろうか。

数には順序があり、ものに注目するのにも順序がある。数とものの対応付けはそれぞれに対して順序通りに行われるから、両者の順序は相互に対応付けられる。したがって、ものに対応付けられた数の順序は注目の順序を表す。すなわち、ものに対応付けられた数の大小関係は、注目した順序が先か後かを示すのである。

まとめ

  • 数とは、もの同士の対応付けから生じる抽象的な概念である。

  • 数えることは、ものと数を順に対応付けていくことである。

  • 一つ一つのものに対応付けられた数はそれぞれのものの全体における順序を表すことができる。

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