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パターソンについてちょっと語らせてくれ

ジム・ジャームッシュ監督のパターソンを見た。
結構、いやかなりウィットに富んでいて、最近見た映画の中では突出している作品だった。

パターソンのあらすじ
パターソンの朝は妻にキスをして始まる。
バスの運転手として業務をこなしてく中で、ふと思いついた感情や言葉を妻にも見せない秘密のノートに詩を書き留めているのだ。
仕事を終えると妻の作った食事を食べ、愛犬であるマービンの散歩をこなし、行きつけのバーでビールを一杯だけ飲む。
代わり映えのない日常ムービーだが、ユニークな人々との出会いを描いた7日間の物語。

映像美

映像美というと、マーベ○とかディズ○ー映画などの絢爛なイメージがあるが、パターソンは代わり映えのない日常を最高の映像で映している。
いつもと変わらない街並み。
パターソンの自宅のセンスに溢れている家具。
パターソン行きつけのバー。
どれも普遍的ではあるものの、どれも魅力的だ。これを本当の映像美と呼ぶのだと思う。

パターソンと周囲の人々との距離

パターソンと周囲の人々との近すぎず遠すぎない距離感が魅力的だ。
妻ローラとは、夫婦という間柄にも関わらず、干渉しすぎない間隔が愛しい。
現代には親密な人には「全てを打ち明けなければならない」という風潮があるが、かなり逆光している。
それはもちろん、浮気だとか不倫だとかの下世話じみたものではない。
お互いに意識せずとも距離感を保ち、日常的な生活を送っている。
特に印象的なのが、パターソンが綴っている秘密のノートだ。
パターソンはローラにどのような詩をかいているのか、見せるわけでもなく、妻のローラも見せてと強要もしない。(詩人になればと提案はするが)
お互いが充実し、信頼しているからこそ、あのような雰囲気が出ているのだと思う。
パターソンの行きつけのバーのマスターとの距離感も魅力的だ。
身の上話しかしないものの、会話にユーモアがあり、二人の会話を聞いているだけでもニヤニヤしてしまう。
自分にもああいったいきつけのバーが欲しいと心底思った。

パターソンの生き方

映画を見終わっていい映画を見た後だけに感じるあの満足感を感じつつ、パターソンになりたいという気持ちが強く残った。
パターソンは決して、モテるとかお金持ちというわけではないが、いい意味で低い幸福の中にいるのだ。
周りの人を羨望したり、人一倍劣等感を感じている人が多い現代の中で、パターソンは本当の幸福を描いている。

パターソンは、疲弊している現代人はぜひ見て欲しい名作だ。

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