ちゃわんむし


「大丈夫?ごはん食べれられそう?」
君が心配そうに聞いてくる。
こんなに体調が悪いのはいつぶりだろう。
この喉じゃ何も食べられそうもない。
君は少し考え込む。
「わかった」
そう言うと、君は部屋から出ていった。
しばらくすると、台所から優しい香りが漂ってくる。
香りの正体を考えているうちに、また眠ってしまった。
目を覚ますと、湯呑茶碗を片手に君が覗き込んでいた。
「おはよう」
まだ少し、クラクラする頭振りながら、うなずく私。
君が湯呑茶碗の蓋を開けると、優しい香りが溢れてきた。
「まだ、少し熱いから気を付けてね」
匙に取って、冷まそうとする君から匙を奪った。
「大丈夫。自分で食べられるから」
充分に冷めていないまま、口へ運んだ。
口の中で熱を逃がすようにハフハフと食べた。
「ほら、熱いんでしょ」
まだ、口の中が熱い。
恐らく、私の顔はきっと真っ赤になっているんだろう。
きっと、茶碗蒸しのせいなんだ。
うん、そうに違いない。
終わり

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