物欲センサーといまつる先輩と誉ぽん
餃子にハマっている。正確には餃子を焼くのにハマっている。ふるさと納税でいただいた餃子を説明書通りに焼いたらびっくりするほど綺麗に焼けて、それ以来ずっと同じ焼き方で焼きまくっている。楽しい。
胚移植からおよそ2週間後、判定日。例によって体調はなにも変わらない。夫は数日前からそわそわしていたが、わたしは別の意味でそわそわしていた。この日の夜に真剣乱舞祭2022東京公演初日が控えていた。朝一番の診察なのでさすがに間に合うはずだが、できればいったん帰宅して推しコーデに着替えたいし、物販にも並びたい。空腹状態だと熱中症その他体調不良にもなりやすいから、入場前に軽く何か食べておいた方がいいだろう。わたしは確かに妊活民だが、子を産むためだけに生きているわけでないのだ。
診察室に入ると、電子カルテの画面に検査結果一覧が表示されていた。いつも黒文字で表示されるhCGの値が、今日は赤で表示されている。基準値より高い、陽性だった。
この時は、嬉しくないわけじゃないが、泣いたり飛び上がったりするような派手な嬉しさは感じなかった。ランダム缶バッジを上限ギリギリの10個買って、最推しは出なかったが二推しが1個だけ入っていた時くらいの嬉しさ度合い。主治医によると「この時期かつ薬も使ってなくてこの値なら妊娠していると判断していいけれど、まだそんなに高い値ではないから手放しに喜べるものではない」のだそうだ。画面上で赤文字なら陽性、というのは素人でも分かるが、妊娠と判断していいのかどのくらい喜んでいいものなのか、そのような細かい評価はやはり専門の医師ならではだと思う。
一瞬帰宅して大急ぎで着替えて、代々木第一体育館に向かった。診察室を出てからずっと、頭の中は乱舞祭のことばかり。時々ほわんと「陽性だった」ことを思い出すのだが、次の瞬間には目の前で歌い踊る刀剣男士の眩しさに吹き飛ばされてしまう。肥前くんのあの美しい背中を間近で見せつけられて、冷静でいられる人間がいるだろうか。鶴丸や堀川のソロを生で浴びせられて、よそごとを考えていられる人がいたら教えてほしい。わたしには無理だ。
2時間半の公演はあっという間に終わり、カーテンコール。東京公演初日だったこの日、刀ミュの一番初めの公演から参加している今剣が、こんなあいさつをした。
(本来ならひらがなで表記すべきだが、読みやすさを優先して漢字で表記した)
この言葉にぼろぼろ泣いて、泣いて泣いて、そしてやっと、わたしは陽性判定を待ち望んでいたのだと自覚した。鍛錬と呼べるほどのものかは分からないけれど、実はとても頑張っていたことも。
い゛ま゛つ゛る゛先輩〜〜〜〜〜とぐずぐずに泣いていたら、肥前くんの「かなり効く」誉ぽんが来て、いよいよ情緒がめちゃくちゃになった。たしかにかなり効いたが、しばらくどんな顔をしたらいいのか分からなかった。
それにしても、やめどきを考え始めた頃に陽性が出るとは。不妊治療にも物欲センサーのような仕組みがあるのかもしれない。
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