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想像妊娠

夫と二人で「アルキメデスの大戦」を観に行った。中弛みしない脚本に舞台ならではの演出、主演・鈴木拡樹をはじめとした信頼できる俳優陣、そしてこれまた信頼できる劇場・シアタークリエ。すっかり観劇オタクのわたしと違って、夫は初めての観劇だったが、しっかり楽しめたようで安心した。そして近藤頌利の坊主姿がなかなか男前でかっこよかった。



想像妊娠という現象がある。生理が止まったりつわりのような症状が出る他に、お腹が大きくなったり基礎体温が高くなる人もいるという。子供が欲しい欲しいと思い詰めている女性にばかり起こるものだと思っていたが、その逆の、絶対に妊娠したくないのに妊娠したかもしれないと不安がっている女性にも起こりうるものらしい。

7回目の採卵が全滅に終わった2か月後。次の採卵に向けて、次の生理が始まったら受診することになっていたのだが、肝心の生理がなかなか来なかった。体調は良くも悪くもなく、生理が来ないほかは本当になんともない。予定日から1日経ち2日経ち、まず夫がそわそわし始めた。ぴのこさんご懐妊!!ととろけるような笑顔でわたしの腹を撫で、2人で飲むはずだった日本酒を取り上げようとする。「もう開けちゃったけど妊娠してたらよくないから、残りは俺が飲むね」とは酷い話。たしかにタイミングを取ってはいたが、夫のあの精液所見でそう簡単に妊娠するものだろうか。不妊治療が始まってから生理不順気味になっていたし、妊娠とも不妊治療ともまた別件の無月経というのもあり得るはずだ。何より、妊娠と決まったわけでもないのに妊婦ぶって調子に乗っていると、かえって妊娠が遠のくような気がする。そわそわする夫をなだめながら、わたしは妊婦ではなくただの生理が遅れてる人だと、自分に言い聞かせて過ごしていた。

予定日から1週間ほど経ったある日、ふと思い立った。これは想像妊娠というものではないか。

日がな一日推しのことばかり考えているわたしだが、それでもやはり妊活民。自分でも気づかないうちに思い詰めているところがあったのかもしれない。なるほどこれが想像妊娠か。

想像妊娠かも、と夫に話した数時間後に見慣れた茶色いおりものが出て、翌日には見慣れた出血になった。翌日に受診し、今回は遅かったですね、と言われたので、そうですね、とだけ返した。あの一週間が想像妊娠だったのか、一瞬だけ着床してすぐに去っていったたまごがあったのか、今となっては調べようもないが、深追いされないということは次の治療に影響はないということだろう。

夫には改めて「軽率に妊婦ぶるとかえってうまくいかない気がするから、あまりそわそわしないでほしい」と伝えたが、夫は逆に「もしかしたら今度こそ、とでも思わないとやっていけない」のだそうだ。世の中の妊活夫婦はそこんとこどうしているんだろうか。

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