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61. 会いたいと言えない子だったんですね。」

再会してからも、可奈の月1回の通院は続いた。
主治医はある日、可奈に「パパとママとおじいちゃんおばあちゃん、誰が1番好き?」と尋ねた。
可奈は少し考えて、「おばあちゃん。」と答えた。そりゃあそうだ。その時、メインで可奈を育てていたのはおばあちゃんだったのだから。

私はその質問がとても嫌だった。誰が1番好きか、「好き」に順位をつけることを教えないで欲しかったし、必要な質問だとはどうしても思えなかった。



習い事のお迎えの帰りに寄った公園で、可奈がこんなことを言った。

「あのね、幼稚園でね、先生が『みんなのママは今なにをしているの?』って聞いたの。みんな、『おしごと!』とか『おうち!」って答えてるのに、可奈だけ答えられなかったの。すごく、淋しかったんだよ。」と。

私は、下を向きながら「ごめんね。淋しかったよね。ママも会いたかったんだよ。」と言うことしかできなかった。
本当の理由を知ったら傷つくだろう。大好きなパパが、ママと可奈を引き離したんだから。
だったらこのまま、何も知らないまま大人になるのがいいのかもしれない。

この事を主治医に伝えると、「可奈ちゃんは思っていることを言えない子なんですね。」と言った。

それだけか、と愕然とした。会いたいと言わないから、会わせられなかったんじゃなかったのか?
そんな一言で、1年以上もの断絶を済まされてしまうのか。責任は感じないのか。

帰り際に「そうやって言えるようになったので、もう外来は不要ですよ。」と言われた。

やっと終わったのだ。これで、裕太も裕太の家族も安心するだろう。苦痛でしかなかった精神科通いもこれでおしまいだ。私はひとまずホッとした。

また一つ、乗り越えたのだ。

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