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56. 再会・その2 〜花柄のドレス〜

医師との面談が終わったのがちょうどお昼時だったので、近くのファミレスに行くことになった。

「3名様ですね。空いてるお席へどうぞー!」

ウェイトレスさんに促され席に着くと、可奈は裕太の隣にちょこんと座り、私と向かい合う形になった。いつもなら必ず私の隣に座っていたのなぁ。まぁしょうがない。

「可奈にね、ドレス作ってきたんだよ。」

完成したばかりの花柄のドレスを渡すと、可奈の顔がほころんだ。

「ドレスだ、お花のドレス!!」

「うん。可奈は、ずっとお花のドレスが欲しいと言ってたもんね。」

隣にまわってドレスを着せてあげると、可奈は席を降りてくるくる回り、スカートを広げて遊んでいる。頑張った甲斐があったと嬉しくなった。
店員さんにお願いしてお店の入り口で記念写真を撮り、汚さないようにと着替えさせた。

「1か月前から、寝る前に『あと○○日寝たら、ママに会える』って数えてたんだよねー。」
甘党の裕太がパフェを食べながら可奈を見てそう言った。

いやいや、だったらもっと早く会わせてよ、先生のスケジュールなんて待たないでさ。と思ったけど、もちろん口には出さないでおいた。

それより今日は、『母親でしかできないこと』を沢山アピールしようと決めていた。裕太を責めても何も良いことはない。可奈も悲しむだろうし。


可奈は、当たり前だけど会えなかった間に大きくなっていた。それに、日本の幼稚園に入って、お行儀が良くなったようだ。ハワイにいた時はかなりの野生児だったのに。

子供にとっての1年は長いとしみじみ感じた。もう少し再会が遅かったら、、取り返しがつかなかったかもしれない。そう思うとゾッとした。

予想はしていたけど、可奈の態度は引き離される前とは違って、どこかよそよそしかった。だけど、元々シャイで自分をうまく表現出来ないところがある子だから、そういうものなのだと思った。

むしろ、片親疎外になっていなくてよかった。あともうちょっと遅かったら、拒否されていたかもしれない。片親疎外が酷い場合、顔を見ただけで逃げられる場合もあるのだ。

可奈は、始終少し離れたところから私を見て、たまにちょっかいを出してくる、という様子で、はしゃいでずっと飛び回っていた。

この感じが、裕太に良い風に伝わっていればいいんだけど・・。

私はケーキを頬張りながら裕太の表情を伺った。相変わらず、何を考えているのか全くわからなかった。

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