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裕太から浴びせられた言葉にショックを受けてうずくまっていると、夏生が部屋にやってきた。

「・・姉ちゃん、今から裕太さんの実家に行こう。俺も一緒に行くから。可奈ちゃんに会いに行こう。」

突然の提案に驚いたが、熟考した後、決心した。

いい年をして揉めている夫の元へ家族をと行くのはなんとも情けない気がしたが、正直、今は一人で行ける気がしない。行ったところで何が起こるかわからないし、この弱った状態でさらにショックを受けるような出来事が起こってしまったら、冷静手前いられる、無事に帰って来れる自信もなかった。裕太のあの様子から、門前払いをされるのは目に見えていたし。

夏生は手際よく仕事のスケジュールを調整し、午後には二人で裕太の住む大宮へ向かった。今の夏生はもう、私の知っている小学生の頃の泣き虫の夏生じゃない。。そんなことを、夏生の歯を食いしばった横顔を見ながらぼんやり思った。

大宮駅からバスに乗り、閑静な住宅街を15分ほど歩いて裕太の実家に辿り着いた。のどかなエリアで、鳥の鳴き声が聞こえた。

結婚前から何度も遊びに行った家だけど、今はなんだか知らない家のようだ。

「大きな家だねー。。」

肩を並べた夏生が呟く。彼がここに来るのは初めてだった。

庭を覗くと、小さくて可愛らしいピンクのスリッパが、ちょこんと並べて置いてあった。

可奈の物だ。可奈はここで生活しているんだ。私のいないところで。

じっと見ていると泣きそうになったが、泣きたい気持ちをこらえてインターホンを押した。

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