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43. 片親疎外の観点から

私は再び、可奈の描いた絵と医師の意見書を持って赤木先生の治療院を訪ねた。
可奈のことや審判のゆくえが心配だったのもあるが、何より、片親疎外の専門家である赤木先生の意見が知りたかったのだ。

マンションの一室にある赤木先生の診療所を訪ねた。ネットや動画で見ていた方が目の前にいるのはなんだか不思議な気分だ。

「どうぞおかけください。」

柔らかいソファーに腰をかけ、可奈の描いた絵を取り出すと、赤木先生はすぐに手に取って分析を始めた。

「この雷は、『母親と引き離されたショック』ですね。」

と先生が言い、私は安堵した。

今の状況を話し、再会した時の心構えや気をつけた方が良いことなどを教えてもらい、強い味方を得たと安心して帰路についた。

さすがプロだ。悩みや不安など全て、可奈への信頼と決意に変えてもらったようだった。心なしか気持ちも軽くなったのを覚えている。



しかし、同じ心理学を学ぶ人たちの中で意見が真っ二つに割れるとは、どういうことなんだろう。
それこそ、人の心理は学問で判断できるものではないとの表れなのではないだろうか。
そんな曖昧なもので一人の人生を判断するのは果たして正しいのだろうか?


裕太の医師は署名入りの意見書を出すくらいなので、本気で私たち親子の再会には慎重になったほうがいいと思っているのだろう。
そして、もちろんそれを読んだ裕太も、例えすべてを伝えてないにしても、医師の言葉に重みを感じているはずだ。

可奈は病院に通っているそうだけど、一体どんな気持ちでいるんだろう。
調停でもらった写真一枚では、可奈の様子はまったくわからない。 

母親なのに、娘の様子も知れないなんて。抱きしめてやる事も出来ないなんて。

いや、その原因を作ったのが、私だと言われてしまっているのだ。
無力感と絶望が何度も私を襲った。

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