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映画パンフレット感想#14 『ゴッドランド/GODLAND』


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感想

『テルマ&ルイーズ 4K』パンフレットの感想でも書いたけれど、やはりA4サイズのパンフレットは大きく感じる。職場などでA4のコピー用紙を手にしているときはそうは感じないのに。不思議。それだけ体も脳もB5サイズのパンフレットに慣れているのだろう。また本作のような公開規模が小さめの作品で、パンフがA4サイズで作られているのはあまり覚えがない。おそらくではあるが本作の場合は、劇中で描かれる自然の壮大さを表現するためにA4を選択したのではないかと勝手に思っている。収録された場面写真も大自然を捉えたものが多く、大きく掲載したかったのではないか。その点ではサイズの感触は作品と合致していてとてもよい。

記事は、定番の「イントロダクション」「ストーリー」「キャスト」「スタッフ」のほか、「監督のステートメント」「監督のインタビュー」にくわえ、寄稿が3本掲載されている。安心・満足の構成。なお、文字色はすべて、デンマークを表す“赤”とアイスランドを表す“青(紺)”のみとなっていて、全体のデザインもシンプルながら視覚的に楽しめて素敵。写真は、劇中の印象的なショットが多数収録されていてありがたい。また、アイスランドとデンマークの位置関係を示す、工夫されたデザインが施された地図も印象に残っている。

私がこのパンフレットを購入した動機のひとつが、劇中では詳細が語られないが間違いなく重要であろう「アイスランドの歴史・風俗」「アイスランドとデンマークの関係性」を知りたかったからであるが、アイスランド文学研究者の朱井昌併氏による寄稿がカバーしてくれた。アイスランドの信仰の変遷、劇中で印象的に用いられる複数の歌についての解説は、改めて映画を深掘りするのに役立った。

監督へのインタビューには5ページが割かれている。作中の描写を直接的に説明するような応答はない(たぶん)が、人物描写や物語をなぜそのように描いたか、その根源にある思想やねらいが多く語られている。制作裏話的なエピソードもあるが、なかでも監督が本作にも出演している自身の娘イーダへの溺愛っぷりを、それこそ劇中の溶岩流のようにこぼしまくる箇所は必読。

映画評論家の高橋ヨシキ氏の寄稿では、主にこの映画の「フレーム」がもたらす効果や意味について言及されていて、とても面白い内容だった。摂南大学現代社会学部の好井裕明氏の寄稿では、私が鑑賞中に思考したことと近しい内容が書かれていて、共感を覚えながら読んだが、一部私が失念していたシーンを取り上げてさらに考察を一歩前に進めている箇所があり、新たな発見を得ることができた(「やられた!」ともおもった)。

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